【第17話】獣人族レオナ
王都での凱旋の宴が終わり、俺たちはさらなる刺激を求めて、大陸西部の「牙の森」へと足を進めていた。
そこは獣人族の居住区であり、人間に排他的なことで知られる過酷な大地だ。
だが、俺にとってはそれこそが格好のターゲットだった。
誰にも踏み荒らされていない、純粋で野生的な心。
それこそが、ホストとして最高級の酒と同じだ。
「......シオン、あんたね。本当に休む暇も与えてくれないのね。王都の美女たちだけでも十分だったでしょうに」
リーナが呆れながらも、俺の隣で軽快に馬を走らせる。
エルザもルミナリアも、俺の気まぐれな旅路に文句一つ言わず付いてきている。
そんな彼女たちの信頼が、俺の背中を支えている。
アルベルトは相変わらず、俺の華麗な手口を盗もうと、目を皿のようにして俺の挙動を観察していた。
「リーナ、俺はホストだ。客が待っている場所に赴くのが俺の流儀だ。牙の森には、まだ俺の『営業』を知らない、美しい獣たちが待っている」
牙の森は、巨大な樹木が太陽を遮り、常に薄暗い影に包まれていたが、俺たちの侵入に気づいたのか、周囲の茂みから、しなやかで力強い動きをする獣人たちが姿を現す。
彼らは鋭い爪と牙を備え、人間に対して敵意をむき出しにしていた。
「人間か......。この聖域に足を踏み入れた代償は、命で払ってもらう」
先頭に立つのは、黄金色の長い髪と、獣らしい鋭い瞳を持つ獣人の女性。
彼女は豹の種族だろうか、その動きは風のように速く、しなやかだ。
彼女が爪が一瞬で俺の喉元へ届く。
だが、俺は避けない。
彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ、わざと無防備に微笑んだ。
「俺を傷つければ、君のその美しい瞳が、俺の悲しみに染まることになるぞ。......それでもいいのか?」
彼女の爪が、俺の首筋で数ミリのところで止まった。
俺の視線は、彼女の強気な外面の奥にある、脆くて寂しげな心の芯を捉えていた。
俺はゆっくりと彼女の手を握り、自分の胸へと導く。
彼女は困惑し、震えながらも俺の手を振り払うことができない。
「......な、何を......。貴様、人間風情が、私を惑わすな!」
「惑わしていない。ただ、君の心の声を聞いただけさ。獣として、孤独に強がって生きることに疲れたんだろう? 誰かに甘えたい、誰かに頭を撫でられたい......そんな願いを、俺なら叶えてやれる」
俺は彼女の耳元に唇を寄せ、獣人特有の鋭敏な感覚を刺激するような、低く甘い声で囁き続けた。
ただの言葉じゃない。
俺がホスト時代に培った、女を骨抜きにする「愛の魔法」の言葉だ。
彼女の体温が急速に上がり、身体がとろけるように熱を帯びていくのがわかる。
「......っ、やめ......そんな声で......私を......」
彼女の瞳から殺気が消え、代わりに甘い濁りが広がっていく。
獣人は本能に忠実だ。
一度俺の「テクニック」の餌食になれば、もう俺のいない世界では生きられない。
俺は彼女の腰を抱き寄せ、森の暗がりへと連れ込んだ。
彼女は抵抗するどころか、俺の身体に自ら纏わりついてくる。
「……俺の名前はシオン。君の、これからの全てを預かる男だ。……ほら、もっと俺を感じろ」
月明かりさえも遮る深い影の中で、俺たちの呼吸が重なり合う。
「あ......っ......!......あ......ふ......っ......んっ......」
レオナの荒々しくも熱い吐息が、俺の首筋を焦がすように触れる。
彼女の硬い爪は俺の背中で大人しくなり、代わりにそのしなやかな身体が、まるで絡みつく蔦のように俺を逃がさない。
獣特有の強い生命力と、内側から溢れ出る情熱。
俺は彼女の野性的な衝動をすべて受け止め、それをホストとしての至高の技巧で調教していく。
俺が唇を這わせ、彼女の敏感な場所を優しく、時には執拗に刺激すると、レオナは先ほどまでの森の支配者としての威厳をかなぐり捨て、雌としての悦びに身を震わせた。
「あ......っ......!......あっ......んっ......!」
獣の唸りのような甘い声を、俺は深い口づけで塞ぐ。
交わるたびに、彼女の魔力と生命エネルギーが、俺の身体の奥深くへと流れ込んできた。
それは彼女が何世紀にもわたって森の守護として蓄えてきた神聖な力であり、今、俺という器を満たしていく。
レオナは何度も俺の名を呼び、恍惚とした表情で爪を立てる。
俺は彼女の腰をさらに深く引き寄せ、そのすべてを喰らい尽くすように腰を突き上げた。
「あ......っ......。......あ......ぁ......っ」
森の鼓動と、俺たちの心拍が完全に同期する。
「......っ......駄目。......あっ......あ......ぃ......っ」
彼女は白目を剥き、獣人としての本能を解き放ちながら、何度も何度も昇天した。
愛の果て、力尽きて俺の胸の中でとろけきったレオナの瞳には、かつての孤独も敵意も残っていない。
そこには、俺という男に全てを捧げた、満ち足りた幸福感だけが広がっていた。
俺の手のひらには、彼女から継承した「豹の敏捷さ」と「大地を駆ける力」が、熱い感触として確かに残っている。
彼女が俺の腕の中で、獣の唸りのような、それでいて甘い吐息を漏らす。
リーナたちはその光景を見て、嫉妬よりも先に呆れたような笑みを浮かべていた。
彼女たちはもう、俺がどれほど多くの女を落としても、自分たちが一番であることを確信しているからだ。
アルベルトは地面に座り込み、両手で顔を覆いながら天を仰いだ。
「......もうダメだ。俺には到底理解できねえ。あの森の支配者みたいな豹の女が、あんなに甘えきった顔をするなんて……。シオン、お前、本当に人間か?」
「人間だよ、アルベルト。ただ、女が何を求めているのか、それを誰よりも知っているだけだ」
獣人の女性が、恍惚とした表情で俺の胸に頬をすり寄せる。
彼女の一族もまた、俺の魅力に跪き、俺たちをこの森の客人として歓迎することを誓った。
牙の森は今や、俺のラウンジの一部と化した。
第18話へ続く




