表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/69

【第56話】亡霊城の蹂躙


(ころ)せ! 侵入者(しんにゅうしゃ)一人(ひとり)(のこ)らず()()きにし、()幻影(げんえい)()やしとするのだ!」


 幻影公爵(げんえいこうしゃく)ファントムロードの絶叫(ぜっきょう)が、(きり)()れた亡霊城(ぼうれいじょう)前庭(ぜんてい)(ひび)(わた)る。


 その号令(ごうれい)呼応(こおう)し、青白(あおじろ)屍衣(しい)をまとった数千(すうせん)亡霊兵(ぼうれいへい)と、(うつ)ろな腐肉(ふにく)をぶら()げたゾンビの()れが、一斉(いっせい)(きば)()いてシオンたちへと殺到(さっとう)した。


 だが、シオンの絶対支配(ぜったいしはい)(くち)づけによってファントムロードの精神汚染(せいしんおせん)から解放(かいほう)され、むしろその魔力(まりょく)(そそ)()まれて狂熱(きょうねつ)から解放(かいほう)された美女(びじょ)たちの(まえ)では、死者(ししゃ)軍勢(ぐんぜい)などただの木偶(でく)()ぎなかった。


「ふふ、よくもまあ、こんな(きたな)らしい死体(したい)ばかり(あつ)めたものね。シオン(さま)()せる価値(かち)すらないわ!」


 先陣(せんじん)()ったサキュバスのルビリアが、妖艶(ようえん)()みを()かべながら虚空(こくう)指先(ゆびさき)でなぞる。


 彼女(かのじょ)背後(はいご)から()()した紫黒色(しこくしょく)愛欲魔力(あいよくまりょく)が、(おそ)()亡霊(ぼうれい)たちの足元(あしもと)(から)みつき、その肉体(にくたい)ごと(かげ)(ぬま)へと()きずり()んでいく。


 本来(ほんらい)なら痛覚(つうかく)恐怖(きょうふ)もないはずの死者(ししゃ)たちが、ルビリアの淫魔(いんま)呪術(じゅじゅつ)()れた瞬間(しゅんかん)(くる)ったように身悶(みもだ)え、(たが)いの肉体(にくたい)(むさぼ)()()いながら自滅(じめつ)していった。


「シオン(さま)にいただいた(わたし)(せい)なる(ひかり)を、()(けが)れで(よご)そうなんて百年(ひゃくねん)(はや)いのよ!」


 元黒耀騎士(もとこくようきし)魔女(まじょ)アルテミシアが、(りょう)()(てん)へと(かか)げる。


 彼女(かのじょ)展開(てんかい)した強大極(きょうだいきわ)まりない魔導陣(まどうじん)から、どす(ぐろ)漆黒(しっこく)光弾(こうだん)豪雨(ごうう)のごとく()(そそ)いだ。


 シオンの能力(のうりょく)(せい)捕食者(ほしょくしゃ)底上(そこあ)げされた魔力(まりょく)亡霊兵(ぼうれいへい)たちの実体(じったい)(ほね)ごと消滅(しょうめつ)させ、一瞬(いっしゅん)にして戦場(せんじょう)三分(さんぶん)(いち)焦土(しょうど)へと()えた。


 その蹂躙(じゅうりん)光景(こうけい)を、シオンは満足(まんぞく)げに見守(みまも)っていた。


 (かれ)のすぐ(うし)ろでは、完全(かんぜん)理性(りせい)剥奪(はくだつ)された火炎公爵(かえんこうしゃく)フレアロードが(ひか)え、シオンの膝元(ひざもと)では魚人族(ぎょじんぞく)女王(じょおう)リヴァイアが、(うつく)しい(あし)(から)めながら、その横顔(よこがお)(あつ)吐息(といき)()つめている。


「どうした、ファントムロード。四天王(してんのう)守護(しゅご)する『(きり)亡霊城(ぼうれいじょう)』とは、この程度(ていど)のものか? お(まえ)(ほこ)精神攻撃(せいしんこうげき)とやらは、(おれ)(おんな)たちを(すこ)しだけ(たの)しませる玩具(おもちゃ)にしかならんようだな」


「お、おのれぇ……!」


 ファントムロードは、じりじりと後退(こうたい)しながら歯噛(はが)みする。


 本来(ほんらい)であれば、侵入者(しんにゅうしゃ)(しろ)(もん)をくぐる(まえ)強烈(きょうれつ)精神汚染(せいしんおせん)によって幻覚(げんかく)(おぼ)れ、(たが)いを(てき)錯覚(さっかく)して(ころ)()うはずだった。


 あるいは、(もっと)(おそ)れる過去(かこ)のトラウマに直面(ちょくめん)し、精神(せいしん)崩壊(ほうかい)させて(みずか)(いのち)()つ。


 それがこの亡霊城(ぼうれいじょう)絶対(ぜったい)攻略不可能(こうりゃくふかのう)なルールだったのだ。


 しかし、シオンという(おとこ)(はな)快楽(かいらく)魔力(まりょく)は、それらすべての絶望(ぜつぼう)恐怖(きょうふ)術式(じゅつしき)を、力任(ちからまか)せに、そして最高(さいこう)淫靡(いんび)方法(ほうほう)上書(うわが)きし、破壊(はかい)してしまった。


「ならば、これならばどうだ! ()(しろ)最奥(さいおう)(ねむ)る、亡国(ぼうこく)十万(じゅうまん)怨念(おんねん)をその()()けよ!」


 ファントムロードが(ふところ)から不気味(ぶきみ)(くろ)魔導書(まどうしょ)()()し、そのページを(はげ)しくめくった。


 亡霊城(ぼうれいじょう)尖塔(せんとう)から、(てん)(おお)()くさんばかりの漆黒(しっこく)怨霊(おんりょう)()()し、(ひと)つの巨大(きょだい)悪霊(あくりょう)(うず)形成(けいせい)する。


 それは()れるものすべての(たましい)強制的(きょうせいてき)()()る、即死(そくし)複合呪詛術式ふくごうじゅそじゅつしきだった。


 (そら)悲鳴(ひめい)()げるような金切(かなき)(ごえ)が、周囲(しゅうい)空間(くうかん)(ふる)わせる。


「シオン、あれは危険(きけん)だわ! 精神(せいしん)だけではなく、肉体(にくたい)生気(せいき)そのものを()こそぎ()()くす暗黒呪術(あんこくじゅじゅつ)一種(いっしゅ)よ。直撃(ちょくげき)すれば、さしもの私達(わたしたち)魔力防壁(まりょくぼうへき)でも……!」


 後方(こうほう)魔導書(まどうしょ)(ひら)き、(つね)戦況(せんきょう)分析(ぶんせき)していたリーナが、(はじ)めてその(こえ)(あせ)りをにじませて警告(けいこく)した。


「クフフ、生気(せいき)()()くす、か。この(おれ)から『(せい)』の奔流(ほんりゅう)(うば)()ろうなどと、滑稽(こっけい)片腹痛(かたはらいた)いわ」


 シオンは(おそ)れるどころか、愉快極(ゆかいきわ)まりないといった様子(ようす)高笑(たかわら)いした。


 (かれ)はゆっくりと一歩(いっぽ)(まえ)()ると、その()宿(やど)る「(せい)捕食者(ほしょくしゃ)」の魔力(まりょく)限界(げんかい)まで解放(かいほう)する。


 その瞬間(しゅんかん)、シオンの身体(からだ)から()(のぼ)ったのは、禍々(まがまが)しくも圧倒的(あっとうてき)甘美(かんび)な、紫黒色(しこくしょく)魔力(まりょく)のオーラだった。


 それは死者(ししゃ)怨念(おんねん)など比較(ひかく)にならないほど、生々(なまなま)しく、そして強烈(きょうれつ)生命力(せいめいりょく)濁流(だくりゅう)


 シオンの魔力(まりょく)そのものが、周囲(しゅうい)空間(くうかん)を「捕食者(ほしょくしゃ)(おり)」へと(つく)()えていく。


()らい()くしてやろう。お(まえ)たちのその怨念(おんねん)ごと、(おれ)欲望(よくぼう)(かて)にしてくれる」


 シオンが片手(かたて)()()すと、(かれ)(かげ)から無数(むすう)巨大(きょだい)触手(しょくしゅ)(かたち)()し、(てん)()かって()()がった。


 紫黒色(しこくしょく)触手(しょくしゅ)は、(おそ)いかかってきた十万(じゅうまん)怨霊(おんりょう)(うず)強引(ごういん)(から)()り、あろうことかその「()魔力(まりょく)」を、強制的(きょうせいてき)快楽(かいらく)のエネルギーへと変換(へんかん)して、シオンの体内(たいない)へと吸収(きゅうしゅう)(はじ)めたのだ。


「な……ば、バカな!? 怨念(おんねん)を、呪詛(じゅそ)()()げて、(みずか)らの(かて)にしているだと……!? 貴様(きさま)人間(にんげん)ではない! 魔王様(まおうさま)以上(いじょう)の、(そこ)なしの魔神(まじん)か!」


 ファントムロードの(しろ)仮面(かめん)が、恐怖(きょうふ)でカタカタと(ふる)()す。


「お(まえ)たちの絶望(ぜつぼう)など、(おれ)にとっては極上(ごくじょう)のスパイスに()ぎん」


 怨霊(おんりょう)(ちから)をすべて()()くしたシオンの魔力(まりょく)は、以前(いぜん)よりもさらに(ふく)()がり、その双眸(そうぼう)獲物(えもの)(さだ)めた肉食獣(にくしょくじゅう)のように(あや)しく(かがや)いていた。


 シオンは一瞬(いっしゅん)でファントムロードの()(まえ)へと跳躍(ちょうやく)すると、その(ほそ)(くび)片手(かたて)乱暴(らんぼう)(つか)()げ、地面(じめん)から()るし()げた。


「が、はっ……あ、(はな)せ……!」


「さあ、その生意気(なまいき)仮面(かめん)(した)()せてもらおうか。幻影(げんえい)(あやつ)るお(まえ)自身(じしん)が、どれほど無様(ぶざま)で、(から)っぽな存在(そんざい)なのかをな」


 シオンは容赦(ようしゃ)なく、もう片方(かたほう)()でファントムロードの顔面(がんめん)()()いた不気味(ぶきみ)(しろ)仮面(かめん)(つか)み、力任(ちからまか)せに()()がした。


 バリィッ、と陶器(とうき)()れるような(おと)(とも)に、仮面(かめん)(くだ)()る。


 (あら)わになったその素顔(すがお)人間(にんげん)魔族(まぞく)のそれではなく、ただのドロドロとした(くろ)(どろ)のような不定形(ふていけい)精神体(せいしんたい)だった。


 (かれ)自身(じしん)肉体(にくたい)(うしな)い、幻影(げんえい)(なか)にしか存在(そんざい)できない(あわ)れな亡霊(ぼうれい)()れの()てだったのだ。


「クフフ、やはりな。中身(なかみ)のない虚無(きょむ)()(もの)が、(えら)そうに(しろ)(かま)えていたわけだ。だが安心(あんしん)しろ、その(から)っぽの精神(せいしん)に、(おれ)()えない刻印(こくいん)をじっくりと(きざ)()んでやる」


 シオンは冷酷(れいこく)微笑(ほほえ)むと、捕食者(ほしょくしゃ)指先(ゆびさき)を、ファントムロードの顔面(がんめん)(くろ)(どろ)奥深(おくぶか)くへと、容赦(ようしゃ)なく()()した。





(だい)57()(つづ)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ