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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第46話】鋼鉄の四天王


 地下監獄(ちかかんごく)(つめ)たい空気(くうき)(はげ)しく()るがす不気味(ぶきみ)重低音(じゅうていおん)は、確実(かくじつ)にこの『黒鉄(くろがね)要塞(ようさい)』の(あるじ)である魔将軍(ましょうぐん)バルゴスの(いか)りと、その巨体(きょたい)(はな)威圧感(いあつかん)体現(たいげん)していた。


 シオンの(するど)命令(めいれい)()けたリーナとアルテミシアは、即座(そくざ)魔力(まりょく)同調(どうちょう)させ、救出(きゅうしゅつ)されたダークエルフ一族(いちぞく)足元(あしもと)巨大(きょだい)転送術式(てんそうじゅつしき)展開(てんかい)する。


 術式(じゅつしき)から(はな)たれたまばゆい紫黒色(しこくしょく)青白い(あおじろい)(ひかり)(うず)監獄内(かんごくない)(まぶ)しく()らし、衰弱(すいじゃく)していたダークエルフたちは、長老(ちょうろう)をはじめ子供(こども)たちに(いた)るまで、一瞬(いっしゅん)のうちに要塞(ようさい)(そと)安全(あんぜん)場所(ばしょ)へと転送(てんそう)された。


 (あと)(のこ)ったのは、鉄格子(てつごうし)(まえ)(たたず)絶対(ぜったい)支配者(しはいしゃ)シオンと、(かれ)(あい)()まる六人(ろくにん)美女(びじょ)たちだけだ。


 一族(いちぞく)無事(ぶじ)避難(ひなん)させ、人質(ひとじち)という最後(さいご)足枷(あしかせ)完全(かんぜん)()()ったシェリアの(ひとみ)には、もはや(まよ)いなど微塵(みじん)もなかった。


 かつてないほど濃厚(のうこう)愛欲(あいよく)と、盲目的(もうもくてき)なまでの忠誠心(ちゅうせいしん)速度(そくど)()した宿敵(しゅくてき)への容赦(ようしゃ)なき殺意(さつい)がその(ひとみ)(おく)渦巻(うずま)いていた。


()くぞ。間抜(まぬ)けな鉄屑(てつくず)に、本当(ほんとう)支配者(しはいしゃ)(だれ)であるかを(おし)えてやる」


 シオンの冷徹(れいてつ)一言(ひとこと)とともに、一同(いちどう)地下監獄(ちかかんごく)(あと)にし、薄暗(うすぐら)通路(つうろ)へと()()した。


 すでに要塞内(ようさいない)裏切(うらぎ)(もの)侵入(しんにゅう)察知(さっち)した警報(けいほう)()(ひび)く。


 通路(つうろ)には、バルゴス直属(ちょくぞく)精鋭(せいえい)である重装甲兵(じゅうそうこうへい)たちが、武器(ぶき)(かま)えて次々(つぎつぎ)姿(すがた)(あらわ)していた。


 だが、シオンの絶対(ぜったい)(てき)覇気(はき)同調(どうちょう)し、(まじ)わりのバフによって極限(きょくげん)まで身体能力(しんたいのうりょく)()()げられた彼女(かのじょ)たちの(まえ)では、(せま)()(てつ)軍勢(ぐんぜい)などただの肉塊(にくかい)予備軍(よびぐん)()ぎなかった。


 前衛(ぜんえい)のセレナが神速(しんそく)()()みから()()(するど)(つめ)が、重装甲兵(じゅうそうこうへい)分厚(ぶあつ)鋼鉄(こうてつ)容易(たやす)()()いていく。


 両断(りょうだん)された(よろい)から血飛沫(ちしぶき)()うのと同時(どうじ)に、妖艶(ようえん)(たたず)むルミナリアが濃厚(のうこう)幻術(げんじゅつ)(はな)ち、後方(こうほう)から支援(しえん)しようとした(へい)たちの五感(ごかん)(くる)わせた。


 (かれ)らが虚空(こくう)()かって滅茶苦茶(めちゃくちゃ)武器(ぶき)()(まわ)すその背後(はいご)から、ルナリスが、(するど)戦斧(せんぷ)容赦(ようしゃ)なく(ふる)う。


 シェリアもまた、シオンの(かげ)として一切(いっさい)無駄(むだ)がない(うご)きで二振(ふたふ)りの短剣(たんけん)()るい、重装兵(じゅうそうへい)隙間(すきま)的確(てきかく)(つらぬ)いていく。


 かつて魔王軍(まおうぐん)最凶(さいきょう)(おそ)れられた彼女(かのじょ)(やいば)は、(あるじ)であるシオンに勝利(しょうり)(ささ)げるためだけに、以前(いぜん)よりもさらに冷酷(れいこく)に、さらに(するど)()()まされていた。


 わずか数分(すうふん)


 文字通(もじどお)りの蹂躙劇(じゅうりんげき)()(ひろ)げ、シオンの漆黒(しっこく)外套(がいとう)(かえ)()一滴(いってき)すら()びせることなく通路(つうろ)()(すす)んだ一行(いっこう)は、ついに要塞(ようさい)中央(ちゅうおう)位置(いち)する大広間(おおひろま)巨大(きょだい)鉄扉(てっぴ)(まえ)へと到達(とうたつ)した。


 シオンが不敵(ふてき)()みを()かべて(とびら)豪快(ごうかい)()()けると、そこには圧倒的(あっとうてき)質量(しつりょう)()った絶望(ぜつぼう)光景(こうけい)(ひろ)がっていた。


 大広間(おおひろま)(おく)鋼鉄(こうてつ)幾重(いくえ)にも溶接(ようせつ)して(つく)られた禍々(まがまが)しい玉座(ぎょくざ)に、その(おとこ)鎮座(ちんざ)していた。


 魔王軍(まおうぐん)四天王(してんのう)一人(ひとり)魔将軍(ましょうぐん)バルゴス。


 全身(ぜんしん)常人(じょうじん)数倍(すうばい)はある巨大(きょだい)漆黒(しっこく)(よろい)(つつ)み、()には()(たけ)()える大質量(だいしつりょう)戦鎚(せんつい)(にぎ)りしめている。


 その装甲(そうこう)隙間(すきま)から(のぞ)()は、人質(ひとじち)(うば)われ、すべての計算(けいさん)(くる)わされたことへの(いか)りと驚愕(きょうがく)()()血走(ちばし)っていた。


「ネズミめ、まさか()警戒網(けいかいもう)完璧(かんぺき)(くぐ)()け、あの地下監獄(ちかかんごく)結界(けっかい)力任(ちからまか)せに粉砕(ふんさい)するとはな……! だが、ダークエルフどもをどこへ(かく)そうと、この(おれ)不落(ふらく)要塞(ようさい)から()きて()られると(おも)うなよ!」


 バルゴスの地鳴(じな)りのような咆哮(ほうこう)大広間(おおひろま)(かべ)(はげ)しく(ふる)わせる。


 (すさ)まじい魔圧(まあつ)空間(くうかん)支配(しはい)するが、シオンはそれを真正面(ましょうめん)から()びながらも、最高(さいこう)(たの)しげな()みを()かべて一歩(いっぽ)(まえ)へと()る。


「クフフ、不落(ふらく)要塞(ようさい)だと? ()せかけだけの鉄屑(てつくず)(なら)べただけの(おり)が、この(おれ)()()められると本気(ほんき)(おも)っているのか。バルゴス、お(まえ)()絶対(ぜったい)装甲(そうこう)など、(おれ)(まえ)には存在(そんざい)しないも同然(どうぜん)だ。人質(ひとじち)という(やす)っぽいカードを(うしな)ったお(まえ)に、(なに)(のこ)されている?」


(だま)れ、小悪党(こあくとう)が! ()鋼鉄(こうてつ)軍勢(ぐんぜい)と、この圧倒的(あっとうてき)破壊力(はかいりょく)(まえ)には、貴様(きさま)らの小細工(こざいく)など無意味(むいみ)だということをその()(きざ)んでくれるわ!」


 バルゴスが(いか)(くる)って戦鎚(せんつい)(ゆか)(たた)きつけると、(はげ)しい地響(じひび)きとともに大広間(おおひろま)(かべ)左右(さゆう)へと(ひら)き、そこから要塞(ようさい)動力源(どうりょくげん)直結(ちょっけつ)した巨大(きょだい)な『魔導重砲(まどうじゅうほう)』の砲口(ほうこう)不気味(ぶきみ)姿(すがた)(あらわ)した。


 人間(にんげん)(まち)など一撃(いちげき)焦土(しょうど)()える極大(きょくだい)破壊兵器(はかいへいき)が、ガチガチと重々(おもおも)しい(おと)()ててシオンたちへと照準(しょうじゅん)()わせる。


「シオン(さま)、あれは要塞(ようさい)総魔力(そうまりょく)(そそ)()んだ一撃(いちげき)です。まともに()ければいかに(わたし)たちの障壁(しょうへき)でも(ふせ)ぎきれません……! 」


 リーナが手元(てもと)魔導書(まどうしょ)(ひろ)げて周囲(しゅうい)魔力波動(まりょくはどう)解析(かいせき)しながら(さけ)ぶ。


 しかし、シオンはそのリーナの(まえ)()()()べ、どこまでも余裕(よゆう)()ちた態度(たいど)でゆっくりと()(かえ)る。


(あん)ずるな、リーナ。アルテミシア、準備(じゅんび)はいいな?」


「ふふ、もちろんでございますわ、()(いと)しき(あるじ)。この要塞(ようさい)術式回路(じゅつしきかいろ)は、(わたし)がバルゴスと共同(きょうどう)構築(こうちく)したもの。すでに半分(はんぶん)以上(いじょう)(わたし)指先(ゆびさき)(なか)にありますもの」


 アルテミシアが漆黒(しっこく)のドレスの(すそ)()らしながら妖艶(ようえん)微笑(ほほえ)み、(ほそ)指先(ゆびさき)()()して要塞(ようさい)のエネルギーの「(ゆが)み」を正確(せいかく)になぞってみせた。


 彼女(かのじょ)とリーナの魔力(まりょく)同調(どうちょう)させ、防衛(ぼうぎょ)システムを麻痺(まひ)させたあの技術(ぎじゅつ)は、(いま)要塞(ようさい)心臓部(しんぞうぶ)そのものを内側(うちがわ)から(むしば)んでいたのだ。


 バルゴスが()(がね)()くよりも(はや)く、魔導重砲(まどうじゅうほう)砲口(ほうこう)(あつ)まっていた莫大(ばくだい)魔力(まりょく)エネルギーが、制御(せいぎょ)完全(かんぜん)(うしな)って術式回路(じゅつしきかいろ)逆流(ぎゃくりゅう)(はじ)めた。


「な、(なん)だと!? 魔導砲(まどうほう)作動(さどう)せん……馬鹿(ばか)な、術式回路(じゅつしきかいろ)()()えられているだと!?」


 驚愕(きょうがく)()見開(みひら)くバルゴスの視線(しせん)(さき)で、魔導重砲(まどうじゅうほう)内側(うちがわ)から不気味(ぶきみ)爆発音(ばくはつおん)()て、(はげ)しい火花(ひばな)()らしながら完全(かんぜん)沈黙(ちんもく)した。


 シオンの狡猾(こうかつ)戦略(せんりゃく)は、戦闘(せんとう)(はじ)まる(はる)(まえ)から、この要塞(ようさい)絶対(ぜったい)(てき)優位性(ゆういせい)(うば)()っていたのだ。


「お(まえ)自慢(じまん)するその玩具(おもちゃ)は、もうただの鉄屑(てつくず)だ。さあ、(つぎ)本体(ほんたい)(ばん)だな」


 シオンが冷酷(れいこく)()げると、その背後(はいご)から六人(ろくにん)美女(びじょ)たちが一斉(いっせい)強烈(きょうれつ)殺気(さっき)爆発(ばくはつ)させた。


 シェリアを(おど)して利用(りよう)し、一族(いちぞく)家畜(かちく)として使(つか)(つぶ)そうとした魔王軍(まおうぐん)への(いか)り。


 それを()らし、(みずか)らを(すく)()してくれたシオン(さま)への絶対(ぜったい)(てき)(あい)証明(しょうめい)するため、シェリアが二振(ふたふ)りの短剣(たんけん)(かま)えてバルゴスの眼前(がんぜん)へと()ちはだかる。


「バルゴス、お(まえ)()一族(いちぞく)(あた)えた屈辱(くつじょく)、そしてシオン(さま)()(わずら)わせた(つみ)……その(いのち)(もっ)て、(いま)すぐ(つぐな)わせる!」


 



(だい)47()(つづ)







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