第十五話 姫様、初めての運動会
青空が広がる朝。
「おはようございます!」
校庭には元気な声が響いていた。
色とりどりの万国旗が風に揺れ、保護者たちも次々と集まってくる。
「ルナー!」
ユイが赤いハチマキをつけて駆け寄る。
「今日はいよいよ本番だね!」
「うん!」
ルナも笑顔で頷いた。
「楽しみ!」
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開会式が始まり、最初の競技は玉入れだった。
「よーい、始め!」
子どもたちが一斉に玉を投げる。
ルナも夢中になって投げていた。
「入った!」
「ルナ、ナイス!」
ユイと笑い合う。
その姿を校庭の外から見守る怪異たちは、どこか誇らしげだった。
「姫様が楽しそうで何よりです」
「笑顔が一番ですね」
執事も静かに微笑む。
「今日は最後まで、この笑顔を守りましょう」
「はい」
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競技は順調に進んでいく。
二人三脚。
綱引き。
そして障害物競走。
転びそうになった友達をルナが支えると、周りから拍手が起こった。
「ありがとう!」
「えへへ」
ルナは少し照れたように笑った。
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その時だった。
ゴォォォ……。
誰にも聞こえない低い音が、空から響く。
怪異たちだけが顔を上げた。
「……来た」
空の一部が黒く染まっていく。
まるでガラスにひびが入るように、青空がゆっくりと裂け始めた。
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「執事」
黒鎧の騎士が低く呟く。
「災厄です」
「分かっています」
執事は視線をルナへ向けた。
今も友達と笑っている。
その笑顔を曇らせたくない。
「第一部隊、結界を展開」
「第二部隊、人間に異変を悟らせるな」
「第三部隊は私と共に災厄を迎え撃ちます」
「了解!」
怪異たちは一斉に姿を消した。
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一方、人間たちは何も気づいていない。
「次はリレーです!」
先生の声が響く。
「ルナ、一緒に頑張ろう!」
「うん!」
スタートラインに立つルナ。
その瞬間。
胸がざわついた。
「……?」
どこかで誰かが泣いている。
そんな気がした。
⸻
校庭の上空。
誰にも見えない結界の外では、怪異たちと黒い霧がぶつかり合っていた。
「通すな!」
「姫様には指一本触れさせるな!」
黒鎧の騎士の剣が閃く。
しかし、黒い霧は笑うように揺れた。
「無駄だ」
「今日こそ、姫を迎えに来た」
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その言葉と同時に。
結界の一部が砕け散る。
パリンッ!
怪異たちの表情が凍りついた。
「しまった!」
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校庭。
リレーが始まる。
「ルナ、バトン!」
「任せて!」
ルナがバトンを受け取った、その瞬間。
校庭の中央に黒い裂け目が現れた。
子どもたちは突然の突風に悲鳴を上げる。
「きゃあっ!」
「何!?」
先生たちも混乱する。
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裂け目の奥から、一人の人物がゆっくりと姿を現した。
黒いローブ。
銀色の長い髪。
フードの奥の瞳が、真っ直ぐルナを見つめる。
「やっと会えましたね」
「姫様」
ルナは息を呑んだ。
「……あなたは」
その人物は、悲しそうに微笑む。
「迎えに来ました」
その一言で、校庭の空気が一変した。
怪異たちは一斉にルナの前へ飛び出す。
「姫様、お下がりください!」
ルナは戸惑いながらも、一歩前へ出た。
「待って!」
怪異も、ローブの人物も動きを止める。
ルナは二人を見比べながら、小さく息を吸った。
「お願いだから……」
「誰も傷つかないで」




