表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の幼女ですが、怪異たちに過保護にされています  作者: ていふ嬢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/22

第十六話 姫様、優しい願い

 校庭を吹き抜ける風が止んだ。


 運動会の歓声は消え、辺りは静まり返る。


 一般の人間には見えない結界が張られ、先生や子どもたちは何が起きたのか分からず立ち尽くしていた。


 ルナだけが、目の前の人物を見つめていた。


「……あなたは誰?」


 銀髪の人物は少しだけ目を細める。


「今は、まだ名乗れません」


「ですが、姫様」


「私はあなたの敵ではありません」


 黒鎧の騎士が剣を構える。


「その言葉を信じる理由はない」


 執事も一歩前へ出た。


「姫様から離れていただきます」


 銀髪の人物は静かに息をついた。


「やはり……こうなりますか」



 次の瞬間。


 黒い霧が校庭を覆った。


 霧の中から現れたのは、異形の怪物。


 腕が四本あり、全身を黒い鎧のような殻で覆っている。


 赤い瞳がぎらりと光った。


「グォォォォッ!!」


 怪物は一直線にルナへ飛びかかる。


「姫様!」


 黒鎧の騎士が迎え撃つ。


 剣と爪がぶつかり、火花が散った。


 だが怪物は一体ではない。


 二体、三体と裂け目から現れてくる。


「数が多い!」


「第二部隊、結界を維持しろ!」


「第一部隊は姫様の護衛だ!」


 怪異たちが次々と戦いへ飛び込んでいく。



 ルナはその光景を見ていた。


「みんな……」


 怪異たちが傷ついていく。


 誰も逃げない。


 誰も自分のことを優先しない。


 ただ一人。


 ルナを守るためだけに戦っている。



「お願い!」


 ルナは叫ぶ。


「もう戦わないで!」


 しかし怪物たちは止まらない。


 一体が怪異の肩を切り裂く。


 別の一体が結界へ体当たりする。


 怪異たちは苦しそうに立ち上がる。


 それでも前へ出る。



「どうして……」


 ルナの胸が締め付けられる。


「どうして、みんな傷つくの……」


 その時だった。


 一体の怪物が怪異の隙を突き、ユイのいる方向へ飛び出した。


「え……?」


 ユイは何も見えていない。


 だから迫る危険にも気づけない。



「ユイッ!」


 ルナは駆け出した。


 怪物の爪が振り下ろされる。


 その瞬間。


 ルナはユイを抱きしめた。


「危ない!」


 ドンッ!


 激しい衝撃が響く。


 しかし。


 ルナは無傷だった。


 白く淡い光がルナを包み込み、怪物を弾き飛ばしたのだ。



 校庭全体が白い光に照らされる。


 怪異たちは驚き、目を見開いた。


「姫様の力が……!」


 黒鎧の騎士が静かに呟く。


「戻り始めている……」



 ルナはゆっくり立ち上がる。


 その瞳は金色に輝いていた。


 どこか懐かしい、優しい光。


 そして初めて。


 ルナは怒った。


「……もう、やめて」


 小さな声だった。


 それなのに。


 世界全体へ響くような重みがあった。


 怪物たちの動きが止まる。


 空気が震える。



「お願いだから」


「もう、大切な人を傷つけないで」


 その言葉には命令も威圧もなかった。


 ただ、心からの願いだけが込められていた。


 怪物たちは一歩、また一歩と後ずさる。


 まるで、その願いに逆らえないように。



 銀髪の人物は静かに微笑んだ。


「……やはり」


「あなたは、あの頃のままですね」


 そう呟くと、黒い裂け目はゆっくりと閉じ始めた。



 静けさが戻る校庭。


 ルナはユイの手を握ったまま、小さく息を吐く。


「よかった……」


 ユイは首をかしげる。


「ルナ? どうしたの?」


 周囲の人たちには、最後まで何も見えていなかった。


 ただ突然、強い風が吹いたようにしか感じていない。



 怪異たちは誰にも気づかれないよう、静かに頭を下げた。


「姫様」


「本日も、お守りできて何よりです」


 ルナは振り返り、小さく笑う。


「ありがとう」


「今日も、まもってくれて」


 その言葉に、怪異たちは照れくさそうに目を逸らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ