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世界最強の幼女ですが、怪異たちに過保護にされています  作者: ていふ嬢


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12/22

第十二話 姫様、運動会の練習をする

 朝のホームルーム。


「みんな、来月は運動会があります!」


 先生の一言で教室が盛り上がる。


「やったー!」


「リレー楽しみ!」


「玉入れ勝つぞ!」


 ルナは首を傾げた。


「うんどう……かい?」


 隣のユイが笑う。


「運動会も知らないの?」


「うん」


「走ったり、みんなで競争したりする学校行事だよ!」


「競争……」


 ルナの瞳がきらりと輝いた。


「楽しそう!」



 昼休み。


 校庭では早速リレーの練習が始まった。


「ルナも走ってみよう!」


「うん!」


 スタートラインに並ぶルナ。


 先生が笛を鳴らす。


「位置について、よーい……」


 ピッ!


 ルナは一歩踏み出した。


 次の瞬間。


「……え?」


 クラス全員が固まる。


 ゴール地点には、すでにルナが立っていた。


「終わったよ?」


 本人は不思議そうに首を傾げる。



 教室が静まり返る。


「い、今の見えた?」


「一瞬で消えたよな?」


「えっと……」


 ルナは困ってしまう。


 その時、千眼の執事の声が耳元に届いた。


「姫様」


「はい?」


「少々、本気を出しすぎました」


「あっ……」


 ルナはようやく気づいた。


「ご、ごめんなさい……」



 先生は苦笑いする。


「ルナさんは……その……少しだけゆっくり走ってみようか」


「うん!」



 二回目。


 ルナは「ゆっくり」を意識した。


 すると今度は――。


 ビリだった。


「えぇっ!?」


 ユイが驚く。


「ルナ、さっきと全然違う!」


「ゆっくりって難しい……」


 ルナは肩を落とした。



 放課後。


 怪異たちは大真面目な会議を開いていた。


「姫様が運動会に参加される」


「これは一大事だ」


「転倒の危険があります」


「校庭の石を全て取り除こう」


「砂も柔らかくするべきだ」


「日差しが強い。雲を呼べ」


 黒鎧の騎士が静かに言う。


「競技中は私が姫様の影となり、万が一転ばれた際には――」


「却下」


 執事が即答した。


「姫様は普通の子として参加したいと望まれています」


「ですが!」


「姫様の願いを叶えることこそ、我らの務めです」


 怪異たちは静かに頷いた。


「承知」



 翌日。


「ルナ!」


 ユイが笑顔で近づいてくる。


「昨日はびっくりしたよ!」


「ごめんね」


「謝ることじゃないよ!」


 ユイはニッと笑った。


「でも、本番では一緒に頑張ろう!」


「うん!」


 ルナも嬉しそうに笑った。



 その様子を、校舎の屋上から見つめる人影があった。


 黒いローブをまとった人物。


「楽しそうですね」


 優しい声。


 けれど、その瞳には悲しみが宿っていた。


「姫様……」


「どうか、その笑顔だけは失わないでください」


 そう呟くと、人影は静かに姿を消した。

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