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世界最強の幼女ですが、怪異たちに過保護にされています  作者: ていふ嬢


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8/22

第八話 姫様、お買い物に行く

 休日の朝。


 ルナは大きく伸びをしながら窓を開けた。


「いい天気!」


 朝日が部屋いっぱいに差し込む。


 その光景を見つめながら、千眼の執事は静かに頭を下げた。


「姫様。本日のご予定はいかがなさいますか?」


 ルナは振り返ると、にっこり笑う。


「今日はユイとお買い物!」


「……」


 一瞬だけ、部屋の空気が止まった。


「姫様」


「なあに?」


「護衛を百名ほど──」


「多いよ」


「では五十名」


「減ってないよ」


「三十名」


「一人」


「……十名」


「一人!」


 執事は深く考え込む。


 ルナは頬を膨らませた。


「みんな心配しすぎなんだから」


 その言葉に、天井裏や壁の中に潜んでいた怪異たちが小さくざわめく。


「姫様のお命は世界より重い」


「むしろ世界を畳んで姫様だけ守るべきでは?」


「それは名案だ」


「名案じゃないよ!」


 ルナが慌てて止める。


 怪異たちは少ししょんぼりした。



 待ち合わせ場所。


「ルナー!」


 ユイが元気よく駆け寄ってくる。


「お待たせ!」


「ううん、私も今来たところ!」


 二人は並んで商店街を歩き始めた。


 その少し後ろを、スーツ姿の執事が静かについていく。


 そして、そのさらに遠くでは。


「姫様の右後方、異常なし」


「左上空も異常なし」


「猫が近づいています」


「安全な猫です」


「よし、通せ」


 誰にも見えない怪異たちが真剣な表情で護衛を続けていた。



「このお店かわいい!」


 ユイが雑貨屋へ飛び込む。


 ルナも目を輝かせる。


「わぁ……!」


 小さなぬいぐるみ。


 星形の髪飾り。


 色とりどりのアクセサリー。


 全部が初めて見るものだった。


「これ……かわいい」


 ルナが白い猫のぬいぐるみを抱き上げる。


 その姿を見た怪異たちは一斉に息を呑んだ。


「かわいい……」


「姫様が猫を抱いておられる……」


「今すぐ世界中の猫を献上しよう」


「姫様専用の王国も必要では?」


「だからいらないってば!」


 ルナのツッコミが飛ぶ。


 ユイは不思議そうに首を傾げた。


「ルナ? 誰と話してるの?」


「あっ……」


 ルナは慌てて笑う。


「ひ、独り言!」


「変なの」


 ユイはくすっと笑った。



 その帰り道。


 小さな男の子がしゃがみ込んで泣いていた。


「うぅ……お母さん……」


 ルナはすぐに駆け寄る。


「どうしたの?」


「迷子なの……」


 男の子は涙をこぼしながら頷いた。


 ルナは男の子と目線を合わせ、優しく微笑む。


「大丈夫。一緒に探そう?」


 その笑顔だけで、男の子は少し安心したようだった。


 怪異たちは静かにその様子を見守る。


「姫様は、本当にお優しい」


「だから我らは、お仕えしたいのだ」


 執事も小さく目を細めた。


「ええ。姫様の願いこそ、我らの願いです」



 迷子センターで男の子を母親へ引き渡すと、女性は何度も頭を下げた。


「本当にありがとうございました!」


「えへへ」


 ルナは少し照れくさそうに笑う。


 その笑顔を見た母親は、ふと呟いた。


「あなた……まるで天使みたいね」


 ルナは首を傾げた。


「天使?」


「うん。優しい子ってこと」


「そっか」


 ルナは嬉しそうに微笑んだ。



 その日の夜。


 怪異たちが集う広間。


「本日の姫様も、大変お可愛らしかった」


「ぬいぐるみを抱くお姿……尊い」


「写真が撮れればよかったのだが」


「姫様は嫌がられる」


「……反省」


 そんな和やかな空気の中、一体の怪異が駆け込んできた。


「報告です!」


 広間の空気が一変する。


「何事だ」


「……姫様を探している者がいます」


「誰だ」


 怪異はゆっくりと答えた。


「人間でも怪異でもありません」


「我らが一度滅ぼしたはずの存在──」


「『災厄』です」


 その言葉に、誰一人として声を発さなかった。


 長い沈黙のあと。


 執事が静かに命じる。


「姫様には知らせるな」


「何があろうと」


「我らが命に代えて、お守りする」


 怪異たちは一斉に頭を下げた。


「御意」

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