第十七話 姫様、秘密を聞く
運動会は終わった。
人間たちの記憶には、「突然強い風が吹いた日」として残っただけ。
けれど。
怪異たちにとっては違った。
姫様の力が戻った日。
そして。
もう隠し続けることができないと悟った日だった。
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夜。
怪異たちの集う広間。
「……」
誰も言葉を発しない。
中央にはルナが座っていた。
「みんな」
ルナはゆっくり口を開く。
「私に何か隠してるよね?」
怪異たちは顔を伏せる。
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「昨日のこと」
ルナは続けた。
「私の力が出た時、みんな驚いてた」
「それに……」
少しだけ寂しそうに笑う。
「私の知らない私の話を、みんな知ってる」
沈黙。
やがて。
千眼の執事が一歩前へ出た。
「……申し訳ありません」
「姫様」
「我らは、あなたに嘘をついていました」
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ルナは首を振る。
「怒ってないよ」
「ただ……知りたい」
「私は昔、何をしていたの?」
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黒鎧の騎士がゆっくり跪く。
「姫様は」
「怪異たちの王でした」
ルナは目を丸くする。
「王……?」
「はい」
騎士は続ける。
「しかし、力で支配する王ではありません」
「誰よりも弱き者を気にかける方でした」
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執事が古い本を開く。
そこには一枚の絵。
昔のルナ。
たくさんの怪異たちに囲まれ、笑っている。
「姫様は、人間と怪異が争わない世界を望まれていました」
「そして、その願いは少しずつ叶っていたのです」
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「じゃあ……」
ルナは小さく呟く。
「どうして私は消えたの?」
その瞬間。
怪異たちの表情が曇った。
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「……あの日」
黒鎧の騎士が拳を握る。
「世界を揺るがす災厄が現れました」
「怪異も、人間も、全てを飲み込もうとする存在」
「姫様は、それを止めるために……」
言葉が止まる。
「私が?」
「はい」
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ルナは胸に手を当てる。
痛みはない。
でも。
悲しい気持ちだけが残る。
「みんなを守るために……」
「私はいなくなったんだ」
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「違います」
突然。
別の声が響いた。
全員が振り返る。
そこには。
あの銀髪の人物が立っていた。
「姫様は」
「自分から消えたのではありません」
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怪異たちが警戒する。
「貴様……!」
しかし、銀髪の人物はルナだけを見る。
「あなたは、誰かを守るために犠牲になった」
「でも」
「あなたを犠牲にしたのは――」
一瞬、沈黙。
「私たちです」
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ルナの瞳が揺れる。
「……あなたは」
「昔の私を知っているの?」
銀髪の人物は静かに頷いた。
「はい」
「私は」
「あなたの最後の約束を知る者です」
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その言葉に。
ルナの頭の中で、また記憶が弾けた。
『約束して』
『必ず、また会いに来て』
『次は……一緒に笑おうね』
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「……っ」
ルナは涙を浮かべる。
「私……」
「何か、大切な約束をしてた」
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銀髪の人物は静かに微笑む。
「はい」
「だから私は、あなたを探し続けました」
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その夜。
ルナは初めて知った。
自分には、過去がある。
守れなかった約束がある。
そして――
まだ終わっていない物語がある。




