【第12話】王都掌握
パーティーの喧騒は、夜が更けるにつれて甘美な熱を帯びていった。
貴族たちが抱く権力への執着、令嬢たちが隠し持つ退屈への苛立ち。
それらすべての負の感情を、俺はシャンパンと魔法の粒子で塗りつぶし、陶酔という名の膜で包み込む。
会場全体が、神楽咲紫苑という名の中心に向かって渦を巻いていた。
「……素晴らしいわ、シオン。私の知る限り、これほどまでに人の心を掌握できる者はいない。あなたは、本当に悪魔的な魅力を持っている」
エルザが俺の背後に立ち、優雅にグラスを掲げた。
彼女の瞳には、俺という存在に対する独占欲と、深い信頼が揺らめいている。
周囲の視線など、今の彼女には何の意味もなさない。
王女という肩書きを捨ててでも、俺の隣でその世界に浸っていたい――彼女の心から、そんな意志が伝わってくる。
「悪魔、か。それは最高の褒め言葉だ。俺は悪魔として、君たちの望む『快楽』を与え続けるつもりさ」
俺はエルザの手に触れ、彼女をエスコートして会場の中央へ歩み出た。
周囲の貴族たちが道を空ける。
彼らの目は、俺に認められたいという卑屈な欲望で満ちている。
俺はステージに立つと、再び指を鳴らした。
会場の空気が張り詰め、全員の注目が俺の一挙手一投足に集中する。
「皆、今夜は俺の歓迎会ではない。俺が、この王都という名のラウンジの支配者として宣言を行うための夜だ」
静寂が会場を支配する。
アルベルトが、俺の背後で緊張に顔を引きつらせながらも、誇らしげに胸を張っている。
彼はもう、俺の支配下で完全に骨抜きにされている。
俺の言葉一つで、この王都の貴族連中をどこへでも引きずり回せる。
「この国には、隠された『歪み』がある。君たちも気づいているだろう。魔力の枯渇、モンスターの凶暴化、そして、閉塞感に満ちたこの街の空気。……それを解決できるのは、ただ一人、俺だけだ」
俺はエルザの腰を引き寄せ、抱きしめた。
エルザは何も言わず、俺の胸でただ微笑んでいる。
彼女という王族の象徴を掌握した今、俺の言葉は王都の絶対的な法となる。
【システムメッセージ:王都の支配率、目標値に到達】
【固有スキル『性の捕食者』のレベルが2になりました】
脳内で鳴り響くシステム音が、俺の成功を告げる。
「さあ、これからは俺の時代だ。俺というホストを指名し、俺にすべてを捧げた者は、この街で最強の力を手に入れることになる。……ただし、俺を裏切るということは、この世界そのものを敵に回すということに等しいと知れ」
その瞬間、会場を覆っていた重苦しい空気が一変した。
恐怖の対象であったはずの俺の言葉が、なぜか彼らにとっての「希望」として響き渡る。
彼らは皆、俺に支配されることをどこかで望んでいたのだ。
自らの意志で決断を下すことの重圧から解放され、俺という絶対的な存在の傘下で、ただ悦びに身を委ねる――それこそが、この王都の人々が求めていた究極の避難所だった。
「シオン! シオン! シオン!」
会場から歓声が上がる。
それはもはや、単なる拍手ではなく、神を崇めるような狂信的な祈りにも似ていた。
リーナが俺の隣で、少しだけ寂しそうに、しかし満足げに目を細めている。
彼女は知っている。
俺がどれほど多くの人間を巻き込もうとも、俺の心の中心には、常に彼女がいることを。
「シオン、これからどこへ行くの? この王都だけでは、あんたを繋ぎ止めてはおけないんでしょう?」
リーナの言葉に、俺は会場の外に広がる闇夜を見つめた。
王都の先には、まだ見ぬ大陸、未知の文明、そして俺を待ちわびているであろう、まだ見ぬ「女性」たちが溢れているはずだ。
「どこへだって行くさ。俺の『営業』は、世界が続く限り終わらない。君たちという最高のパートナーがいれば、俺はどこでだって一番になれる」
俺はシャンパングラスを空へ掲げた。
金粉が宙に舞い、王都の光を反射してキラキラと輝く。
神楽咲紫苑、の伝説は、これからだ。
かつて、歌舞伎町で積み上げたものは、ほんの序章に過ぎない。
この異世界で、俺は最強のホストとして、世界を俺のラウンジに変えてやる。
パーティーの騒ぎは、明け方まで続いた。
俺は、エルザとリーナの手を左右に引き、会場を後にした。
夜明けの光が、王都の城門を照らし始める。
新しい一日が、俺を歓迎しているかのようだ。
俺は、どこまででも行ける。
この最高の悦びに満ちた瞬間を、永遠に更新し続ける。
それこそが、神楽咲紫苑の生き様だ。
俺は最強のホストとして、この世界の女性たちを愛し続ける。
第 13話へ続く




