第35話 1日48時間。地球の記憶が遠くなる
「ちょ!違うからね!お袋が四六時中愚痴ってるだけだから!!」
愚痴を装って刷り込んでいるのだと気付いていないらしい。彼がやたらに食事制限に詳しいのもそういう訳か。ママンは彼を絶対に糖尿病にしたくないのだ。美食家だという旦那さんともっと二人で美味しいものを食べたかったに違いない。
「ねえ。動画が一部の地元層にウケて僕のイラストとWEBの収入が安定したから君を雑用に雇うよ。これで大手を振って給料払える」
「ええ。そういうのやなの。父親も断ったんだよ」
「何言ってるの。スキルでサポートしてよ。魔法作った分の対価は貰わないと僕が損だよ」
おっと。この人は私の扱いを理解してきたみたいだ。
「えー。わかったよ。給料はいらないけど在籍させて。食費を浮かせて給料貰った体にする」
ここは譲歩だ。こいつが大手を振って現金貢ぎ始めたらやばい。
「給料三万円とかどんだけブラックなの?!ちゃんと一般的な給料を渡すから!」
いやいや。この異常な貢ぎを受け入れたら私はいつまでたっても自立できない。それに、彼とは対等でいたい。
「アルバイト扱いで短時間にすればいいし」
「それだと雇用保険かけられないでしょ?!福利厚生はきちんとしなきゃ!」
押し問答の末アルバイト扱いで月三万程度働いてる体にする。羽振りが良くなると食費を浮かせているのがバレるからだというが。ママン地雷にならないといいけどな。
『イベント、WEBデザインを手伝おう』
ええ……
「ちょっと、イベント出たけど私WEBデザインなんてわからないよ」
「こっちも出た。WEBデザインを教えようだって」
なんなのこの謎イベント。私雑用係じゃなかったの?!
佐々木さんは言った。
「スキルはマウスとかタブレットで入力するより早いけど、人前でやる時のために手動で覚えよう。スキル化したら魔法でのやり方は頭に入るから」
佐々木パソコン教室である。
「あっ!パソコンインストラクターのスキル出た!」
「儲かりそう」
「いや僕接客とかストレスで死んじゃう」
講師は技術職でしょ?!接客じゃないよね?
『いえ、接客の要素は高いと思います』
何それ嫌すぎる。
私達はここにいる時間がとてつもなく長い。
一日が48時間を超える時もある。時間の感覚はもうだいぶ麻痺していた。
私このままで大丈夫なのかな。
地球での生活の記憶が、まるで過去の出来事みたいに遠い。
彼は私を見て微笑む。
「ここにいればたっぷり時間はあるから、いくらでも教えてあげられるね」
佐々木さんは、地球での私の居場所や時間を、この異世界で上書きしたいのかな。
「まあだいたい覚えた」
「いや覚えが良くてびっくりだよ!」
『報酬 WEBデザイン技能 スキルWEBデザイン WEBクリエイター能力検定試験エキスパート資格 ウェブデザイン技能検定3級資格」
これで仕事手伝えってことね。




