第七話:姫様、忘れられた騎士と出会う
怪異たちの世界では、緊張が走っていた。
「報告します」
一体の怪異が跪く。
「古き森にて、反応を確認しました」
千眼の執事が目を細める。
「……まさか」
「はい」
「姫様が消える前から存在していた怪異です」
その場にいた怪異たちがざわめく。
「生きていたのか」
「彼は……」
誰もが知っていた。
その名を。
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《黒鎧の騎士》
かつて。
ルナの側に仕えていた怪異。
最も強い戦士。
そして――
姫を守れなかった怪異。
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「会わない方がいいのでは?」
ある怪異が言う。
「なぜです?」
「彼は、あの日からずっと自分を責めている」
「姫様が戻られたことを知れば……」
その時。
「会いたい」
小さな声が響いた。
ルナだった。
「姫様……」
「私、会わなきゃいけない気がする」
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森の奥。
月明かりの下。
一人の騎士が座っていた。
巨大な黒い鎧。
顔は見えない。
でも。
その姿には悲しみがあった。
「……誰だ」
騎士が振り返る。
そして。
ルナを見る。
時間が止まった。
「……」
「……」
長い沈黙。
やがて。
騎士は震える声で呟いた。
「……姫様?」
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次の瞬間。
騎士はその場に膝をついた。
「申し訳ありません」
「……」
「私は、あの日」
「あなたを守れませんでした」
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ルナは困った顔をする。
「顔を上げて」
「できません」
「どうして?」
「私は騎士です」
「守るべき方を失った騎士に、顔を上げる資格など――」
「違うよ」
ルナが言う。
騎士の言葉が止まる。
「あなたは、私を守ろうとしてくれた」
「それだけで十分だよ」
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騎士の鎧が震える。
「……昔の姫様も」
「同じことを言いました」
「え?」
騎士はゆっくり語る。
「私は何度も言いました」
『姫様は、我らが守ります』
すると姫様は笑って。
『違うよ』
『一緒に守るんだよ』
そう言ったのです。
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ルナの胸が痛む。
知らないはずなのに。
懐かしい。
「……私」
「あなたのこと、覚えてない」
騎士は黙る。
「でも」
ルナは続ける。
「あなたが悲しいことは分かる」
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黒鎧の騎士は、ゆっくり立ち上がった。
「ならば」
「今度こそ」
「この命を、姫様のために」
ルナは首を横に振った。
「違うよ」
「?」
「私のためじゃない」
「みんなのために、生きて」
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その言葉。
昔と同じだった。
騎士は気づく。
記憶は失われても。
心は変わっていない。
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「承知しました」
黒鎧の騎士は頭を下げる。
「改めて誓います」
「私は――」
「姫様と、この世界を守る騎士となります」
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その夜。
怪異たちの中に、新たな仲間が加わった。
《黒鎧の騎士》
かつて姫を守れなかった者。
そして。
今度こそ姫を守る者。
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しかし。
ルナは知らなかった。
彼が隠していることを。
あの日。
ルナが消えた本当の理由を。




