表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/62

⚫︎リュー、ついに念願を叶える〜44話

俺の家に初めて莉緒が来た。

みつきと一緒だ。

俺は絶対に疑われたくはないからアオにリアタイ盗聴を申し出る。そんな事をしなくとも恐らくアオには動画関連スキルで任意の場所や人を録画できるスキルがありそうだ。愛陽が、車庫入れイベントの時、表情や仕草まで俺にそっくりだったとそれとなしに教えてくれたのだ。抜け道とはいえギリギリではないのか。

どうせ覗かれるなら俺から申し出る。


俺はみつきが莉緒のサポートに選ばれた理由を理解した。仕事熱心で真面目な莉緒は、みつきが持ってきたクレープや弁当を、躊躇せずに食べたのである。

それを見てしまったら俺も食べない訳にいかない。俺はみつきのレシピを見てざっと糖質を計算する。意外にも弁当よりクレープの方が遥かにマシだ。


"大丈夫だよ坂本さん。今日はチートデイ!"

いやそっちか!!!


チートデイとは、食事制限により落ちた基礎代謝を戻す為に定期的に摂取カロリーを増やす日の事で、科学的根拠は無い。故に賛否はある。脳を騙す目的があるが、普通に考えて溜め込み体質になっている所に大量カロリー投下なのだ。俺は頭ごなしに否定するのは嫌いなので、一応やった事はある。


結果的に実際に痩せたのは意味が分からない。


俺はチートデイはあまりやらない。俺の場合、糖質制限中は空腹感をあまり感じなくなる。なのでチートデイ当日は欲求も満足感もほぼ感じないにも関わらず、チートデイ終了後には糖質への欲求が高まる気がしてならないのだ。だがそれに負けて食べてしまうと糖質制限の最初二週間の苦しみ、強烈な眠気や頭痛を味わい直す事になるのだ。


ちなみに制限しすぎると筋肉が付きにくくなるので俺は一食20〜40gは無理をしてでも必ず摂る。莉緒は酷い時は一日20g以下の時もあった。食事を全く摂らない日もあったのだ。彼女の言い分は、食べたくない時は体が必要としていないから食べない、である。彼女はメンヘラだから、脳が誤作動しているのだと思うがな。


だが、無理して食べないと決めたら心が楽になるというのは分かるぞ。メンタルが弱っている時無理して食べるのは辛い。


とはいえ莉緒の血管の老化が心配だ。うちの母は3年間1日20gの糖質制限をして高血圧になった。調味料の一切を塩に変えた事が主な原因だ。それ以外にも、とある甘味料は血小板を活性化させて血栓を作る可能性を指摘されている。心血管疾患リスクが高まるのだ。

糖質不足による血管の機能低下や、脳のエネルギー源であるブドウ糖の不足も血管の老化を助長させると言われている。こちらは根拠は無いから鵜呑みにはしてはいけない。


閑話休題。

莉緒の文書作成能力を見て、やはり書類を改竄されていたのではと思った。もしくは糖分が足りない状態で、処理能力が著しく落ちる程仕事をさせられていた可能性だ。


みつきはアオより俺との親密度が高い。だから莉緒に対してアオではなく俺を推す。

だが、彼女はオタクだ。そうでなくともスキルや魔法を得て手放せる人間など居ない。俺はしっかりと彼女に釘を刺す。アオに逆らえば能力を失う。異世界に行ける能力を持ち、現在魔法を作れるのはアオだけなのだ。

『現在ね。』

今それは言うな。アオが動画を通じて読心できないとは限らない。

『読心できるならもっと莉緒の気持ちに寄り添えてるよ。』

まあそれはそうか。


アオのやらかしで盛り上がっていると愛陽が言う。

『莉緒は面倒臭い女筆頭です。』

ハイハイ、分かってるよ。適度にしますって。


なんと、キッチンカーの申し込みをしたら一旦イベントが終了した!

「坂本さん忙しいでしょ?メシマズだし、キッチンカー参加しなくて良いよ?」

「いやいや待って!これ連続イベント扱いなんだって。お願いだから俺にも参加させてくれる?絶対に役に立つから!俺んちのキッチン使って良いから!」

「連続イベントってなに?」


俺はみつきにアトソーヌ防衛イベント、エーテーシークラーケンイベント、教習所講習イベントについて話した。

「へー!!何が貰えるのかな?」


ちなみに一週間ループイベントも恐らくそうだが、大したものは得られなかった。俺は愛陽との友好を取ったが、正規ルートは莉緒お持ち帰りによる異世界参入なのだろう。


しかし俺はアオとの決別は望んでいない。俺にとっては既にエアリアルにアオは無くてはならない存在。彼は俺の作った物語の主人公なのだ。

俺の様な腐った人間は、王道ファンタジーの主人公にはなり得ない。


俺はアオに頼んでキッチンカーのロゴを作ってもらい、そのロゴ入りエプロンを錬金術で作ってもらった。

俺がそれを着た姿のキッチンカーの広告をアオに作ってもらい色々な所に置いてもらった。


イベント出店の日。

俺は客引きをする。接客業などは運送業をやめてやったバイト以来だ。実は得意ではある。客に媚びる事に特に疲れも無い。仕事であり、金のためだからだ。たまに業務以上の事を強いる客もあるが、明らかな迷惑行為以外はあしらう事に何の苦痛も無い。俺は客に対して何の感情も持たない。


だが今日は何故か、雇われであった時とは気持ちが全く違っていた。最初はミーハーそうな女に片っ端から声をかけてクレープを買わせていた。だが途中からは、売れに売れる商品に嬉しくなってきたのだ。


企画から三人で考えた商品。仲間の頑張りが不特定多数に認められているのだ。認められると業務以上に頑張れるし、心からの笑顔が溢れる。商品について聞かれた時データではなく自分の意見を言えて、あの時食べておいて良かったとさえ思えるのだ。


「シュガバタ、発酵バター使ってるんです!安いのにめっちゃ美味いですよ!買ってって〜」


その時、好感度告知が!

秋月凱あきづきがい好感度アップ』

「ええ?」

俺は商品をみつきから受け取り、秋月凱に手渡す。その時彼の腕時計に魔力で触れ、盗聴器を仕掛けた。新たなサポートキャラは男だ。


地球パートナー交代に対する危機感と不安。


"アオ、新たなサポートキャラは男。警戒して。画像送るからアオの特殊鑑定で見て。"

"了解。愛情アップ許可するから。絶対莉緒を守って"

"分かった!帰りにキスするわ!"

"待って!やめて!"

"嘘に決まってんだろ。"

俺はアオに情報共有しつつ揶揄った。丸投げに対する腹いせだ。


"みつき、莉緒は男との距離感分からないんだ。絶対に一人で接触させるなよ?俺が地球でフラグ折れたらこいつが参入してくる。"

"了解。頑張って!"

"ああ。分かったよ。"


予定より随分と早く売り切れた。

「売り切れでーす!ありがとうございましたー!」

「「ありがとうございましたー!」」

閉店のコールをした時、頭の中に流れ込む夜闇の声。


『報酬 スキル転移 莉緒 みつき 絆大幅アップ』

一瞬頭が真っ白になる。

は?!え?!何これ。見た事ある場所に転移?


『おめでとう!ようやく好き勝手できる様になるよ!』

あ、いや、待て!

まだだ!!まだ気を抜くな!

我に返ってさっき流れてきた莉緒の読心を思い出す。すぐ鑑定でキッチンカーの新機能を確認!

[祠転移 はじまりの部屋 アトソーヌ エーテーシー 湖の祠 東のダンジョン]

ふふ!そうか!一週間ループから俺達の異世界参入は決定事項だったんだ!えらく長い連続イベントだった!!


俺は、当たりのルートを引いたのだ!!


「やばい!やばい俺どうしよう!泣く。泣くかも!」

大袈裟に演技しながら莉緒、みつき、アオ、愛陽、永遠、ラテ、夜闇に対して心からひたすらに感謝する。


「待って!車出す前にちょっとだけスマホ操作させて!」

あえてスマホででアオ、莉緒、みつきに即共有だ。


「えっ!まじで?!」


みつきが素っ頓狂な声を上げる。

『すっごい好感度パフォーマンスwwwねえそれどうやるんだよwやり方教えてくれよww』

いやいやwこんなもん覚えたら普通に万物に感謝捧げるわww


『つって花たんに感謝してないし。』

当たり前!!関屋豊と繋がってる時点で花さんは警戒対象だし、秘匿事項に自力で辿り着いて莉緒にお節介焼く可能性ある人物なんだ!そうすれば莉緒は全ての権利を失う!

そうでなくとも彼女は自分の正義振りかざす人間なんだぜ?クレープ屋で破局させてアオを更生させようと躍起になってるのが証拠だろ?

『そうかなぁ。』


『莉緒 みつき アオ、愛陽、永遠、ラテ、夜闇 絆大幅アップ』

きたきたきた!!よしっ!!!


 共有したのは、転移の存在をみつきに知らせてみつきの異世界欲求を高める為。アオが俺達の不満に配慮して異世界参入を認めざるを得なくなる。その時同時にみつきと俺の絆も大幅アップする。絶対に絆を愛情が上回らない為の策だ。恐らくこれで万が一俺に惚れても暴走が防げる。


『みつき 絆大幅アップ』

きた!アオからはじまりの部屋の画像が共有された。恐らくみつきも同時だ。みつきを俺に取られない為には判断の速さが大事だし、俺の不満を払拭する為には俺とみつきの待遇に差をつけちゃいけない。さすがアオだ。それに比べて莉緒の判断の遅さwさてはパニクってるな?!今すぐ俺か愛陽に聞くべきだろ。


『さすが!!お疲れ!!!辛かった。やっとだよ!ここから怒涛の巻き返しww』


(え、ちょ!物凄い悪巧みの顔。)

うわっ見られた!!まずい!

『莉緒 愛情アップ』

へー。お前こういう顔好きなの?


"いやー!アオには感謝しかないわ!!莉緒だったら絶対に仲間に入れてくれて無かっただろ?やばい。最高の気分なんだけどww"

"もしかして、はじまりの部屋、見た事ある?"

"アオの頭の中でね"

"うわあー!やられたー!!!"


そう言って笑う莉緒がちょっと嬉しそうなんだけど?うし、アオから愛情アップ許可出たし!

俺は運転席から隣に座る莉緒の頭を撫でた。

"ありがとな。お前のお陰。"

"え?もしかして調子乗ってるやつ?早く車出してくれる?"

突き放し攻撃が酷いwww


みつきは転移を使う為に必死で外をガン見している。インベントリの整理は後でやるみたいだな。…絆アップ、アオに譲る気だったけど…。

"莉緒、みつきに透明化共有してやって。"

"え!譲ってくれるの?"

"アオ忘れてるからさ。みつきそのまま転移しそうだろ?"

信号で止まったからギアを二速に変え、莉緒に向かって優しく微笑み、もう一度そっと髪を撫でた。

『莉緒 絆アップ 好感度アップ 愛情アップ』

からの。

"ちなみに、今はじまりの部屋の画像がアオから送られて来たから俺大手を振って行けるwwアオめっちゃいい奴だよなww"

ニヒルな笑い攻撃!ちっ!2回目は愛情上がらないのかよ!


(そうか!彼が信用されるチャンスは今しか無いから!いや、違うか。彼は佐々木さんの性格をよく分かっているんだ。佐々木さんは基本的にお人好し。多分この機会をずっと狙って、その為に従順なフリしてたんだ…!)


ふふふ。さすが莉緒。よく分かってらっしゃる。けどアオまだ俺を信じてない。信じたいけどお前を取られそうで不安なんだ。

これから仕返しに罪悪感と負い目をガンガン植え付けてやるぜ〜ww


"莉緒、みつきと花さんに知られる前にすぐキッチンカーの能力を一部隠蔽して。一部な。全部消すなよ?秋月凱も警戒対象だ。お前、次は男に食い物にされるなよ?秋月凱はガタイが良い。そういう奴は男性ホルモンも多い。意味は分かるな?"

"分かってるよ!気をつける。"

『莉緒 好感度アップ』


"それからな、莉緒判断遅すぎ。部下の不信感買わない様に隠すなら隠す、知らせるなら知らせるだぞ。告知タイミングは愛陽やアオに相談しろよ?特にみつきの感情は考慮しろ。功労者は料理を作ったみつきなんだからな。"


"うん!ありがとう!頼りになる兄貴分だよ!"

(えっ!兄貴分で上がる意味?!)


"どういたしまして。可愛い妹よww"

それは兄妹愛ってやつよww

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ