表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/70

【第33話】崩壊の序曲


「あ……、はぁっ、うそ……(なに)よ、これ……っ!」


 鉄血(てっけつ)(とりで)城門前(じょうもんまえ)(こお)りついた荒野(こうや)にルビリアの悲鳴(ひめい)()吐息(といき)(ひび)(わた)る。


 彼女(かのじょ)(はな)った渾身(こんしん)精神魅了魔術せいしんみりょうまじゅつは、シオンの『(せい)捕食者(ほしょくしゃ)』という絶対的(ぜったいてき)支配能力(しはいのうりょく)によって完全(かんぜん)反転(はんてん)され、より禍々(まがまが)しく、より濃厚(のうこう)愛欲(あいよく)(どく)へと変質(へんしつ)して彼女自身(かのじょじしん)肉体(にくたい)へと()()さっていた。


 サキュバスの()()彼女(かのじょ)にとって、精神魔術(せいしんまじゅつ)逆流(ぎゃくりゅう)致命的(ちめいてき)だった。


 脳髄(のうずい)直接(ちょくせつ)()かれるような強烈(きょうれつ)快感(かいかん)全身(ぜんしん)神経(しんけい)()(めぐ)り、(はだ)という(はだ)粟立(あわだ)つ。


 秘所(ひしょ)からは自覚(じかく)すらできないほどの(あつ)(みつ)(あふ)()し、漆黒(しっこく)軽装鎧(けいそうよろい)内側(うちがわ)から湿(しめ)らせていく。


「くっ、あ……(ころ)して……いや、()ないで……っ!」


 ルビリアは双剣(そうけん)()()とし、(おのれ)(ゆた)かな(むね)()きむしるようにして雪原(せつげん)()をよじった。


 シオンを見上(みあ)げるその(ひとみ)は、すでに敵意(てきい)ではなく、快楽(かいらく)()えた(めす)のそれへと()()えられつつある。


「ガハハハ! どうしたルビリア! たかが人間(にんげん)(じゅつ)にかかってんじゃねえ!」


 ヴァルグリムの大剣(たいけん)(はげ)しく武器(ぶき)(まじ)えながら、ガルガロスが怒号(どごう)()げる。


 しかし、そのガルガロスもまた、()(まえ)元同胞(もとどうほう)変貌(へんぼう)ぶりに()(あせ)(なが)していた。


無駄(むだ)だ、ガルガロス。お(まえ)たちの敗北(はいぼく)は、シオン(さま)がこの()(あし)()()れた瞬間(しゅんかん)確定(かくてい)している」


 ヴァルグリムの漆黒(しっこく)大剣(たいけん)が、ガルガロスの大斧(おおおの)力任(ちからまか)せに(はじ)()ばす。


 かつて互角(ごかく)だったはずの力関係(ちからかんけい)は、シオンの魔力供給(まりょくきょうきゅう)()けて強化(きょうか)されたヴァルグリムの(がわ)に、完全(かんぜん)(かたむ)いていた。


「チッ、どいつもこいつも(くる)いやがって……!」


 ガルガロスは一歩(いっぽ)後退(こうたい)し、周囲(しゅうい)数千(すうせん)軍勢(ぐんぜい)へと()える。


野郎(やろう)ども! 突撃(とつげき)だ! 人間(にんげん)もろとも、裏切(うらぎ)(もの)どもを()()きにしろ!」


 その命令(めいれい)呼応(こおう)し、(とりで)から魔族(まぞく)()れが一斉(いっせい)雪崩(なだ)()んでくる。


 圧倒的(あっとうてき)(かず)暴力(ぼうりょく)が、シオンたちを圧殺(あっさつ)せんと(せま)る。


 だが、シオンは一歩(いっぽ)(うご)かない。


 ただ、(となり)(ひか)える巫女(みこ)サクヤの(かた)(やさ)しく()()せた。


「サクヤ、お(まえ)(あたら)しい(ちから)()せてやれ。この無粋(ぶすい)雑魚(ざこ)どもを、(おれ)たちの祝祭(しゅくさい)(かざ)りにしてな」


「はい……シオン(さま)貴方(あなた)のお(のぞ)みのままに……っ」


 サクヤは恍惚(こうこつ)とした表情(ひょうじょう)でシオンの(むね)身体(からだ)預け(あずけ)、その両手(りょうて)天空(てんくう)へと(かか)げた。


(つど)え、()()(ねむ)氷霊(ひょうれい)脈動(みゃくどう)。シオン(さま)(てき)を、永遠(えいえん)(おり)へと(いざな)え『淫凍(いんとう)結界(けっかい)』!」


 サクヤの呪唱(じゅしょう)(とも)に、大地(だいち)(はげ)しく脈動(みゃくどう)する。


 突撃(とつげき)してきた魔族(まぞく)たちの足元(あしもと)から、突如(とつじょ)として(あわ)桃色(ももいろ)(かがや)きを(はな)巨大(きょだい)氷柱(ひょうちゅう)次々(つぎつぎ)()()た。


 それは通常(つうじょう)(こおり)ではない。


 シオンの愛欲(あいよく)魔力(まりょく)()ざり()ったサクヤの(こおり)は、()れた(もの)肉体(にくたい)だけでなく、精神(せいしん)をも瞬時(しゅんじ)凍結(とうけつ)させ、強制(きょうせい)(てき)な『魅了(みりょう)状態(じょうたい)へと(たた)()とす絶望(ぜつぼう)(おり)だった。


「な……(なん)だこの(ひかり)は……あ、身体(からだ)が、(あつ)い……っ!?」


「シオン(さま)……ああ、シオン(さま)……!」


 先頭(せんとう)(はし)っていた魔族(まぞく)戦士(せんし)たちが、(こおり)(とら)われた瞬間(しゅんかん)武器(ぶき)()()としてその()(ひざまず)いていく。


 戦意(せんい)一瞬(いっしゅん)にして()()び、その(ひとみ)はサクヤと同様(どうよう)に、シオンへの狂信(きょうしん)(てき)忠誠(ちゅうせい)(ひかり)へと()まっていく。


 数百(すうひゃく)数千(すうせん)軍勢(ぐんぜい)が、(たたか)うこともなくシオンの奴隷(どれい)へと変貌(へんぼう)していく光景(こうけい)は、まさに悪夢(あくむ)そのものだった。


「ば、化け物(ばけもの)め……!」


 ガルガロスが驚愕(きょうがく)()見開(みひら)く。


 その(すき)を、セレナは見逃(みのが)さなかった。


 フェンリルの姿(すがた)となって(たたか)うセレナが荒野(こうや)疾駆(しっく)し、ガルガロスの死角(しかく)からその巨躯(きょく)へと(おど)りかかる。


 (するど)(つめ)がガルガロスの胸元(むなもと)(ふか)()()き、鮮血(せんけつ)白銀(はくぎん)(ゆき)(あか)()めた。


「ぐあああっ!?」


 巨躯(きょく)雪原(せつげん)へと(ころ)がる。


 大斧(おおおの)(うしな)い、(きず)ついた狂戦士(きょうせんし)に、もはやかつての威容(いよう)はなかった。


 シオンはゆっくりと(あゆ)みを(すす)め、(いま)だに雪原(せつげん)(もだ)(くる)しんでいるルビリアの(まえ)(あし)()めた。


「さて、ルビリア。お(まえ)(ほこ)(たか)理性(りせい)は、いつまで()つかな?」


 シオンがその()にしゃがみ()み、ルビリアの()れた(あご)指先(ゆびさき)()()げる。


「あ……シオン、(さま)……いや、(わたし)は、魔王(まおう)(さま)の……っ!」


「お(まえ)身体(からだ)は、もう(おれ)(あじ)(おぼ)えているぞ。ほら、ここがこんなに()しがっている」


 シオンの()が、ルビリアの胸元(むなもと)(よろい)隙間(すきま)へと(すべ)()む。


 ()()まった(はだ)()れられた瞬間(しゅんかん)、ルビリアの身体(からだ)はビクンと(おお)きく()()がった。


 サキュバスとしての本能(ほんのう)が、シオンの()圧倒的(あっとうてき)(おす)としての魔力(まりょく)完全(かんぜん)屈服(くっぷく)し、脳内(のうない)理性(りせい)堤防(ていぼう)(おと)()てて崩壊(ほうかい)していく。


「ひゃぅあうっ!? あ、あ、ダメ……もう、無理(むり)……っ! (わたし)を、(わたし)をあなたの玩具(おもちゃ)にしてくださいぃっ!」


 ルビリアは(みずか)らシオンの(あし)にすがりつき、その(くつ)(なん)()(くち)づけを()とした。


 (よる)女王(じょおう)恐れ(おそれ)られた魔戦士(ませんし)が、一瞬(いっしゅん)にして一人(ひとり)(おとこ)(まえ)(ひざまず)牝犬(めすいぬ)へと()()がった瞬間(しゅんかん)だった。


「いい()だ、ルビリア。今日(きょう)からお(まえ)(おれ)のコレクションだ」


 シオンは満足(まんぞく)げに(わら)い、()()がって鉄血(てっけつ)(とりいで)見上(みあ)げた。


 数千(すうせん)魔王軍(まおうぐん)は、(いま)やその大半(たいはん)がシオンを(あが)める私兵(しへい)()し、(とりいで)周囲(しゅうい)()()くしている。


「ガルガロス、お(まえ)はどうする? (したが)うか、ここで()ぬか」


 シオンの冷徹(れいてつ)視線(しせん)が、()(なが)して(たお)れる狂戦士(きょうせんし)へと()けられる。


 ガルガロスは(くや)しげに()()いしばりながらも、周囲(しゅうい)圧倒的(あっとうてき)絶望(ぜつぼう)光景(こうけい)(まえ)に、ただ項垂(うなだ)れるしかなかった。


鉄血(てっけつ)(とりいで)は、これより(おれ)拠点(きょてん)となる。魔王(まおう)への反撃(はんげき)狼煙(のろし)は、ここから()がるぞ」


 シオンの宣言(せんげん)に、寝返(ねがえ)った数千(すうせん)軍勢(ぐんぜい)地鳴(じな)りのような歓声(かんせい)()げる。


 支配(しはい)版図(はんと)確実(かくじつ)(ひろ)げるシオン。


 しかし、この一戦(いっせん)が、魔王領(まおうりょう)深奥(しんおう)(ねむ)(しん)脅威(きょうい)()()ます()(がね)になることを、まだ(だれ)()らなかった。




(だい)34()(つづ)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ