表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/69

【第27話】白銀の守護者セレナ


 フロスト・ヘイムの(あさ)は、()()った冷気(れいき)とともに(おとず)れた。


 (まど)(そと)では(ゆき)(しず)かに()(つづ)き、街並(まちな)みを白銀(はくぎん)のヴェールで(つつ)()んでいる。


 シオンが宿(やど)食堂(しょくどう)姿(すがた)(あらわ)した(とき)、すでに仲間(なかま)たちは朝食(ちょうしょく)(せき)についていた。


 リーナ、アルベルト、エルザ、ルナリス、ルミナリア、イリス。


 (だれ)もが昨夜(さくや)(つか)れを(のこ)しながらも、伝説(でんせつ)(まも)(がみ)フェンリルを(すく)った達成感(たっせいかん)()たされている。


 だが。


「……(だれ)?」


 最初(さいしょ)(こえ)()げたのはリーナだった。


 食堂(しょくどう)入口(いりぐち)()っていたのは、一人(ひとり)女性(じょせい)


 (こし)まで(とど)銀色(ぎんいろ)(かみ)


 雪原(せつげん)月光(げっこう)()()めたような琥珀色(こはくいろ)(ひとみ)


 ()(もの)圧倒(あっとう)する神秘的(しんぴてき)気配(けはい)


 その美貌(びぼう)は、人間離(にんげんばな)れしていると()っても過言(かごん)ではなかった。


 女性(じょせい)(しず)かにシオンの(となり)(あゆ)()る。


 そして当然(とうぜん)のようにその背後(はいご)()った。


紹介(しょうかい)しよう」


 シオンは平然(へいぜん)()げた。


「フェンリルだ」


 一瞬(いっしゅん)


 食堂(しょくどう)全体(ぜんたい)(しず)まり(かえ)った。


「はぁぁぁっ!?」


 ()(さき)(さけ)んだのはリーナだった。


「フェ、フェンリルって、あのフェンリル!?」


昨日(きのう)まで巨大(きょだい)(おおかみ)だったわよね!?」


 ルナリスも()(まる)くしている。


 信仰(しんこう)対象(たいしょう)である(まも)(がみ)(ひと)姿(すがた)()っている光景(こうけい)は、彼女(かのじょ)にとって衝撃(しょうげき)以外(いがい)何物(なにもの)でもなかった。


伝承(でんしょう)には(のこ)っていたけれど、本当(ほんとう)人化(じんか)できるなんて……」


 エルザが呆然(ぼうぜん)(つぶや)く。


 アルベルトでさえ(めずら)しく言葉(ことば)(うしな)っていた。


 (とう)のフェンリルはというと、不思議(ふしぎ)そうに(くび)(かし)げている。


(なに)(おどろ)いている?」


(おどろ)くに()まってるでしょう!」


 リーナの即答(そくとう)に、フェンリルは(すこ)しだけ(こま)ったような(かお)をした。


 その様子(ようす)()たシオンは(ちい)さく(わら)う。


「そういえば、お(まえ)には名前(なまえ)がないんだったな」


 その言葉(ことば)全員(ぜんいん)視線(しせん)(あつ)まった。


 フェンリルは(しず)かに(うなず)く。


「フェンリルとは種族名(しゅぞくめい)であり、称号(しょうごう)のようなものだ。(わたし)(なが)(とき)守護者(しゅごしゃ)として()きてきたが、()としての()()たなかった」


「なら()まりだ」


 シオンは(まよ)いなく()った。


今日(きょう)からお(まえ)名前(なまえ)は『セレナ』だ」


 その()静寂(せいじゃく)()ちる。


 銀色(ぎんいろ)(かみ)女性(じょせい)は、(はじ)めて(あた)えられた()(ちい)さく()(かえ)した。


「……セレナ」


銀月(ぎんげつ)のように(うつく)しいからな」


 シオンがそう()うと、彼女(かのじょ)(ひとみ)がわずかに()れた。


 千年(せんねん)以上(いじょう)()きてきた守護者(しゅごしゃ)


 (だれ)からも()(あた)えられることのなかった存在(そんざい)


 そんな彼女(かのじょ)(しず)かに()()じる。


「セレナ……か」


 そして微笑(ほほえ)んだ。


(わる)くない」


 ルナリスはその光景(こうけい)()(むね)(あつ)くした。


 神聖(しんせい)(まも)(がみ)が、一人(ひとり)存在(そんざい)として(あら)たな人生(じんせい)(あゆ)(はじ)めた瞬間(しゅんかん)だった。


 だが(なご)やかな空気(くうき)(なが)(つづ)かなかった。


 シオンが表情(ひょうじょう)()()める。


「さて、本題(ほんだい)だ」


 その一言(ひとこと)()空気(くうき)()わる。


「セレナ。お(まえ)(きず)つけたあの(やり)(なん)だ?」


 セレナの表情(ひょうじょう)から()みが()えた。


「ただの(やり)ではない」


 彼女(かのじょ)(ひく)(こえ)(こた)える。


「あれは(のろ)いの(やり)だ」


 全員(ぜんいん)顔色(かおいろ)()わる。


何者(なにもの)かが(わたし)(ねら)って(はな)った」


(だれ)が?」


 アルベルトの()いに、セレナはゆっくりと(くび)()った。


(はな)った(もの)正体(しょうたい)までは()からない。だが、()()められていた魔力(まりょく)異常(いじょう)だった」


 そして(つづ)ける。


(わたし)(たお)れれば、この雪原(せつげん)(まも)結界(けっかい)(よわ)まる」


「だからオークが(あらわ)れたのか」


 シオンの言葉(ことば)にセレナは(うなず)いた。


「オークたちは自然発生(しぜんはっせい)したのではない」


 その(こえ)には(おも)みがあった。


何者(なにもの)かによって(あやつ)られていた」


 食堂(しょくどう)空気(くうき)(こお)りつく。


目的(もくてき)は?」


 イリスが(たず)ねる。


 セレナは(まど)(そと)視線(しせん)()けた。


 (はる)北方(ほっぽう)


 吹雪(ふぶき)()こうを()つめながら(つぶや)く。


「おそらく魔王(まおう)だ」


 その言葉(ことば)全員(ぜんいん)(いき)()んだ。


千年(せんねん)(まえ)封印(ふういん)された魔王(まおう)復活(ふっかつ)しようとしている」


 (だれ)言葉(ことば)(はっ)せない。


 セレナの(ひとみ)には確信(かくしん)宿(やど)っていた。


(わたし)排除(はいじょ)し、北方(ほっぽう)守護(しゅご)(うしな)わせ、魔物(まもの)軍勢(ぐんぜい)(みなみ)進軍(しんぐん)させる。そのための布石(ふせき)だった」


 シオンは(しず)かに()()がる。


「なるほどな」


 その(かお)には(おそ)れなど微塵(みじん)もなかった。


 むしろ獲物(えもの)()つけた狩人(かりゅうど)のような()みが()かんでいる。


世界征服(せかいせいふく)(たくら)魔王(まおう)か」


 (かれ)仲間(なかま)たちを見渡(みわた)した。


面白(おもしろ)くなってきたじゃないか」


 リーナが苦笑(くしょう)する。


 アルベルトは放心(ほうしん)して()っていたグラスを()とし(ふる)え。


 ルナリスとルミナリアは不安(ふあん)(いだ)きながらもシオンを()つめる。


 そして(あら)たな()()たセレナは、(しず)かに(かれ)(とな)りに()()った。


 シオンがエルザに視線(しせん)()ける。


「エルザ、(きみ)はいちど王都(おうと)(もど)王女(おうじょ)として魔王(まおう)復活(ふっかつ)(そな)えてくれ」


()かったわ」


「アルベルト、お(まえ)もエルザを(まも)王都(おうと)へいけ」


 (かれ)(かお)から安堵(あんど)表情(ひょうじょう)がもれる。


 こうして、魔王復活(まおうふっかつ)という大陸規模(たいりくきぼ)危機(きき)(あき)らかとなる。


 しかしそれは同時(どうじ)に、シオンたちの(あら)たな伝説(でんせつ)幕開(まくあ)けでもあった。


 白銀(はくぎん)(そら)(した)


 運命(うんめい)歯車(はぐるま)は、(しず)かに(まわ)(はじ)める。




(だい)28()(つづ)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ