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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第68話】新たな脅威


 王城(おうじょう)(もっと)奥深(おくふか)く、厳重(げんじゅう)警護(けいご)(つつ)まれた謁見(えっけん)()は、いまや緊迫(きんぱく)した空気(くうき)(おも)()()めていた。


 広間(ひろま)中心(ちゅうしん)()かれた大理石(だいりせき)のテーブルの周囲(しゅうい)には、王国(おうこく)最高権力者さいこうけんりょくしゃたちが(あつ)まり、刻一刻(こくいっこく)悪化(あっか)していく戦局(せんきょく)についての議論(ぎろん)()わされている。


 玉座(ぎょくざ)(すわ)るのは、疲労(ひろう)(いろ)(かく)せないながらも(くに)()べる国王(こくおう)その(ひと)だった。


 その(かたわ)らには、気丈(きじょう)()()いながらも不安(ふあん)げな表情(ひょうじょう)()かべる王妃(おうひ)()()い、さらにその周囲(しゅうい)()(かこ)むように、王族(おうぞく)忠誠(ちゅうせい)(ちか)高位貴族(こういきぞく)面々(めんめん)がざわめきを()げていた。


王都(おうと)防衛線(ぼうえいせん)各所(かくしょ)突破(とっぱ)されつつあるとの報告(ほうこく)(はい)っております! このままでは王城(おうじょう)内部(ないぶ)まで魔物(まもの)どもが侵入(しんにゅう)するのは時間(じかん)問題(もんだい)かと……!」


「なんと(たよ)りない! 近衛騎士団(このえきしだん)(なに)をしているのだ! (ただ)ちに増派(ぞうは)(おく)()め!」


 貴族(きぞく)たちの(あいだ)()()焦燥(しょうそう)()ちた怒号(どごう)悲鳴(ひめい)のような意見(いけん)数々(かずかず)


 その(なか)で、ひときわ(つよ)責任感(せきにんかん)(ひとみ)宿(やど)しながら(まえ)見据(みす)えていたのは、第一王女(だいいちおうじょ)エルザだった。


 そして、彼女(かのじょ)のすぐ(うし)ろには、シオンの指示(しじ)でエルザを(まも)るため貴族(きぞく)アルベルトが、(ひか)えている。


父上(ちちうえ)諸侯(しょこう)皆様(みなさま)()()いてください。(いま)こそ一丸(いちがん)となって防衛体制(ぼうえいたいせい)()(なお)さなければ、王都(おうと)()ちこたえられません。(わたし)とアルベルトが前線(ぜんせん)(おもむ)き――」


 エルザが毅然(きぜん)とした(こえ)()(しず)めようと言葉(ことば)(はっ)した瞬間(しゅんかん)謁見(えっけん)()重厚(じゅうこう)両開(りょうびら)きの(とびら)(はげ)しく()(ひら)かれた。


 (いき)()らせ、全身(ぜんしん)()(ほこり)(よご)した一人(ひとり)(わか)騎士(きし)が、狂喜(きょうき)驚愕(きょうがく)()()じった表情(ひょうじょう)(ゆか)(ひざ)をついた。


報告(ほうこく)いたします……っ! 王都(おうと)中央広場(ちゅうおうひろば)付近(ふきん)にて、かつてない異常事態(いじょうじたい)発生(はっせい)いたしました!」


「なに? 結界(けっかい)(やぶ)られたというのか……!」


 国王(こくおう)()()がりかけ、貴族(きぞく)たちが絶望(ぜつぼう)(いき)()らしたその矢先(やさき)騎士(きし)興奮(こうふん)(おさ)えきれない(こえ)(さけ)んだ。


「い、いいえ(ちが)います! (なぞ)軍勢(ぐんぜい)()()れた一人(ひとり)(おとこ)突如(とつじょ)として戦場(せんじょう)(あらわ)れ、暴虐(ぼうぎゃく)(きわ)めていた魔物(まもの)()れを、わずか数十分(すうじゅっぷん)一網打尽(いちもうだじん)討伐(とうばつ)いたしました……! 現在(げんざい)魔物(まもの)一掃(いっそう)され、王都(おうと)奇跡的(きせきてき)救済(きゅうさい)(むか)えました!」


 その(しん)じがたい吉報(きっぽう)に、謁見(えっけん)()一瞬(いっしゅん)静寂(せいじゃく)(つつ)まれたあと、爆発的(ばくはつてき)歓声(かんせい)安堵(あんど)のざわめきへと()わった。


「シオン(さま)が……(もど)られたのですね……!」


 エルザの(ひとみ)から、こらえきれなかった安堵(あんど)(なみだ)一筋(ひとすじ)こぼれ()ちた。


 その表情(ひょうじょう)には、(かれ)(たい)する(ふか)信頼(しんらい)と、(おさ)えきれない恋心(こいごころ)のような(あつ)感情(かんじょう)(あふ)(かえ)っている。


 アルベルトもまた、(つね)冷静(れいせい)さを(たも)っていたその端正(たんせい)顔立(かおだ)ちをわずかに(ゆる)め、(ふか)(むね)をなで()ろした。


「エルザ(さま)、シオンが......シオンが()てくれたのです。もはや、この(くに)(おそ)れるものはありません」


「ええ、そうねアルベルト! (わたし)たちも一刻(いっこく)(はや)く、シオン(さま)のもとへ()かいましょう!」


 エルザは(ふく)(すそ)(ひるがえ)すと、謁見(えっけん)()規律(きりつ)(わす)れて(はし)()し、その(あと)をアルベルトがしっかりと(したが)うようにして城内(じょうない)()()した。


国王(こくおう)貴族(きぞく)たちの制止(せいし)(こえ)()かず、二人(ふたり)一目散(いちもくさん)にシオンが(もと)(いそ)ぐ。


 やがて、城門(じょうもん)()け、歓声(かんせい)(つつ)まれる広場(ひろば)(ちか)くまでたどり()いたエルザとアルベルトの視界(しかい)に、シオンの姿(すがた)(とら)えられた。


 その周囲(しゅうい)には、数々(かずかず)美女(びじょ)たちや獣人族(じゅうじんぞく)などの戦士(せんし)たちが(ひか)えており、まさに凱旋(がいせん)英雄(えいゆう)そのものの雰囲気(ふんいき)(かも)()している。


「シオン(さま)……っ!」


 エルザが(うれ)しさに(こえ)(はず)ませながら()()そうとした瞬間(しゅんかん)だった。


 突如(とつじょ)として、王都(おうと)青空(あおぞら)(おお)っていた(くも)(はげ)しい熱風(ねっぷう)によって()()かれ、太陽(たいよう)(ひかり)完全(かんぜん)(さえぎ)られた。


 あまりにも異常(いじょう)気圧(きあつ)変化(へんか)と、(はだ)()がすような(すさ)まじい熱波(ねっぱ)王都(おうと)全体(ぜんたい)(つつ)()む。


「……なっ、なんだ(いま)(かぜ)は……!?」


 アルベルトが反射的(はんしゃてき)(けん)()き、(するど)眼光(がんこう)上空(じょうくう)へと視線(しせん)(はし)らせた。


 広場(ひろば)にいた人々(ひとびと)も、あまりの恐怖(きょうふ)(いき)()み、一斉(いっせい)(てん)(あお)()る。


 そこにあったのは、王都(おうと)城壁(じょうへき)よりも(はる)かに巨大(きょだい)(つばさ)(ひろ)げ、紅蓮(ぐれん)(うろこ)をギラギラと(かがや)かせながら旋回(せんかい)する伝説(でんせつ)怪物(かいぶつ)巨大(きょだい)なファイヤードラゴンの姿(すがた)だった。


 その口元(くちもと)からはすでに極限(きょくげん)まで圧縮(あっしゅく)された高熱(こうねつ)(ほのお)(うず)()いて()()しており、一歩(いっぽ)間違(まちが)えば王都(おうと)そのものが一瞬(いっしゅん)灰燼(かいじん)()すほどの圧倒的(あっとうてき)殺気(さっき)(はな)っている。


(うそ)でしょう……あんな()(もの)が、まだ(のこ)っていたなんて……!」


 エルザが恐怖(きょうふ)(かお)()きつらせながら(つぶや)いた。


 さきほどまでの歓喜(かんき)空気(くうき)一瞬(いっしゅん)霧散(むさん)し、王都(おうと)(ふたた)絶望(ぜつぼう)(そこ)へと()きずり()まれていく。


全軍(ぜんぐん)戦闘態勢(せんとうたいせい)(はい)れ! (やつ)()るぞ!」


 シオンの冷徹(れいてつ)かつ力強(ちからづよ)号令(ごうれい)合図(あいず)に、王都(おうと)(すく)うため再び(たたか)いの(まく)()って()とされた。


 しかし、そのファイヤードラゴンの戦闘力(せんとうりょく)は、これまでの魔物(まもの)魔王軍(まおうぐん)幹部(かんぶ)たちとは次元(じげん)(ちが)っていた。


 巨体(きょたい)(はな)圧倒的(あっとうてき)熱量(ねつりょう)だけでも周囲(しゅうい)石畳(いしだたみ)()(はじ)め、(はな)たれた一撃(いちげき)尾撃(びげき)咆哮(ほうこう)だけで、防衛(ぼうえい)にあたっていた兵士(へいし)たちが次々(つぎつぎ)()()ばされていく。


「ぐっ……! なんという強靭(きょうじん)耐久力(たいきゅうりょく)魔力(まりょく)なの……! (わたし)たちの攻撃(こうげき)が、まともに(つう)じない……!」


 魔導士(おんなまどうし)リーナが展開(てんかい)した強力(きょうりょく)魔導結界(まどうけっかい)すらも、ドラゴンの(はな)熱線(ねっせん)余波(よは)(まえ)にヒビが(はい)り、妖精族(ようせいぞく)のルミナリアやウルフ(ぞく)のルナリスたちの素早(すばや)斬撃(ざんげき)も、硬質(こうしつ)紅蓮(ぐれん)(うろこ)(はじ)(かえ)されてしまう。


 次々(つぎつぎ)前線(ぜんせん)(たたか)っていた兵士(へいし)冒険者(ぼうけんしゃ)たちが(きず)つき、()(なが)して地面(じめん)(たお)()んでいく。


 流石(さすが)のシオンの一行(いっこう)も、想像(そうぞう)(ぜっ)するドラゴンの猛攻(もうこう)(まえ)に、かつてないほどの苦戦(くせん)()いられていた。






(だい)69()(つづ)






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