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第38話 それは世界の猫を喜ばすおやつ

私達は湖を中心に魔物の分布を調べた。

ここらには、つの兎のほか、スリープシープ、グレイトホースが出るが脅威度はそんなでもない。

管理棟というか、もう売店なんだけど、その周りを柵で囲う。

店内は産直市場みたいな作りになっていて、八百屋コーナーと鮮魚コーナー、飲食スペースがある。先日手に入れたつくねと肉串はここで使うのかな?でも数が足りない気がする。


「交代で村人に来て維持してもらう形か、取引の日を決めて来てもらう形にするかだよね。」

「ねえりおりお。村や町の運営権を得たらここに転移できると思った方がいいかも。」

「そっか。ならもっと町や村を探さなきゃだよね。南の街とかも行ってみる?どう考えてもここ、運営の人員足りないもんね。」

「そうなんだけどね。国とかに関わって二村が搾取されないかは不安だよね。とりあえず日程決めて一度ここで顔合わせなりイベントなりやる?」

「そだね。両村長と話してみよう。」



アトソーヌ

ソイモン村長は眉を下げた。

「それは有難いのですが、この村は最果て、外貨が流通していないのです。」

ああ!そういえばここは物々交換が多いし、もしかしたら貨幣が違うかも。

私はエーテーシーの貨幣を出した。

「アオどうしよう。違うね。」

「エーテーシーは魔物が少なくて魔石の価値が高そうだけども、魔石も貴重だしなあ。」

「あちらも大魔導士様方が統治しておられるならば、貨幣を作って頂けたらと思うのですが。」

はあ?いきなりなんて事言うのだこの人は。

「貨幣を勝手に作るのは罪にならないのですか?」

佐々木さんは問う。国と揉めたくはないのだ。

「ここを国として治めてくれるのなら、罪にはなりませんよ。各村民が色々な役割をする様になり、物々交換では不便が出てきましたので。」

『国名を決めてアトソーヌの貨幣を作ろう』

まじか。ちなみに統治は誰が?

『こちらはアオと莉緒、エーテーシーは莉緒が統治する権利を持っていますが、村の価値としてはアトソーヌの方が高いです。ちなみに村民の忠誠は莉緒に向けられています。』


まあ私が先に来たもんね。ウルフ戦の功労者は佐々木さんなんだけど、目の前で戦ったのが私だからな。彼は不憫である。


私は今来たイベントを共有した。


佐々木さんはかなり考え込んで重々しく口を開いた。

「貨幣か。材料問題がね…。」

そうか。紙幣という訳にいかないからな。

「国として統治するなら国名を決めないと。」

元々ある国にちょっかい掛けられたくない。

村長に聞くと、国名は国王が決めるものらしい。この村で決めると多分リオアオ国になるという。安直だな!

「じゃあ帰って考えよう。」

「あ、忘れてた。魔石再充填できる様になったんだった。」

「ええ?!いつ?!」

「今朝。空の魔石預かったんだった。」

「あー。なにそれ、僕そんな魔法作ってないからスキル貰った感じ?」

「まあ、ここではやめとこ。向こうで話すよ。」

村の魔石を集めて充填したら小麦と牛乳をくれた。


とりあえずはじまりの部屋の自宅へ。

私が紅茶を淹れ、佐々木さんはさっきの牛乳でプリンを錬成して目の前に置いた。

「スキルじゃなくて闇魔法。坂本さんが闇魔法だけは文章で作れる様になった。爆食いイベントで。」


彼が魔石から取り込むドレインタッチと魔石に充填する魔力譲渡を作り出し、闇魔法を作れる以上疑われるリスクがあって私には関わりたくないと言った事を伝えた。


「え。関わりたくないって。君と別れるって意味?それじゃ隠れ蓑できないじゃないか。」


これか坂本さんが言ってたのは。


「花さんが味方か確かめたいって言ってたから、大量に魔石を渡せば常時管理人室に居られるって意味じゃないかな。ハナさんちょくちょく来てたでしょ?あと、柏木さんに関わって探ってリセットを繰り返したいみたい。」

多分彼は好感度チートをしたいのだ。坂本さんはお城で好感度爆上がりしたけどリセットしても私の距離感が変わらない事で気付いたのだ。


「ふーん。りおが落ちないから柏木さん?」

「そう見える?私あの人枯れてそうに見えるんだけど。」

「ええ?そんな事ないでしょ?リューりおのことめっちゃ好きだよ?」

「あの人は、私=異世界、だから好き、みたいな感じ。熱意は異世界と小説と自転車にしか無い気がする。」

「うーん。まあ、確かにそういう面はある。彼はいつだって異世界が一番、小説が二番だ。けど変動の可能性がある。」

「じゃあ尚更、距離を置いた方が良いよ。だって私、坂本さんとは利害しか無いから。」


彼は自分本意なのだ。顔以外は全く好みではない。何考えてるか分からないし、変わってるし。今朝も嘘つきだったし。


対して佐々木さんが嘘をつく時は凄く分かりやすい。彼は今、喜んでいるのを隠そうとしている。

私が坂本さんと距離ができるのが嬉しい、坂本さんが柏木さんとくっつけば坂本さんが私を諦めるし、彼にくっついて柏木さんが仲間になるから嬉しい、坂本さんがMPを増やせば一日中私といられて嬉しい。喜んでいるのを悟られたくないのはなぜだか分からないけど。


『莉緒の事しか見えなくなっている事が知れると、あのお別れイベントの様に切り捨てられると危惧しているのでは。彼は恐らくもう、異世界の為に莉緒と居るのではなく、莉緒と居る為に異世界を攻略しています。』

ええー…。そうなの?


「まあ、とりあえず国名と貨幣だよね。国名は何にする?国王は僕かりお、どちらがやる?」

「私統治とか無理。」

「僕がやりたいのは山々だけと、君の方が慕われてるよね…。」

「あっ…!東を探索しようってイベントが出た。りお!今からいこ!」


ハードスケジュールすぎである。

「東は私が行くから、アオは朝に戻って坂本さんと話して一旦夜まで時間進める事伝えて。エアリアルで仕事増えるかもだから、ちょっとは進めないと。」


「分かった。モンスターも人にも気を付けてよ?初めて会った人に騙されたりしないでね?愛陽のアドバイス聞いて。何かあってもすぐには関わらず僕が来るまで待って。」

「分かった。坂本さんが誰と話してたかチェックできたらしてね?」


佐々木さんを返したらノッテとともに東へ歩く。

「ノッテ、恋バナしよ。」

「こいばな?」

「そう。好きな人の話するの。」

「ノッテアオの事すきー!」

知ってたww

「うん。アオはね、異世界の私の旦那さんになるの。ノッテはお嫁さんになれないよ?それでもなりたいんだったら、ノッテと私とは、お別れになる。」

「ええ!りおの方が好き!!お別れやだあ!」

ノッテが私に駆け上がってきておぶさった。

私は勢いにちょっとふらつく。

「ノッテ、ウルフ戦の翌朝、ヤキモチ妬いたの?」

「ちがうー。仲良くしてほしいの。りおもアオも仲間だし家族。じゃまだった?ごめんね?」

「そっか。安心した。ノッテの明るさには救われてる。邪魔じゃないよ。ありがとね。」

ノッテは肩越しに私を覗き込んだ。


「ごめんねー。りおヤキモチー?」

「違うけどね。アオはノッテの事女の子じゃなくて子供だと思ってるの。アオじゃなくても、女の子が大人の男の人に引っ付きにいっちゃダメだよ?」

「分かったー。人間は引っ付いちゃだめなのね。教えてくれてありがとうー。」

「ケットシー同士でも好きな人ができたらまず私に相談して。ノッテと仲良しでも私の敵だったら困るからね。」

「分かった!お別れやだもん!絶対言うね。」


私はノッテを背中から下ろす。

いきなり襲撃を受けたら危ないからだ。

「恋バナは、他の人には内緒なんだ。言わないでね。カリクにも。」

「分かった!言わない!」


『ああいう時は邪魔しない様に話さなくて良いんですか?』

良いよ。私はノッテの純真さに救われてるし、あの日の分岐でカリクが思念伝達を得たのはプラスだよ。それに異性同士の好感度より仲間の絆の方が上がりにくい。

『そうですね。わかりました。まあ不都合があったらその時考えましょう。』

これからは家があるから、邪魔されたくない話はノッテの居ない時にするよ。

『了解しました。』


「ノッテ、走ろ!」

「はしるー!」


しばらく走ってたら牛が出た!乳牛じゃなかったので4頭倒した。ノッテが逃げる群れを追いかけようとしたので止めた。


アラームが鳴ったのではじまりの部屋へ。

牛を解体して片付け、ノッテにおやつをあげながらベタベタしてると佐々木さんがやってきた。

「あれ?ノッテと距離近くなってない?めっちゃゴロゴロ言ってるし。」

「にゃー。りおすきー。」

「私は世界の猫を喜ばすからね!」

「それ君じゃなくて商品のキャッチコピーw」

「これ、レシピ出てない?こっちどうしても出ないんだけど。」

と言って佐々木さんに渡す。

「…出ないね。材料集めても同じにならないの本当に不思議だよね…。リューやハナにも渡してみてよ。創造にも出ないし作れないんだ。」

まじか!!!


謎だ。本当にこれ、何が入っているのだろうか。異様に食いつきが良くて買い足しまくってる。佐々木さんから犬用を渡されたけどこちらもレシピは出なかった。


「この商品は凄いよね…もう手放せない。」

「買うしかないものもあるよね。」


それから私は佐々木さんとマップを共有した。

佐々木さんが気になる事を言う。

「僕今夜こっちで無限して過ごすよ。僕のタイミングで何度も巻き戻すから君達は普通に寝る様にして。リューには作品書かないでって伝えといて。寝るようにって。」

「いいけど無理しないでね。」

「リューを寝かしつける口実だよ。」

どうも夜中に作品を書いていた様で朝もメモリが届く時が結構あるとか。

それは小説スキルで書くのが早くなったからでは…。

「そっか。まあでも、アオのそれも口実だって分かってるから時々寝る様にして。」

佐々木さんはバツが悪そうな顔をした。今日何か思いついたのかも知れない。

「じゃあ一旦戻ろ。こっち来る前に連絡して。」



"坂本さん、アオあっちで無限するから今夜作品書くなって。レシピみたいに保存できるんでしょ。怪しまれてるから気を付けてね"

"えー。怪しまれる様な事なんか言ったの?"

"闇魔法の話と、私と会いたくない話と、柏木さんの話だよ。多分まほスキのタイトルから予測したのかも。"


"そうか。分かった。気をつけるよ。でもリューが無限するのは本当だ。東の攻略を関屋さんにさせたくないってさ。今までの村全部関屋さん独占してるだろ。"


なんと!そんな話をする程二人は仲良しなのか?!ちょっと二人の関係がよく分からなくなってきた。仲悪いんじゃなかったのか?!


『異世界の話だけは信頼してるけど、莉緒の事は譲れないってところじゃないですか?』

ちょっと意味がわからない。でも佐々木さんは相談してるのに坂本さんは私に不和のもとを話す。

『重要情報を伝えて莉緒に信頼されたいと思っていますね。』


"独占のつもりは無いんだけど。夜に寝ないで探検とか危ないって。"

"数時間ずつ寝てアトソーヌの時間を朝に送ってから探索始める気じゃないかな。"

"そんな事してもバレるのに"

"事後ならバレても良いんだよ彼は。俺柏木さんにアクションしようかなあ。"

"ええ?夜だよ?会う機会なくない?"

"彼女のバイト先。一緒に行く?好感度無双。"


『あー。隙をついてデートに誘う為でしたか。うまくアオを乗せたみたいですね。』

ええ?ほんと坂本さんが何考えてるか分からないんだけど。裏切る気無いんじゃなかったの?

『私にもよく分かりませんね。』

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