第十五話「刹那の渦」
F4Uは冷静に手に持ったM2ブローニングを、ガチャリと構え直して見据える。
すると、ナイトメアを12.7mm弾がドカン、ドカン、と撃ち抜いていく。
少しずつだが、ナイトメアの爆撃機の数も減ってきていた。
「減ってるのに減ってる気がしない…これは、だいぶ時間が取られそうな…」
F4Uが旋回して12.7mmを叩き込んでいく。
「それはそうといつ来るんでしょうか、あの2人は…」
そう愚痴のようなものを吐きながらもナイトメアに近づくと的確に機体を撃ち抜いた。
「早くしないと本当に極防が爆撃圏内に入ってしまう…!」
F4Uは真下に急降下し始める。
待ち伏せすらも振り切るように加速すると、一気に上昇し始める。
振り向くと、ナイトメアの正面に12.7mmで切り裂く。
「…そちらが待ち伏せするなら、こっちも対策するのみですよ。」
「ヒュ〜、かっこいい〜!」
F4Uが呟くと、聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向きもせずにF4Uは答える。
「…全く。遅いですよ、ヘル。」
「ごめんねぇ〜、ZEROに合わせてたら遅くなっちゃった。」
F6Fが軽く微笑みながらそう言った。
F6Fは視線をナイトメアに向ける。
「ささっと片付けないといけないけど…」
瞬時にナイトメアの下に滑り込むと急旋回して12.7mm弾を叩き込む。
そして、再び周りを見渡した。
「そうも行かなさそうな数ね…」
「けれども、それを防がなくちゃいけないのよ。…というか、遅れた理由を私のせいにしないでよ…?」
そうF6Fに五二型が話しかける。
F6Fは意外そうな顔をしてからフッと微笑んだ。
「そうだねぇ〜…それでさ、ZERO。いけるの?」
F6Fの焚き付けるような言葉に五二型は睨むように言い返す。
「当たり前。極防を破壊されてたまる訳ないでしょ…!」
その五二型の言葉を聞いてF6Fは言った。
「じゃ、いくよ!」
「言われなくても…!」
二人はナイトメアの編隊に飛び込む。
防護機銃がヒュンヒュンと飛び交うが、お構いなしに突き進んでいく。
「っ!あぶな…意外とわかるものなんだ…」
五二型が防護機銃を寸前で避けて、20mm機関銃を構える。
ダダン、と空に機銃の発射音が響き渡る。
すると青空に赤黒い煙が現れた。
「よし…なるべく少ない弾で仕留めなきゃ…」
他の機体の比にならない零戦特有の旋回性能で一気に回る。
そうしたら、目の前のナイトメアとすれ違う。
するとそのナイトメアは破片を撒き落ちて行く。
一瞬の間に撃ち込まれた20mm弾は的確にナイトメアを撃墜した。
「ZERO、あんな短時間で2機も…負けられないね!Alright, let's go!」
そうにやりと笑ったF6Fは、ぐるりと反転すると12.7mm機関銃を6門という門数に物を言わせてナイトメアを穴だらけにする。
瞬時に駆け上がるように急上昇するとグラッと一回転してナイトメアの後ろへ回る。
「…It's full of loopholes, isn't it?」
F6Fがそう呟くと、一気に12.7mmのトリガーを引いた。
ブローニングから12.7mmの薬莢が空へと投げ出され、チャリチャリと鳴り響くたびに、目の前のナイトメアが一瞬で燃え広がって視界から消える。
「これだやって未だにこれだけの数があるとは…全然減ってるようにも見えないし、それ以上に息が持たない…」
五二型がF6Fたちやナイトメアを見て、そう呟いた。
五二型は高度が高くて薄い空気の中で深呼吸をする。
「…っはぁ…はぁっ…!」
息が切れかかっていた五二型の身体に、酸素が流れ込んできた。
急いで五二型は息を整え、降下し始める。
降下すると一瞬で旋回して7.7mmを喰らわせる。
「っぶな…一瞬目の前が暗くなった…」
少々Gのせいでくらっとなった五二型だが、立て直すと横旋回をする。
なんとか20mmの射線に敵機を捉えると、20mmの引き金を引く。
それで瀕死となったナイトメアに12.7mmが降ってくる。
「よし、なんとか凌げる…いける!」
先ほどよりも少なくなった爆撃隊を見てF6Fは言った。
なんとか順調に対処出来ていた、その時だった。
F6Fのユニットへナイトメアが突っ込んだ。
「っ!?まさかユニット狙いで…」
F6Fは驚いて思わず目を見開いた。
バランスを崩してフラフラとF6Fが落ちていく。
だんだんと高度が落ちていったF6Fは、パラシュートに手をかけ、引っ張る。
「…あれ?どうして…っ!?」
だが、パラシュートが開く気配はなかった。
F6Fは落ちるのを悟ったように手をぶらんと下げた。
その瞬間に、F6Fの手を五二型は取った。
「ぜ、ZERO!?何してるの!?」
「何って…!決まってるでしょ!生きて帰るために握ったの!」
五二型はそうF6Fへ強く叫んだ。
しかし、F6Fは手を離そうとしていた。
「ダメだよ…ZEROは1,000馬力、私は2,000馬力!支え切れるわけない!それに高度が増えるほど私たちよりも余裕がなくなる…」
「それでも!絶対離してやらないわよ、ヘル!」
F6Fはむず痒そうに、そして心配そうに顔を顰めた。
しかし、F6Fの手を取ったのは一人ではなかった。
「あーもう馬鹿!ヘルが諦めてどうするの!」
「…お姉ちゃん…!?」
瞬時に現れたF4FがF6Fの手を強く掴み取る。
「そっちのエンジンはまだギリギリ生きてるでしょ、絶対諦めるなんて嫌だから!」
五二型がF6Fを腕でグッと支える。
だが、後ろからナイトメアが迫ってくる。
「くっ…!来ないで…!」
F4Fは身体を後ろに向けてナイトメアに12.7mmを放つ。
だが狙いが定まらない中で動くナイトメアに当てるのは至難の業だ。
「いいの…離して大丈夫だから…!」
F6Fは二人に向けてそういった。
だが、五二型には見えていた。
「馬鹿ヘル!あんたのパラシュート開かないの知ってるから!」
そう言われたF6Fはグッと手を握りしめる。
「当たらない…!当たれば時間が稼げるのに!」
F4Fが焦りを隠せない様子で二人に話しかけた。
ナイトメアがすぐそこまで迫る。
そのナイトメアは、ついこの瞬間に撃たれてもおかしくないほど接近していた。
五二型は図らずも目を瞑る。
刹那、五二型の隣に風が吹いたと思ったら、背後のナイトメアが消え去っていた。
「…あとは、任せてください。」
そう言ってすれ違った少女の瞳は、紫色の瞳をしていた。
十五話を見てくれてありがとーございます。作者です。
えー、今回は本当に…書くことがないですね。
なんだかんだ順調に筆が進んでるのがありがたいです。
また見てくれたら嬉しいです。ではまた。




