第十八話 姫様、故郷へ帰る
夜。
ルナは千眼の執事と黒鎧の騎士に連れられ、街外れの古い神社へとやって来ていた。
「ここに来るのは初めて……だよね?」
ルナが鳥居を見上げる。
執事は静かに微笑んだ。
「今の姫様にとっては、初めてでございます」
「今の……?」
「鳥居をくぐれば、お分かりになります」
ルナは小さく頷き、一歩踏み出した。
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その瞬間。
景色が揺らぐ。
夜空が紫色に染まり、満天の星が頭上いっぱいに広がった。
見たこともないほど巨大な桜。
青白く光る川。
空を漂う無数の灯籠。
「きれい……」
思わず声が漏れる。
「ここが……」
黒鎧の騎士がゆっくりと答えた。
「怪異の世界」
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町へ足を踏み入れた途端、あちこちから歓声が上がる。
「姫様だ!」
「姫様がお帰りになられた!」
「本当に姫様だ!」
大勢の怪異たちが一斉に集まってきた。
小さな妖精のような怪異。
大きな鬼。
九本の尾を持つ狐。
翼の生えた怪異。
誰もが嬉しそうに頭を下げる。
「お帰りなさいませ、姫様!」
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ルナは驚きながらも、小さく笑った。
「ただいま……でいいのかな?」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
怪異たちの目から涙があふれた。
「ただいま、と……!」
「姫様が……!」
「帰ってきてくださった……!」
広場は歓声に包まれる。
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執事は少しだけ目元を押さえた。
「長かったですね」
黒鎧の騎士も静かに頷く。
「ようやく……」
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怪異たちはルナを城へ案内する。
白い石で造られた、美しい城。
その中央には、大きな玉座があった。
「これ……」
「姫様のお席です」
ルナはゆっくり近づく。
玉座に手を触れた、その瞬間。
頭の中に映像が流れ込む。
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「みんな、お疲れさま!」
幼い自分が笑っている。
怪異たちも笑っている。
広間いっぱいに、温かな空気が流れていた。
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「姫様!」
現実へ引き戻される。
ルナは胸を押さえた。
「また……見えた」
執事は優しく言う。
「少しずつで構いません」
「焦る必要はありません」
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その時。
城の外が騒がしくなる。
「報告!」
一体の怪異が駆け込んできた。
「結界の外に災厄の反応!」
広間の空気が変わる。
黒鎧の騎士が剣を抜く。
「数は?」
「一体……ですが」
怪異は震えながら答えた。
「今まで観測したことがないほど強力です!」
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ルナは窓の外を見る。
遠くの空が、ゆっくりと黒く染まり始めていた。
「……来る」
なぜか分かった。
あれは、自分を狙っている。
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黒鎧の騎士は剣を構える。
「姫様」
「どうか城の中へ」
ルナは首を横に振った。
「違うよ」
「みんなだけに戦わせない」
その言葉に、怪異たちは息を呑む。
執事は静かに微笑んだ。
「……やはり」
「姫様は姫様ですね」
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怪異の世界に、戦いの鐘が鳴り響く。




