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そらむすめ  作者: エトゼット
 本編
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15/22

 第十四話「イカロスの翼」

ナイトメアの本爆撃編隊がどんどん極防の上空へ接近してくる。

「数が多い…どんだけ本気で攻めてきてるのよ…」

疾風が思わずそう言葉をこぼした。

瞳に映る機影の数は爆撃機だけでもゆうに30機を超えていた。

「…1人で10機ずつ倒せばいける…?いや、流石に非現実的か…それにその30機を守る戦闘機がいるから、無茶ったらありゃしない…一体どうしろというのかしらね…」

そう強がって言いながらも、疾風は苦笑いしか出なかった。

だが今この瞬間、悠長に言っている暇はない。

疾風は一気に降下して行く。速度がだんだんと増えていった。

風の中で疾風は機銃を構えた。機銃弾が機体をなぞるようにドンッ、と炸裂する。

破片がバラバラと疾風の周りに降りかかる。

しかし、それがなんだと言うばかりに通り抜けていく。

冷や汗が頬を伝って後ろに流れ溢れる。

「1機…これは骨が折れそうなくらい時間がかかりそう…いや、かけたらダメ!爆撃の射程圏内に入れたらこっちの負けだ…!」

姿勢を翻し、気合いを入れ直す。

一瞬のうちに身体を滑り込ませると、20mmと12.7mmを叩き込む。

「よし、他も多分鍾馗さんとかが大体倒してるだろうし…もっといくわよ!」

グイッと身体を捻ると目の前のナイトメアに機銃を撃ち込んでいく。

もう1機を仕留めると、高度を取ろうとすぐに離脱する。

「意外とかかった…でも結構仕留めれた、早く高度を取って一撃離脱を——」

しかし、ドカンと、嫌な音が空に鳴り響く。

疾風に確かに痛みが走る。

「——っあ…!?なんで…距離は十分取ったはずなのに…っ…!待ち伏せ…!?」

疾風は踏ん張って回ると、後ろについて機銃を撃ち始める。

だが、数発撃つとうんともすんとも言わなくなる。

「嘘っ!?こんな時に機銃が詰まるなんて…!援護を…!無線機…」

疾風は焦りが隠せない様子だった。それでもなんとか避けようと旋回を続ける。

「こちら疾風、被弾した!機銃筒内詰まりが…あっ!?」

旋回のGと被弾による目眩で無線機が疾風の手元から滑り落ちる。

「しまっ——」

その瞬間“バキッ”と、大きな音が彼女の耳を劈いた。

「……は…っあ……!?」

疾風のユニットの翼の端が、失われていた。

目元がぐらっとするようにバランスが崩れ去る。

「この…っ!!戻れ、戻れ!戻れ戻れっ!!」

高度を失いながら、必死に身体を立て直そうと力を入れる。

しかし無情にも、ユニットは軋んで言うことを聞かなかった。

「まずい、このままじゃ——…」

突然、フッと疾風から力が抜ける。

「あ…れ…?…力が入らな…ら…っ」

視界が澱んで何も見えなくなっていく。

そのなかで、なんとかパラシュートを展開するための紐を掴んだ。

疾風は抜けた力をなんとか振り絞ってパラシュートを展開する。

「落下…傘…ごほっ…は…くっ…!…ダメ…かぁ…」

疾風はそのままパラシュートで水面へ墜ちていった。

意識を手放した少女の身体は無慈悲にも海へ落ちていくのだ。

無線機だけは、疾風よりも早く水中へと沈んでいた。

―――――――――――――――――――――――――

「疾風?疾風!何が起こったの!?」

鍾馗は無線機に耳を当てる。

しかし、無線機からは風切り音しか聞こえない。

次の瞬間には、“ゴッ”と鈍い音が無線機から大きく鳴り響いた。

「…え…は?」

鍾馗の頭の中が一瞬真っ白になる。だが機銃弾の音に目を見開いた。

「おっと…!?あっぶな……どーやら、私の妹分をよく可愛がってくれたみたいね…覚悟、しなさいよ。」

鍾馗は12.7mmをすれ違いざまにナイトメアに穿った。すると一気に上昇する。

上空で一気に振り返ったかと思えば上から12.7mmを編隊目掛けて乱射する。

「焦らない…絶対に…!」

そう言いながらも鍾馗の機銃を握る手がさらにグッと力を込める。

1人だけで爆撃編隊に突っ込もうとする。

しかし、鍾馗の肩に手をかけて静止する者がいた。

「気持ちはわかるけど落ち着いて。無茶と無謀は違うわよ…」

一一型がそう鍾馗を引き止める。

その言葉に鍾馗は動きをピタッと止め、目を伏せる。

「…そう、よね。冷静にならないと…」

鍾馗は息を整え直してスッと目を開けて細めた。

その瞬間、一一型にとって聞き慣れた声が聞こえた。

「姉さん、大丈夫!?」

二二型が一一型の視界に入るように急いで駆けつける。

「私は大丈夫よ。…私は、ね…」

二二型はその言葉を察したかのように息を呑む。

「すぐに五二達も来ると思う。2〜3人抜けても大丈夫なくらいあっちは数が減ってきたみたい、やっぱり精鋭がこっちにきてたのかもね…」

二二型が視線を若干落としながらもそう言った。

「さて…援護来るまで、やれることはしないとね。」

一一型が機銃を構え直す。

その言葉に、2人はこくりと頷いた。

鍾馗が先陣を切るように空を駆け出す。

「日本の戦闘機が旋回戦ばかりすると思う?」

そう言ってニヤッと笑うと12.7mmでナイトメアを上から撃ち抜く。

穴だらけと言っても過言ではないほどの銃痕を残していく。

「疾風がどうやってやられたのか…これでわかるはず!」

鍾馗が呟くと、一瞬で離脱して距離をとる。

その瞬間に、鈍い音が鳴り響く——ということはなかった。

待ち伏せしていたであろうナイトメアを20mm弾が貫いていた。

それでバランスを崩したナイトメアを鍾馗は反転して仕留める。

ナイトメアが吹いた黒煙を抜けながら鍾馗は言った。

「2度も同じ手に引っ掛かるほどやわじゃないわよ、私たちは。」

鍾馗は12.7mmをナイトメアの胴体をなぞるように撃ち抜いていく。

そんな鍾馗を見て目元を少し細めながらも二二型は呟く。

「私たちとは全く違う戦い方〜…」

その言葉に一一型は静かに頷く。

「陸軍の方は海軍に比べたら重戦も多いからね。こっちは雷電ちゃんとかよ。」

「確かに、似たような戦い方してるね…」

2人は旋回しながらもそう言い合う。

その間にも機銃弾はナイトメアにどんどんと刺さっていく。

「おっとあぶなっ!」

二二型の顔のすぐ横を機銃弾が通り過ぎる。

寸前で避けるが、その真後ろに別のナイトメアが現れる。

「この位置じゃ避けれ—」

二二型がそう思った瞬間、そのナイトメアに機銃弾が降り注ぐ。

風が二二型の隣を通り抜けていく。

「どうです、うまくリカバリーできましたか?」

「…うん、バッチリだよ。コルセア。」

二二型がそういうと、F4Uはメガネの位置をクイっと直した。

ども、十四話を見てくれてありがとうございます。作者です。

自分で書いといてなんですけど疾風もうちょっと活躍してよ〜…

初登場から二話目ですけどもやられちゃった…

次回も見てくれると嬉しいです。では。

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