第十四話 姫様、約束をする
運動会前日。
教室は朝から落ち着かない雰囲気だった。
「明日、晴れるといいね!」
ユイが窓の外を見上げる。
「雨だと延期になっちゃうもん」
ルナも空を見上げた。
「晴れるよ」
「え?」
「……そんな気がするの」
ルナは自分でも不思議そうに首を傾げた。
「どうしてだろう」
⸻
放課後。
帰り道を歩いていると、公園の前で立ち止まる。
「少し遊んでいかない?」
ユイがブランコを指さした。
「うん!」
二人は笑いながら公園へ入る。
その様子を、怪異たちは離れた場所から見守っていた。
「姫様がお笑いになっている」
「本日も平和です」
「異常なし」
執事は小さく頷いた。
「引き続き警戒を」
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ルナはブランコに座り、ゆっくりと揺れる。
「ユイ」
「なあに?」
「友達って……いいね」
ユイは照れくさそうに笑う。
「急にどうしたの?」
「前は、こういう時間を知らなかったから」
「そっか」
少しの沈黙。
やがてユイは、小指を差し出した。
「じゃあ約束しよう!」
「約束?」
「これからも、ずっと友達!」
ルナは小さく目を見開いた。
「……うん!」
二人の小指が結ばれる。
「約束!」
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その瞬間。
ルナの脳裏に、一瞬だけ景色が浮かんだ。
白い花畑。
誰かと小指を結ぶ自分。
そして。
「約束だよ、ルナ」
優しい声。
「……っ!」
ルナは頭を押さえた。
「ルナ!?」
「だ、大丈夫……」
頭痛はすぐに治まった。
でも胸の奥に、懐かしい気持ちだけが残っていた。
⸻
その頃。
怪異たちの広間。
一体の怪異が慌てて駆け込む。
「報告します!」
「どうした」
「災厄の気配が急速に増大しています!」
執事の表情が険しくなる。
「場所は」
「人間界です」
黒鎧の騎士がゆっくり立ち上がる。
「運動会……」
「はい」
「明日、動く可能性があります」
⸻
広間が静まり返る。
執事は静かに全員を見渡した。
「姫様には、絶対に知られてはなりません」
「明日は、姫様にとって大切な日です」
「我らが全て引き受けます」
怪異たちは迷うことなく頷いた。
「命に代えても」
「姫様の笑顔を守ります」
⸻
その夜。
ルナは運動会で使う赤いハチマキを眺めていた。
「明日、楽しみだな」
そう呟きながら眠りにつく。
しかし、その窓の外。
月明かりの届かない場所で、一人の黒いローブの人物が静かに立っていた。
「……間に合わない」
その声は震えていた。
「姫様」
「どうか明日だけは……」
言葉の続きを飲み込み、人影は闇へと消えていく。




