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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第55話】霧の亡霊城


 海王(かいおう)リヴァイアを調教(ちょうきょう)し、その膨大な(ぼうだいな)水属性(みずぞくせい)魔力(まりょく)深海(しんかい)大結界(だいけっかい)制御権(せいぎょけん)()()れたシオンは、要塞船(ようさいせん)(つぎ)なる針路(しんろ)(きた)魔族領(まぞくりょう)へと()けていた。


 リヴァイアから()膨大(ぼうだい)水魔力(みずまりょく)により、要塞船(ようさいせん)桁違(けたちが)いの推進力(すいしんりょく)()ている。


 船底(ふなぞこ)(きざ)まれた魔導光(まどうこう)(あや)しく脈動(みゃくどう)し、海面(かいめん)(すべ)るように疾走(しっそう)していた。


「クフフ……四天王(してんのう)(のこ)るは二人(ふたり)か。魔王(まおう)(ふところ)まで、ずいぶんと(ちか)づいてきたものだな」


 要塞船(ようさいせん)最上階(さいじょうかい)にある豪奢(ごうしゃ)自室(じしつ)玉座(ぎょくざ)で、シオンは満足(まんぞく)げに()もたれに()(あず)けていた。


 その(ひざ)(うえ)には、(さき)ほどまで(はげ)しく(むさぼ)られていた海王(かいおう)リヴァイアが、恍惚(こうこつ)とした表情(ひょうじょう)でシオンの(むね)(かお)(うず)めている。


「シオン、要塞船(ようさいせん)接岸(せつがん)可能(かのう)入江(いりえ)到着(とうちゃく)したわ。これより(さき)陸路(りくろ)になるけど、目的地(もくてきち)の『(きり)亡霊城(ぼうれいじょう)』の魔力(まりょく)がここまで侵食(しんしょく)してきているようだわ。周囲(しゅうい)魔力(まりょく)密度(みつど)急激(きゅうげき)上昇(じょうしょう)視界(しかい)遮断率(しゃだんりつ)九割(きゅうわり)()えてる」


 魔導伝達(まどうでんたつ)術式(じゅつしき)(つう)じてリーナの冷静(れいせい)(こえ)響く(ひびく)


 シオンが(まど)(そと)()()けると、入江(いりえ)(つつ)()断崖(だんがい)(さき)には、昼間(ひるま)だというのに(くら)不気味(ぶきみ)なほどに濃密(のうみつ)灰色(はいいろ)(きり)()()めていた。


 ただの自然現象(しぜんげんしょう)ではない。


 そこに(ふく)まれているのは、人間(にんげん)精神(せいしん)(むしば)み、狂気(きょうき)へと(いざな)強力(きょうりょく)幻惑(げんわく)呪詛(じゅそ)魔力(まりょく)だった。


「ふふ、陰気(いんき)場所(ばしょ)ね。でも、シオン(さま)魔力(まりょく)(くら)べれば、こんな(やす)っぽい(きり)なんてただの目隠(めかく)しにもならないわ」


 シオンの(かたわ)らに(ひか)えるルビリアが、傲慢(ごうまん)(むね)()りながら(どく)づく。


 シオンたちが要塞船(ようさいせん)()り、入江(いりえ)から(きり)深部(しんぶ)へと(あし)()(すす)めるにつれ、周囲(しゅうい)空間(くうかん)不自然(ふしぜん)(ゆが)(はじ)めた。


 やがて(きり)()こうから、そびえ()無数(むすう)尖塔(せんとう)()(なら)死者(ししゃ)廟堂(びょうどう)。その()こうに巨大(きょだい)な「(しろ)」の幻影(げんえい)が、蜃気楼(しんきろう)のように姿(すがた)(あらわ)す。


 こここそが、三人目(さんにんめ)四天王(してんのう)幻影公爵(げんえいこうしゃく)ファントムロードが支配(しはい)する絶対不可侵(ぜったいふかしん)領域(りょういき)であった。


「おのれ、不遜(ふそん)なる侵入者(しんにゅうしゃ)め。()(うつく)しき幻影(げんえい)(しろ)を、(けが)すことは(ゆる)さぬ」


 突然(とつぜん)全方位(ぜんほうい)から、幾重(いくえ)にも(かさ)なった残響(ざんきょう)(ともな)(こえ)(ひび)(わた)った。


 (つぎ)瞬間(しゅんかん)濃霧(のうむ)(はげ)しく渦巻(うずま)き、シオンたちの周囲(しゅうい)無数(むすう)の『シオンの姿(すがた)』をした幻影(げんえい)(あらわ)れた。


 それだけではない。


 アルテミシアやルミナリア、()ては、リーナ、ルビリア、セレナ、シェリア、ルナリス、リヴァイアに(いた)るまで、シオンが(したが)える美女(びじょ)たちの姿(すがた)()した偽物(にせもの)が、怨嗟(えんさ)(こえ)()げながら(おそ)いかかってきたのだ。


「ほう、(おれ)たちの偽物(にせもの)か。つまらん(げい)披露(ひろう)してくれる」


 シオンは不敵(ふてき)(くちびる)(ゆが)め、美女(びじょ)たちもそれぞれの武器(ぶき)(かま)えて周囲(しゅうい)警戒(けいかい)する。


「シオン、あれは精神(せいしん)直接(ちょくせつ)実体(じったい)である』と錯覚(さっかく)させることで、物理的(ぶつりてき)破壊力(はかいりょく)()()高位(こうい)精神術式(せいしんじゅつしき)よ!」


 リーナが魔導書(まどうしょ)をめくりながら警告(けいこく)する。


 (げん)に、(せま)()偽物(にせもの)のアルテミシアが(はな)った(ひかり)(やいば)は、周囲(しゅうい)岩壁(がんぺき)(はげ)しく火花(ひばな)()らして(けず)()っていた。


 ()れれば()ぬ。


 しかし、本体(ほんたい)がどこにいるのかが()からなければ、どれほど強力(きょうりょく)攻撃(こうげき)(はな)っても(きり)()(きりさ)くだけで()わってしまう。


「あはは! 面白(おもしろ)いじゃない! (わたし)偽物(にせもの)なんて、本物(ほんもの)可愛(かわい)さの足元(あしもと)にも(およ)ばないけどね!」


 ルミナリアが不気味(ぶきみ)魔導陣(まどうじん)展開(てんかい)し、周囲(しゅうい)幻影(げんえい)()けて紫黒色(しこくしょく)魔導弾(まどうだん)乱射(らんしゃ)する。


 だが、弾丸(だんがん)幻影(げんえい)肉体(にくたい)をすり()け、背後(はいご)(きり)(なか)(むな)しく爆発(ばくはつ)するだけだった。


「ちっ、手応(てごた)えがないわね! 本当(ほんとう)鬱陶(うっとう)しい(きり)だわ!」


「クフフ、(あわ)てるな。幻影(げんえい)ということは、そこに『()せたい意思(いし)存在(そんざい)するということだ。ならば、その意思(いし)源流(げんりゅう)直接(ちょくせつ)()きずり()してやればいい」


 シオンは不敵(ふてき)(わら)うと、自身(じしん)体内(たいない)から(はな)たれる「(せい)捕食者(ほしょくしゃ)」の魔力(まりょく)解放(かいほう)し、入江(いりえ)(のこ)してきた要塞船(ようさいせん)(かく)へと遠隔(えんかく)直結(ちょっけつ)させた。


 入江(いりえ)方向(ほうこう)から、深海(しんかい)()たリヴァイアの水魔力(みずまりょく)が、(きり)()()むような巨大(きょだい)魔力渦(まりょくうず)となって()()い、この断崖(だんがい)(うえ)へと一気(いっき)()()がってくる。


 シオンの(せい)魔力(まりょく)()びた(くろ)津波(つなみ)が、周囲(しゅうい)濃霧(のうむ)強引(ごういん)()()みながら、古城(こじょう)幻影(げんえい)ごと空間(くうかん)圧殺(あっさつ)していく。


「な、()だと……!? (われ)構築(こうちく)した絶対(ぜったい)幻惑空間(げんわくくうかん)が、力任(ちからま)せに()(つぶ)されていくというのか……!?」


 全方位(ぜんほうい)から(ひび)いていた(こえ)が、明確(めいかく)動揺(どうよう)(ふく)んだ(ひと)つの悲鳴(ひめい)へと()わった。


 空間(くうかん)(ひず)みが限界(げんかい)(むか)え、バリバリと()けるような(おと)(ひび)く。


()つけたぞ、ネズミめ」


 シオンが(ゆび)()した(さき)空間(くうかん)()()から姿(すがた)(あらわ)したのは、豪奢(ごうしゃ)貴族(きぞく)衣服(いふく)()にまといながらも、その(かお)不気味(ぶきみ)(しろ)仮面(かめん)(おお)われた怪人(かいじん)幻影公爵(げんえいこうしゃく)ファントムロードであった。


人間(にんげん)に、()正体(しょうたい)見破(みやぶ)られるとはな……。だが、この(しろ)領域(りょういき)(あし)()()れた時点(じてん)で、お(まえ)たちの精神(せいしん)はすでに()術式(じゅつしき)(おり)(なか)だ! (くる)い、(たがいに)いに(ころ)()うが()い!」


 ファントムロードが両手(りょうて)(ひろ)げると、シオンの背後(はいご)にいたアルテミシアやシェリアたちの(ひとみ)から、(ひかり)(うしな)われた。


 精神攻撃(せいしんこうげき)波動(はどう)が、彼女(かのじょ)たちの(のう)(おう)へと()()さったのだ。


「シオン、(さま)……? (いや)(わたし)を、()てないで……!」


 アルテミシアが突如(とつじょ)(あたま)(かか)えてその()(くず)()ちた。


 彼女(かのじょ)脳裏(のうり)には、シオンに拒絶(きょぜつ)され、見捨(みす)てられるという、(もっと)(おそ)れていた『絶望(ぜつぼう)幻影(げんえい)強制的(きょうせいてき)()せられていた。ルミナリアやセレナも、それぞれのトラウマに(とら)われ、(はげ)しく呼吸(こきゅう)(みだ)(はじ)める。


「クフフ、精神汚染(せいしんおせん)か。サキュバス以上(いじょう)使(つか)()気取(きど)りのようだが、(わす)れてもらっては(こま)るな」


 シオンは(ひる)むことなく一歩(いっぽ)(まえ)()ると、(くず)()ちたアルテミシアを(やさ)しく()()せ、その(くちびる)自身(じしん)(くちびる)(かさ)ねた。


 濃厚(のうこう)(くち)づけと(とも)に、シオンの圧倒的(あっとうてき)な「支配(しはい)魔力(まりょく)」が、アルテミシアの(なか)へと直接(ちょくせつ)(なが)()まれる。


「んんっ……!? あ、ぁはっ……!」


 アルテミシアの身体(しんたい)がビクンと()()がる。


 脳内(のうない)()()くしていた(いつわ)りの絶望(ぜつぼう)が、シオンの(はな)強烈(きょうれつ)快楽(かいらく)絶対的(ぜったいてき)所有(しょゆう)波動(はどう)によって、一瞬(いっしゅん)にして()()ばされる。


 彼女(かのじょ)(ひとみ)にシオンへの狂信的(きょうしんてき)(あい)(ひかり)(もど)る。


(おも)()したか? お(まえ)たちの精神(せいしん)支配(しはい)していいのは、この世界(せかい)(おれ)ただ一人(ひとり)だ」


 シオンがルナリス、シェリアたちにも次々(つぎつぎ)魔力(まりょく)()(あた)えると、美女(びじょ)たちは全員(ぜんいん)、ファントムロードの魔力(まりょく)完全(かんぜん)無効化(むこうか)し、禍々(まがまが)しいオーラを(はな)って()()がった。


「バ、バカな……! ()最高位(さいこうい)精神破壊(せいしんはかい)を、ただの快楽(かいらく)魔力(まりょく)上書(うわが)きしただと……!? あり()ん、そんな怪物(かいぶつ)人間(にんげん)存在(そんざい)するはずが……!」


 ファントムロードが仮面(かめん)(おく)絶望(ぜつぼう)(こえ)()げる。


「さあ、お仕置(おしお)きの時間(じかん)だ。その生意気(なまいき)仮面(かめん)(した)がどんな(かお)をしているか、じっくりと拝見(はいけん)してやる」


 シオンの冷酷(れいこく)命令(めいれい)(とも)に、完全(かんぜん)正気(しょうき)()(もど)し、(いか)りに()える美女(びじょ)たちが、亡霊城(ぼうれいじょう)軍勢(ぐんぜい)()けて一斉(いっせい)()()んでいった。






(だい)56()(つづ)






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