第26話 僕の言う通りにしてくれる?
日曜日である。
朝から父親に二種類のパンを食べてもらった。
「どっちもいけるぞ。日替わりにしてくれ」
「了解。たくさんお水飲んでね」
父親は打ちっぱなしに行った。
それから玄米ご飯レシピが来たので発芽玄米レシピを送る。早速錬金術で炊こうと思ったら…
ピンポーン
「うえ。まじか」
"今日デートしよ!デート!イベントなんだ!!一時間後!待ってるから!!"
"待って。デートに着ていく服がない"
"何でもいーから!ブティックイベントだから脱ぎ着しやすいカッコで来て!服買いにいこ!"
愛陽め、永遠と結託して強硬手段に出やがったな?!
『ナビにそういう機能はありません。何かのフラグと統合された可能性があります』
パパンの仲間フラグ折れたから服購入フラグが佐々木さんのイベントに統合されたってか。
……
無視である。すなわち肯定。
"分かったよ。行くから下で待ってて"
"やった!!報酬情報まだなんだ!分岐で変わるんだって!!何かな何かなー!嬉しいなー!"
お前デートそっちのけでイベントにワクワクしすぎだろ。
愛陽がちょっと吹き出した。
おい!わざとらしく煽んな!
愛陽に手伝ってもらって何とか可愛い格好をする。スモーキーピンクのトレーナーにベージュのティアードスカートだ。佐々木さんが170ありそうだから5センチのヒールはオッケー。
毎日の階段昇降が功を成した様で服が何とか入ったのだ。
「買う必要なくね?」
『ダメです!これから美味しい物食べて少し筋肉つけなくちゃいけないんですよ?!せめてMサイズの服を買いましょう』
ええ。筋肉とかいらねえ。必要エネルギー増えたら出費も増える!
『異世界ご飯と懸賞無双です!』
ええ。なんなのそれ。
非常階段の一番下で待ち構えていた佐々木さん。めっちゃくちゃお洒落だ。白に近いウォームグレーの春ニットにグレンチェックの細身のパンツ、そこへマスタードのチェスターコート。うわあそのコーデ着こなす?!私の似合わない色だからめっちゃ羨ましいんですけど!
「ちょ!関屋さん、服はめっちゃ可愛いんだけどヒールで非常階段駆け降りてくるのほんとやめて!心臓に悪いから!!自分が超絶華奢なの自覚して?!落ちたら死ぬからね?!」
駆け降りる私を腕を広げて抱き止めようとしていたので寸前で立ち止まる。
あらやだめっちゃがっかり顔いただきました。
「いや、私飛べるから落ちないし見ての通り急停止もできるから大丈夫だよ?」
何そのあからさまなガッカリ顔!さてはイベントが出てたな?!もしくは分岐を増やして報酬アップ目的か?!
だが服はめっちゃ可愛いんだけどってなんだ!!もっと褒め方あるだろうが!!そんなだから抱きしめイベントが失敗したのだ。
おいで!ラキシス!って言ってくれたら飛び込んでたわ!
『そのお話は履修済みです!ちなみにおいでラキシスではなく、ラキシス、おいで!ですね』
はっ!しまった!更にネタが古くなる可能性!
実は私はその漫画を見てはいない。子供の頃お父さんがそう言って私に両手を広げ、飛び込んだのだ。お父さん世代より多分だいぶ古い。
『お父さんラブですね。わかります』
いや違うわ!
それから車に乗り込むと佐々木さんはめっちゃガミガミ言ってきた。急停止は危ないとかその細さでこけたら骨折するから絶対こけるなとかそういう。いや口うるさいな!だが彼は口うるさい認定はされていなかった。横井さんや父親を選ぶとこれ以上にがみがみ言われた可能性があったのか。
『特に横井花恵は比べるまでもなく』
何と恐ろしい事だ。
「ほんとにそれ以上痩せないで!エレベーター使って!今日服買うけど、せめて5キロ増える前提で買うからね!160センチで41は細すぎ…はっ!!」
「何で私の身長と体重知ってるのかな?」
「ほんとごめん。偶然なんだ」
偶然で分かる訳ないだろ!
『佐々木蒼太仕様の鑑定ですね!』
いやどんな仕様だよ?!
『彼は動画を作る為にあらゆる物のサイズが詳細に分かる能力を手に入れました。目視で結構細部まで見える筈です。しかも目視したものを残す静止画というスキルがあり、それを何枚も加工する事で動画にできます』
まじか!肌のキメの荒さとか見えたらどうしよう!
『食い付くところが違いますが、莉緒さんの肌はむしろきめ細かいですね。見せつけてやりましょう』
ちょ!見られるんだ!やばい。今の肌と体型を維持しないと沽券に関わる。
『むしろ体型は維持しないで下さい』
デパートである。
ブティックに着くと店員さんが来る。
「ああ。連絡した佐々木です。話した件よろしくね」
「いらっしゃいませ佐々木様。はい。もちろん奥様には内密にいたします!」
ママンそんなに強烈なのか。じゃあどうしてママンのテリトリーに連れて来た!絶対バレるぞ?!太客はどっちか考えるまでもないだろ!まさか私を自分の家族や環境の監視下に置こうとしてるとかないよな?!
『仕方ないですよ。この人親の七光で生きてるんですから!きっとコーヒーも米もバレてますよ?』
まあそうだわな。親子喧嘩に巻き込まれない様に頑張るよ。
勧められたスカートの値札を見る。うっそ!スカートだけでこの値段なの?!
「佐々木さんあの」
「なんにも心配しないで。実は一昨日本職の方の入金あったの。それ思い出したら今朝急に君に服買ってあげたくなっちゃってさ!お礼お礼!」
いや絶対嘘だろ!そんな都合良く金が入るか!
『入金はほんとみたいですよ?』
お前やっぱり永遠と結託してるな?!
佐々木さんは店員さんに言う。
「この子もう少し太らせないといけないんで、大きめでも不自然にならない様なのを選んで下さい。今日の僕と歩くのに合う感じで、この子に一番似合うやつ選んで。ヒールは今のより低くしてね!転ぶと危ないから!」
試着室から出てきた私に彼は言った。
「うん。めっちゃ良いよ!似合う!あの店にして良かった!」
いや、ママンの行きつけの店とか地雷だろ。
「ね、これを着て、これから僕の言う通りにしてくれる?」
「え?」
目が、目が笑ってないんですけど?
「ふふ。冗談だってば」
ジョークにしては、彼の目があまりにも真剣なんですけど?!




