第32話 勇者になっちゃった?!猫パンチと、クラーケン討伐!
早朝の漁村に着くと悲鳴が聞こえた。
通知が鳴る。
『突発イベント クラーケンをやっつけろ』
今まで沖にいたクラーケンが、目視できる場所まで来ていた。
「あれが漁に出られない原因ですか?」
「そうです。あんな大きい魔物にここまで来られたら船が、村がダメになってしまう!」
「もう村を放棄するしかないのか」
「りおー、あれたおしていいやつー?」
「ちょっと待ってね。まだ遠いから」
「錬金術師様、あれを何とかできるのですか?」
「お願いです錬金術師様。何でもします。あれを何とかして下さい」
村人が集まって来て私や佐々木さんに懇願する。
街に近付くと浅いから、頭が少し見えている。倒すなら今がチャンスかも知れない。
先手必勝だ。だけど……。
「あそこまで泳ぐのはさすがに無理かも」
私のつぶやきに、佐々木さんは叫ぶように言った。
「でも村を戦場にはしたくないよ!」
「わ、わしらが船を出します」
「危ないよそんなこと」
どうすれば。目を閉じると、昨日カリクが水の上を走っていた映像が浮かんだ。カリクが結界を張り稲妻を放つシーン、それを自分のあの結界の映像に置き換える。全てを防ぐ結界。
そうか。
「結界。足場」
私はあらゆるものの上を歩ける結界を想像し体に纏う。別にドーム状じゃなくても良いんだ!空に一歩踏み出す。やばい!私は空を走れる!!
クラーケンに向かって空を翔けた。
「ちょ!関屋さん待って!ええ!?何なのそれ?!どうやってるの?!」
私を見たノッテが興奮する。
「ノッテもやる!ノッテもやる!はしる!すき!!けっかーい!!」
「ええ!それ結界なの?!」
結界を纏ったノッテが駆け出す。
「はしる!カリクも!!おそら!はしる!」
水泳なんか、結界があれば必要無かった!!
「わおん!!」
「待ってカリク!僕も行く!」
二人も結界を張って駆けてくる。
頭がちょっとしか出ていない。
「ねえ!稲妻を放ったら、魚が全部だめになるの?」
「多分完全に潜っている限り大丈夫じゃないかな!海面の方が危ないよ。クラーケンを何とか引きずり出せないかな」
私はちょっと見えているクラーケンの頭を、魔法で浮かせられないか試してみた。
「無理だなあ。出てる面積が少なすぎる」
「おこらす!おいかける!エイクと同じ!」
ノッテが独断で駆け出した。
「危ないよ戻って!」
「ノッテ!!」
ノッテはクラーケンの頭に降り、ふしゃーと唸って猫パンチした。ずどんと水に衝撃が走る。
水柱が上がった。
ちょ!ノッテの攻撃力やばくない?!ノッテ無双なの?!
水中からタコの足が出てきて、ノッテの背中に迫る。
「後ろ!攻撃!避けて!」
ノッテは振り返るが間に合わない。
「ノッテ結界!弾け!」
「うみゃ!!」
だが、ノッテは弾く結界の映像を見ていない。
結界ごと触手に巻きつかれ水中に引き込まれそうになる。カリクが静電気を纏う。
「カリクだめ!ノッテが巻き込まれる!」
佐々木さんの制止に魔法は霧散する。
私は風を放つ。
「ウインドカッター!」
触手に当たるがクラーケンは無傷だ。
「ウォータージェット!!」
佐々木さんが高圧水流を当てて切ろうとする。
鑑定すると水耐性。水の攻撃が効きにくいんだ。
「タコ水耐性がある!」
「ダメか!ノッテもう少し頑張って持ち堪えろ!カリク来い!もしノッテが落ちたら拾えよ!」
佐々木さんがカリクを連れて走る。
村人の声が響く。
「ノッテちゃーん!踏ん張れー!」
「頑張れノッテ!」
「ノッテ!」
「ノッテちゃん!持ちこたえてー!」
ウインドカッターも威力が足りない。
「なら火でどうだ!」
佐々木さんがこの前見てた職人動画のやつだ。火を細く出してクラーケンに穴を開けようとするけど水がかかって消える。
「くそ!だめか!」
きっと属性があるからダメなんだ。
結界は無属性だった。
紙で手を切った事を思い出す。
薄い、薄くて強い結界を触手の前に生成。
「高速回転!」
スパンと切り離された触手を私は目視収納する。
「みゃあ!」
背中から落ちるノッテが、立ち直り反射でくるりと下を向く。その下にカリクが走り込んだ。
カリクはノッテを乗せたままこちらに退避してくる。
「ノッテ!危ないでしょ!」
「今度から作戦は僕か関屋さんに相談して」
「アオかせきや?」
「僕かりお。先にちゃんと相談して」
「わかた」
足を一本切られたクラーケンはこちらに向かって墨を吐く。
私達は墨を結界で弾いた。
「うわ!墨は毒みたい!!」
海面に魚が浮いてきたのでクリーンして鑑定。
「これ危ないね!」
毒の魚は危ないので収納。後で住民を鑑定しなきゃ!
クラーケンは足を何本も伸ばしてきた。
「チャーンス!」
私は無属性の結界でクラーケンの触手を掴む。そのまま覆って上に引き上げる。
「うううう。重いー!」
佐々木さんとノッテも、別の触手を結界で引き上げる。
「せーの!!!」
佐々木さんが掛け声をかけた。
「「「よいしょー!」」」
三人で力を合わせて空中に引き上げ。
「カリク!目と目の間を狙え!素材は壊すなよ!細くて鋭い針みたいな稲妻で突き刺せ!」
待って!お犬様に対してめちゃくちゃ難易度高い事をさらりと言うの?!カリクそれ分かるの?!
あおーーーーん!!!
カリクの遠吠えが響き渡る。
ずしゅ!!
生み出したそれは槍の様に眉間に刺さる。
「やばい!カリク天才!!めっちゃ賢い!!」
佐々木さんはカリクを振り返ってめっちゃ褒めた。
『報酬 クラーケンを討伐せよ 漁村エーテーシーの運営権 称号 エーテーシーの守護者 エーテーシー村民好感度大幅アップ 村民各ステータス大幅アップ』
待って!衝撃の報酬!!!
「うみゃあー!おーもーいーよー」
ノッテが結界を解くと急に重みが増す。
ノッテが持ち上げに一番貢献していた件!!
こんなに小さな猫が巨大なタコを一人で持ち上げてたとか!ノッテの可愛さと強さのギャップに、全ての理性が吹き飛んだ。
「重っ!!収納!!!」
佐々木さんが落とす前に収納してくれた。
そしてギギギと私を振り返る。
「関屋さんどうしよう!僕勇者になっちゃったんだけど?!」
「ええ!何それずるい!!」
主人公が私じゃ無かった件!!




