第33話 距離を取ろうとしないで!勇者の切実すぎる願い
『ノッテではなくカリクがクラーケンを討伐したから分岐で彼が勇者に選ばれました。まいりましたね……。彼から能力を奪うのは不可能となりました。彼の性格なら決して裏切りはしないと思いますが』
そうか。私の優位が無くなったんだ……。
それどころか、魔法を創造できる彼の方が優秀だ。
「私も何か、創造魔法に勝てる様な唯一の能力を身につけないとまずい」
佐々木さんはびっくりした顔でこちらを振り返る。つい声に出てた。
「何でそんな事言うの?僕が勇者で何がまずいの?」
呆れた。何も分かってない。野心のかけらもない純真で従順な佐々木さん。
素知らぬフリしてこのまま利用するのは、あまりに不誠実で気が引ける。
私は意を決して本音を伝えることにした。
「だって佐々木さんそのうちどんどん強くなって私なんか切り捨てるんじゃないかって心配になっちゃったんだ」
だけど彼は私の言葉をまともに取り合おうとはしなかった。
「ええ?!!何見当違いな事言ってるの?!君の発想は天才的だよ?!君が居なきゃ結界魔法も実現しなかったし、クラーケンも倒せなかったんだよ?!もっと自分の価値を理解して?!」
あんたもな!!!仕方ない。もう少し分かるように懇切丁寧に説明してあげよう。
「あのね。佐々木さん地球ではお金持ちだし、こっちでも優秀で才能あるし、私借り作ってばっかりで引け目を感じてるの」
「何言ってるの。引け目を感じてるのは僕なんだよ?!僕とカリクにこんな凄い力をくれたのは君なのに!」
まじか。こいつ分からず屋すぎるだろ。このままじゃ私だけでなく色んな人に利用されそうでめっちゃ心配だ。
「もう!ちゃんと自分の価値を理解して。あなたは私に貢いだり媚びたりする必要ないの。もっと自分に自信を持って!」
すると何故か佐々木さんは泣きそうな顔をした。整った顔は歪んで瞳が潤む。ええ、何で?!褒めてるんだよ?!
「お願いだからそんな事言って僕から距離を取ろうとしないでよ。もっと僕を信用して。僕何でもするよ。もっと貢ぐから、僕をここに居させてよ。今更追い出さないで」
話が噛み合わない。ちょっとこれは重症だ。これ、彼が私を全く信用していないのが原因かも。
「追い出したりしないよ。もう仲間だからね。佐々木さんはもっと私を信用すべきだと思うよ?」
「ほんとに?!僕仲間?!」
佐々木さんの顔から泣きそうな表情が消え、驚きと喜びが浮かぶ。
「仲間だよ。当たり前でしょ?」
カリクに乗ったまま黙って待っていたノッテが痺れを切らして言った。
「りおー。おはなしおわったー?ノッテはらへりー」
「わうわう」
「終わった終わった。帰ろ」
「ようやくの仲間認定とか、僕めっちゃ嬉しいんだけど」
「言わなきゃ分かんないとかむしろめっちゃ引くんだけど」
『パーティメンバー絆アップ』
ちゃんと感謝の言葉は言ってるつもりなのに伝わりづらい人なんだ。
『似た者同士でござるな』
『社会に認められて来なかった同士ですからね』
大歓声が私達を迎えてくれた。
「よし!今日はお祭りだ!」
佐々木さんは錬金術でたこ焼き器とスキレットを量産した。
佐々木さんはタコのアヒージョを、私はたこ焼きを焼きまくる。
村民が言った。
「あのう。わしらもそれを作ってみたいんですが」
「いいよ!一緒に作ろう!」
皆でたこ焼きを作って食べた。佐々木さんのインベントリに入ってた高級花かつおとおネギをかけた湯浅醤油味。
「うわあ!鰹節と魚醤と醤油のレシピが出た!」
鰹節と魚醤を錬金術で作る。
『先取り報酬 エーテーシーの町おこし オマール海老は生き物ですが素材なのでインベントリに入ります』
「オマール海老ぃ!!」
「こっちは伊勢海老きた!」
佐々木さんは伊勢海老だったらしい!
お祭りは夜まで続いた。
ノッテの命が危険に晒されてそれを皆で乗り越えたからなのか、すんごい報酬を貰ったからなのか、勇者というワードが衝撃だったのか、皆で変なテンションではしゃぎまくった。
私と佐々木さんはやっと対等の関係になれた。
……と思う。




