第十一話 姫様、秘密を見つける
翌朝。
「……ふわぁ」
ルナは大きくあくびをしながら目を覚ました。
昨日の出来事は夢ではなかった。
灰色の世界。
黒いローブの人物。
そして――。
「また、お会いしましょう。姫様」
あの言葉だけが、耳から離れない。
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「姫様、おはようございます」
千眼の執事が紅茶を置く。
「昨日は眠れましたか?」
「うん……でもね」
ルナは少し困ったように笑った。
「夢を見たの」
「夢……ですか?」
「誰かと一緒に、お花畑で遊んでた」
執事の手がぴたりと止まる。
「……他には?」
「思い出せない」
「そうですか」
執事は静かに微笑んだ。
「思い出せないままで、よろしいのです」
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「どうして?」
「姫様には、今を幸せに生きていただきたいからです」
ルナは少しだけ首を傾げた。
「でも、みんなは何か隠してるよね?」
「……」
「私に言えないことがあるの?」
執事は答えない。
その沈黙が、何よりの答えだった。
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放課後。
ルナは一人、図書室へ向かった。
「怪異についての本……」
棚を探していると、一冊だけ古びた本を見つける。
表紙には文字がない。
「変な本……」
ページを開こうとした、その瞬間。
「触れてはいけません」
低い声がした。
振り返ると、黒鎧の騎士が立っていた。
「クロ?」
「その本は、人間が読むものではありません」
「でも私、人間じゃ……」
ルナは言いかけて口をつぐむ。
黒鎧の騎士は優しく答えた。
「姫様は姫様です」
「それ以上でも、それ以下でもありません」
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「……ねぇ、クロ」
「はい」
「私って、昔はどんな子だった?」
黒鎧の騎士は少しだけ笑う。
「今と変わりません」
「本当に?」
「はい」
「転んだ怪異を見れば助け、泣いている人間を見れば手を差し伸べる」
「昔から、お優しい方でした」
ルナは少し照れくさそうに笑った。
「そっか」
⸻
その時だった。
バサッ。
本棚の一番上から、一枚の紙が落ちる。
「?」
ルナが拾い上げる。
そこには、一枚の古い絵が描かれていた。
大勢の怪異。
その中心で笑う、小さな白髪の少女。
「これ……」
ルナにそっくりだった。
絵の隅には、小さな文字がある。
『怪異の姫、永遠なる安寧を』
その瞬間。
ズキッ。
頭に激しい痛みが走る。
「……っ!」
「姫様!」
黒鎧の騎士が駆け寄る。
ルナの視界に、一瞬だけ映る。
燃え上がる城。
泣き叫ぶ怪異。
そして、自分を抱きしめる誰か。
「ごめんなさい……」
知らない声だった。
でも、その言葉だけははっきり聞こえた。
⸻
「ルナ!」
図書室へ駆け込んできたユイが叫ぶ。
「大丈夫!?」
「ユイ……」
ルナは頭を押さえながら微笑んだ。
「ちょっと、立ちくらみしただけ」
ユイは心配そうに手を握る。
「保健室行こう!」
「うん」
その手は温かかった。
ルナはその温もりに、少しだけ安心した。
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一方その頃。
灰色の空間。
黒いローブの人物が、静かに目を閉じていた。
「始まりましたか」
その背後から、黒い霧が集まる。
「姫様の記憶が、目覚め始めています」
ローブの人物は小さく笑った。
「急がなければ」
「また、同じ悲劇を繰り返してしまう」




