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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第36話】黒耀を溶かす愛欲の罠


 (こおり)荒野(こうや)に、無数(むすう)(ひづめ)(おと)地鳴(じな)りのように(ひび)(わた)る。


 魔王(まおう)ギルガザードの懐刀(ふところがたな)魔女(まじょ)アルテミシアが(ひき)いる「黒耀騎士団(こくようきしだん)」の突撃(とつげき)は、()(もの)圧倒(あっとう)する漆黒(しっこく)暴力(ぼうりょく)そのものだった。


 一騎(いっき)一騎(いっき)禍々(まがまが)しい魔力(まりょく)(はな)ち、白銀(はくぎん)雪原(せつげん)(くろ)()りつぶしていく。


 しかし、突撃(とつげき)する精鋭(せいえい)たちの足元(あしもと)で、大地(だいち)不気味(ぶきみ)桃色(ももいろ)へと脈動(みゃくどう)した。


(つど)え、シオン(さま)(てき)永劫(えいごう)(おり)(いざな)え。『淫凍(いんとう)結界(けっかい)』!」


 城壁(じょうへき)(うえ)両手(りょうて)(かか)げる巫女(みこ)サクヤの詠唱(えいしょう)(とも)に、無数(むすう)巨大(きょだい)桃色(ももいろ)氷柱(ひょうちゅう)爆発(ばくはつ)(てき)()()す。


 愛欲(あいよく)魔力(まりょく)()ざり()ったサクヤの(こおり)は、()れた(もの)精神(せいしん)強制(きょうせい)(てき)魅了(みりょう)状態(じょうたい)(たた)()とす絶望(ぜつぼう)(おり)


「くっ……(なん)だ、この(ひかり)は……身体(からだ)が、(あつ)い……!?」


 先頭(せんとう)(はし)漆黒(しっこく)騎兵(きへい)たちが、氷柱(ひょうちゅう)()れた瞬間(しゅんかん)次々(つぎつぎ)落馬(らくば)した。


 冷徹無比(れいてつむひ)だった(かれ)らの(ひとみ)が、一瞬(いっしゅん)にして快楽(かいらく)(どく)(おか)され、(はげ)しく混濁(こんだく)していく。


 かつて魔王(まおう)(ささ)げたはずの忠誠心(ちゅうせいしん)は、シオンの濃厚(のうこう)魔力(まりょく)(まえ)一瞬(いっしゅん)()()えられ、ただその()(ひざまず)いていく。


動揺(どうよう)するな。陣形(じんけい)(くず)さず、そのまま()(つぶ)せ」


 後方(こうほう)からアルテミシアの冷徹(れいてつ)(こえ)()ぶ。


 彼女(かのじょ)(ほそ)指先(ゆびさき)から(はな)たれた(くろ)雷撃(らいげき)が、サクヤの氷柱(ひょうちゅう)容赦(ようしゃ)なく破壊(はかい)し、騎兵(きへい)進路(しんろ)をこじ(こじあ)けた。


「さすがは魔王(まおう)懐刀(ふところがたな)。ですが、シオン(さま)防衛(ぼうえい)ラインはそれだけではありませんよ」


 背後(はいご)から妖艶(ようえん)(こえ)(ひび)く。


 アルテミシアが視線(しせん)()けると、そこには寝返(ねがえ)った魔族(まぞく)(へい)(ひき)いるヴァルグリム、そしてその(かげ)から(おど)()たフェンリルのセレナが()(かま)えていた。


裏切(うらぎ)(もの)どもが……!」


裏切り(うらぎり)ではない。(わたし)は、(しん)(あるじ)(めぐ)()えただけだ!」


 ヴァルグリムの漆黒(しっこく)大剣(たいけん)が、黒耀騎士団(こくようきしだん)副団長(ふくだんちょう)(くび)一撃(いちげき)()()ばす。


 シオンから濃密(のうみつ)魔力(まりょく)供給(きょうきゅう)()けて強化(きょうか)されたヴァルグリムの(ちから)は、かつての()ではなかった。


 セレナもまた、(するど)(つめ)(くろ)(よろい)次々(つぎつぎ)()()き、()(あか)(ゆき)(しろ)、そして愛欲(あいよく)桃色(ももいろ)()()じる戦場(せんじょう)(つく)()していく。


 だが、黒耀騎士団(こくようきしだん)(しん)脅威(きょうい)はアルテミシア本人(ほんにん)だった。


 彼女(かのじょ)呪文(じゅもん)(とな)えると、空間(くうかん)そのものが(ゆが)み、無数(むすう)(くろ)魔力(まりょく)(だん)戦場(せんじょう)全体(ぜんたい)へと()(そそ)ぐ。


 圧倒的(あっとうてき)破壊力(はかいりょく)が、寝返(ねがえ)った魔族(まぞく)(へい)たちを容赦(ようしゃ)なく圧殺(あっさつ)していった。


「やはり、最終(さいしゅう)防衛(ぼうえい)ラインまで()ましたね」


 (とりで)深奥(しんおう)本殿(ほんでん)へと(つづ)最後(さいご)(もん)(まえ)で、リーナがルナリスとルミナリアを(したが)えて()ちはだかった。


「シオンから、ここを(とお)すなと()われているの。(わる)いけど、ここで()まってもらうわ」


 リーナの指示(しじ)により、ルナリスとルミナリアが同時(どうじ)強力(きょうりょく)魔術(まじゅつ)展開(てんかい)する。


 二人(ふたり)(はな)(ひかり)障壁(しょうへき)と、アルテミシアの(くろ)雷撃(らいげき)(はげ)しく衝突(しょうとつ)し、大気(たいき)悲鳴(ひめい)()げた。


「これほどの戦力(せんりょく)(かく)()っていたとはな。だが、(わたし)(まえ)ではすべて無意味(むいみ)だ」


 アルテミシアは表情(ひょうじょう)(ひと)()えず、さらに魔力(まりょく)()()げる。


 その冷徹(れいてつ)威圧感(いあつかん)に、リーナたちも(いき)()んだ。


 その(とき)本殿(ほんでん)(おく)から、ゆっくりとした足音(あしおと)(ひび)いてきた。


「そこまでにしろ、アルテミシア」


 (あらわ)れたのは、絶対(ぜったい)支配者(しはいしゃ)、シオン。


 その(かたわ)らには、薄衣(うすごろも)(まと)い、(とろ)けた(ひとみ)でシオンの(ふく)(すそ)(にぎ)りしめるルビリアの姿(すがた)があった。


「ルビリア……本当(ほんとう)に、()(かげ)もなく()()がったな」


 アルテミシアの(つめ)たい視線(しせん)がルビリアを射抜(いぬ)く。


 しかし、ルビリアはシオンの(うで)(むね)()()けながら、くすくすと狂気(きょうき)じみた(はな)(ごえ)()げた。


「ふふ……かわいそうなアルテミシア。()()がった? (ちが)うわ。(わたし)は、この()最高(さいこう)幸福(こうふく)()ったのよ。シオン(さま)指先(ゆびさき)、その(こえ)、そのすべてが、(わたし)身体(からだ)極上(ごくじょう)快楽(かいらく)()たしてくれる……。お(まえ)のその(つめ)たい(ほこ)りも、シオン(さま)能力(のうりょく)(まえ)では、ただの調教(ちょうきょう)のスパイスに()ぎないわ」


下劣(げれつ)なサキュバスめ。人間(にんげん)(じゅつ)など、(わたし)理性(りせい)(はじ)(かえ)す」


 アルテミシアがシオンに()けて右手(みぎて)(かか)げ、最大(さいだい)出力(しゅつりょく)黒雷(こくらい)(はな)とうとした。


 だが、シオンは一歩(いっぽ)(うご)かず、ただその妖艶(ようえん)(ひとみ)でアルテミシアを()()ぐに()つめた。


理性(りせい)過信(かしん)するな、魔女(まじょ)。お(まえ)冷徹(れいてつ)であればあるほど、それが崩壊(ほうかい)した(とき)快楽(かいらく)(ふか)くなる」


 シオンの「(せい)捕食者(ほしょくしゃ)」の能力(のうりょく)が、アルテミシアの発動(はつどう)した魔術(まじゅつ)術式(じゅつしき)直接(ちょくせつ)逆流(ぎゃくりゅう)させる。


 アルテミシアの(はな)った黒雷(こくらい)が、シオンの手前(てまえ)禍々(まがまが)しい桃色(ももいろ)愛欲(あいよく)(どく)へと反転(はんてん)し、彼女(かのじょ)自身(じしん)肉体(にくたい)へと()()さった。


「な……に……っ!?」


 アルテミシアの(しろ)(はだ)が、一瞬(いっしゅん)にして(ねつ)()びる。


 脳髄(のうずい)直接(ちょくせつ)()かれるような、経験(けいけん)したことのない強烈(きょうれつ)快感(かいらく)全身(ぜんしん)神経(しんけい)()(めぐ)った。


 一切(いっさい)感情(かんじょう)()たなかったはずの魔女(まじょ)(ひとみ)が、(はげ)しく()らぎ、(うる)んでいく。


「くっ……あ、はぁ……っ! (わたし)の……魔力(まりょく)が……っ! (なん)だ、この、(あつ)さは……っ!」


 アルテミシアは(みずか)らの(ゆた)かな(むね)()きむしるようにして、その()(ひざ)()いた。


 (よろい)内側(うちがわ)から、自覚(じかく)すらできないほどの(あつ)(みつ)(あふ)()し、冷徹(れいてつ)魔女(まじょ)理性(りせい)(おと)()てて(けず)()っていく。


「いい表情(ひょうじょう)だ、アルテミシア。お(まえ)のその(つめ)たい(ほこ)りを、(いま)から(おれ)愛欲(あいよく)完全(かんぜん)()かし()くしてやる」


シオンは(ひざまず)くアルテミシアの(あご)乱暴(らんぼう)()()げ、獰猛(どうもう)()みを()かべた。


 黒耀騎士団(こくようきしだん)無敵(むてき)連撃(れんげき)()まり、戦場(せんじょう)完全(かんぜん)にシオンの支配(しはい)()へと()ちていく。




(だい)37()(つづ)





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