表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/70

【第66話】牙の森の戦い


 (みず)(みやこ)アクア・ヴェイルに(わか)れを()げ、シオンの一行(いっこう)(つぎ)なる目的地(もくてきち)である獣人族(じゅうじんぞく)領域(りょういき)(きば)(もり)へと(あし)(すす)めていた。


 出発(しゅっぱつ)(さい)(みやこ)守護者(しゅごしゃ)である歌姫(うたひめ)フィオナは、シオンとの(わか)れを()しむように名残惜(なごりお)しそうな(ひとみ)()け、その(むね)(うち)にある(さび)しさを(かく)しきれない様子(ようす)だったが、(みやこ)復興(ふっこう)(たく)された彼女(かのじょ)は、いつかまた(めぐ)()える()(しん)じて笑顔(えがお)でシオンを見送(みおく)った。


 フィオナの(おも)いを背負(せお)いながら、シオンたちが(きば)(もり)境界(きょうかい)へと(ちか)づくにつれて、周囲(しゅうい)様子(ようす)(あき)らかに異様(いよう)雰囲気(ふんいき)()びていった。


 かつては(ゆた)かな(みどり)静寂(せいじゃく)(つつ)まれていたはずの(もり)空気(くうき)が、()(くさ)いにおいと荒々(あらあら)しい魔力(まりょく)によって(よど)んでいる。


「……なんだか、(もり)様子(ようす)がおかしいわね。いつもならもっと、(おだ)やかな自然(しぜん)息吹(いぶき)(かん)じられるはずなのに……」


 ウルフ(ぞく)族長(ぞくちょう)ガレウスの(むすめ)であるルナリスが、不安(ふあん)げに(つぶや)いた。


 その双眸(そうぼう)には、(もり)奥深(おくぶか)くで()らす父親(ちちおや)や、一族(いちぞく)安否(あんぴ)(あん)じる焦燥(しょうそう)(いろ)()(にじ)んでいる。


 (いや)予感(よかん)がルナリスの胸中(きょうちゅう)()(めぐ)る。


 そんなルナリスの(こま)やかな動揺(どうよう)不安(ふあん)表情(ひょうじょう)にいち(はや)()づいたシオンは、(あゆ)みを()めると、()()いた(こえ)彼女(かのじょ)(かた)りかけた。


「ルナリス、心配(しんぱい)するな。レオナのところに()(まえ)に、まずは(きば)(もり)北側(きたがわ)位置(いち)する、お(まえ)(むら)()()るぞ」


「シオン(さま)……!」


 ルナリスはハッとした表情(ひょうじょう)()かべ、自分(じぶん)気遣(きづか)ってくれた(あるじ)言葉(ことば)(むね)(あつ)くさせた。


 シオンの一行(いっこう)進路(しんろ)微調整(びちょうせい)し、ウルフ(ぞく)(むら)へと急行(きゅうこう)する。


 しかし、(むら)姿(すがた)視界(しかい)(はい)った瞬間(しゅんかん)、そこにあったのは想像(そうぞう)(ぜっ)する凄惨(せいさん)光景(こうけい)だった。


 平穏(へいおん)だったはずの集落(しゅうらく)は、いまやゴブリンやオークといった下級(かきゅう)ながらも凶暴(きょうぼう)魔物(まもの)()れに包囲(ほうい)され、(はげ)しい戦場(せんじょう)()していたのだ。


 家屋(かおく)破壊(はかい)され、あちこちから(ほのお)黒煙(こくえん)()がっている。


者共(ものども)一歩(いっぽ)()くな! 一族(いちぞく)(ほこ)りと(きば)にかけて、この(むら)(まも)()くぞ!」


 戦火(せんか)()(なか)で、ひときわ(おお)きく(ひび)(わた)野太(のぶと)(こえ)(ぬし)――それは、ルナリスの父親(ちちおや)であり、ウルフ(ぞく)族長(ぞくちょう)ガレウスだった。


 (おとろ)えを()せない豪快(ごうかい)(たたか)いぶりで、大剣(たいけん)()るいながら()()せるオークの()れを次々(つぎつぎ)()(はら)っている。


「お父様(とうさま)……っ!」


 ルナリスは悲鳴(ひめい)のような歓声(かんせい)()げると、(だれ)よりも(はや)戦場(せんじょう)へと()()し、愛用(あいよう)戦斧(せんぷ)父親(ちちおや)背後(はいご)(ねら)おうとしたオークの首元(くびもと)正確無比(せいかくむひ)一閃(いっせん)した。


「ルナリス……!? お(まえ)無事(ぶじ)だったのか……!」


 突如(とつじょ)として(あらわ)れた愛娘(まなむすめ)姿(すがた)に、ガレウスは()見開(みひら)いて驚愕(きょうがく)(こえ)()らす。


 しかし、感傷(かんしょう)(ひた)っている(ひま)周囲(しゅうい)状況(じょうきょう)(ゆる)さなかった。


 (つぎ)から(つぎ)へと無限(むげん)()()るかのように、(あら)たな魔物(まもの)()れが(きば)()いて(おそ)いかかってくる。


父上(ちちうえ)無事(ぶじ)でよかった! でも、(いま)はのんきに(はな)している場合(ばあい)じゃないわね!」


 戦場(せんじょう)喧騒(けんそう)(なか)、シオンの一行(いっこう)(おく)れることなく合流(ごうりゅう)()たした。


 シオンが(するど)眼光(がんこう)戦場(せんじょう)全体(ぜんたい)()けると、(はげ)しい(たたか)いの最中(さなか)奮闘(ふんとう)する(べつ)獣人(じゅうじん)たちの姿(すがた)()(はい)ってきた。


 それは、この(もり)のもう(ひと)つの(あるじ)である豹族(ひょうぞく)戦士(せんし)たちだ。


 先頭(せんとう)()ち、(たぐ)まれなる敏捷性(びんしょうせい)(するど)(つめ)魔物(まもの)圧倒(あっとう)しているのは、豹族(ひょうぞく)族長(ぞくちょう)であるレオナだった。


 シオンの仲立(なかだ)ちと(はか)らいによって、長年(ながねん)対立(たいりつ)していたウルフ(ぞく)豹族(ひょうぞく)はこの(きば)(もり)(かた)同盟(どうめい)(むす)び、現在(げんざい)(たが)いに()()()って共存共栄(きょうぞんきょうえい)(みち)(あゆ)んでいた。


 その(きずな)があるからこそ、いまや(ふた)つの種族(しゅぞく)背中(せなか)(あず)()最高(さいこう)仲間(なかま)として、この危機(きき)()()かっていたのだ。


「みんな、油断(ゆだん)するな! 魔物(まもの)どもを一網打尽(いちもうだじん)にするぞ!」


 シオンの力強(ちからづよ)号令(ごうれい)合図(あいず)に、八人(はちにん)美女(びじょ)たちが一斉(いっせい)(うご)()した。


 女魔導士(おんなまどうし)リーナが広範囲(こうはんい)魔法陣(まほうじん)展開(てんかい)して(てき)足止(あしど)めをし、妖精族(ようせいぞく)のルミナリアとウルフ(ぞく)のルナリスが疾風(しっぷう)(ごと)連撃(れんげき)(てき)陣形(じんけい)()()く。


 さらに、獣化(じゅうか)したフェンリルのセレナが神聖(しんせい)(ひかり)加護(かご)味方(みかた)(まと)わせ、戦場(せんじょう)()(めぐ)るり、ダークエルフのシェリアが死角(しかく)からの正確(せいかく)一撃(いちげき)(てき)撃破(げきは)していく。


 そこへ、戦場(せんじょう)()()けていた豹族(ひょうぞく)のレオナが、シオンの姿(すがた)(みと)めると、戦闘(せんとう)最中(さなか)であることも(わす)れてパッと(かお)(かがや)かせた。


「シオン(さま)……っ! ()てくださったのですね!」


 レオナは猛獣(もうじゅう)のような圧倒的(あっとうてき)俊足(しゅんそく)(てき)()れを()()え、一直線(いっちょくせん)にシオンの胸元(むなもと)へと()()んできた。


 そのまま(いきお)(あま)ってシオンにしっかりと()きつき、その(ぬく)もりを全身(ぜんしん)(たし)かめるように身体(からだ)()()ける。


「もう、本当(ほんとう)心配(しんぱい)したのですから……! でも、こうしてすぐに()けつけてくださるなんて、さすがは(わたし)(いと)しい(かた)です!」


 レオナのあふれんばかりの愛情表現(あいじょうひょうげん)に、シオンは(こま)ったような、しかし満更(まんざら)でもない()みを()かべてその(あたま)(やさ)しく()でる。


 そのすぐ(かたわ)らでは、父親(ちちおや)との再会(さいかい)()たしたルナリスも、(たたか)いの緊張(きんちょう)()いてレオナの姿(すがた)()づいた。


「レオナ、無事(ぶじ)だったのですね!」


「ルナリス! あなたも(もど)っていたのね。よかった、みんな無事(ぶじ)で……!」


 ウルフ(ぞく)族長(ぞくちょう)(むすめ)と、豹族(ひょうぞく)族長(ぞくちょう)であるレオナは、(たが)いに笑顔(えがお)()わして(かた)()きしめ()う。


 そして、シオンの後方(こうほう)(ひか)える(もの)たちに()()けたレオナは、そこに(あら)たに(くわ)わっていた魔族(まぞく)姿(すがた)()がとまる。


 サキュバスのルビリア、魔女(まじょ)のアルテミシア、魚人族(ぎょじんぞく)のリヴァイアの三人(さんにん)存在(そんざい)()づき、(おどろ)きの(こえ)()らす。


「あれっ……? シオン(さま)(うし)ろにいるあの(もの)たちは、たしか魔王軍(まおうぐん)の……?」


「ふふっ、警戒(けいかい)しなくても大丈夫(だいじょうぶ)よ。(わたし)たちは、シオン(さま)絶対(ぜったい)下僕(げぼく)であり、最高(さいこう)(あい)された玩具(おもちゃ)なのですから」


 ルビリアが(なま)めかしく微笑(ほほえ)みながら(こた)えると、レオナは(すこ)しだけ(ほお)()きつらせたが、すぐに(ふか)納得(なっとく)したように(おお)きくうなずいた。


「まあ、シオン(さま)なら、魔族(まぞく)すらもこうしてメロメロにしてしまうのですね……。さすがとしか()いようがありません!」


 レオナが感心(かんしん)したように(わら)うと、シオンは(のこ)るすべての魔物(まもの)一掃(いっそう)すべく、(みずか)(まえ)へと(あゆ)()した。


 シオン、そして九人(きゅうにん)美女(びじょ)たち。


 リーナ、ルミナリア、ルナリス、セレナ、シェリア、ルビリア、アルテミシア、リヴァイア、そして(あら)たに(くわ)わったレオナが()りなす圧倒的(あっとうてき)連携(れんけい)(まえ)に、(きば)(もり)()るがしていた魔物(まもの)()れは、もはや抵抗(ていこう)する(すべ)もなく、次々(つぎつぎ)消滅(しょうめつ)していった。


 (はげ)しい攻防(こうぼう)(すえ)(しず)けさが(もど)った(きば)(もり)北側(きたがわ)集落(しゅうらく)には、勝利(しょうり)歓声(かんせい)と、仲間(なかま)たちの(あたた)かな(わら)(ごえ)()ちていた。


 ウルフ(ぞく)豹族(ひょうぞく)も、シオンたちの活躍(かつやく)によって無事(ぶじ)(まも)()かれ、犠牲(ぎせい)最小限(さいしょうげん)(おさ)えることができたのだ。


 (たたか)いが()わり、(よる)(とばり)()りる(ころ)


 ()()(あたた)かな(ひかり)()らす陣営(じんえい)(なか)で、シオンの一行(いっこう)とウルフ(ぞく)族長(ぞくちょう)、そして豹族(ひょうぞく)のレオナたちは、明日(あした)(ひか)えた(おお)いなる計画(けいかく)について(かた)()っていた。


 (きば)(もり)平和(へいわ)()(もど)された。


 しかし、王女(おうじょ)エルザとアルベルトが()王都(おうと)は、いまだ最大(さいだい)危機(きき)(ひん)しているはずだ......。


「みんな、よく(たたか)ってくれた。だが、(やす)んでいる(ひま)はない」


 シオンが(しず)かに、しかし力強(ちからづよ)()げると、(あつ)まった美女(びじょ)たちと獣人族(じゅうじんぞく)戦士(せんし)たちは一斉(いっせい)()()まった表情(ひょうじょう)でうなずいた。






(だい)67()(つづ)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ