第27話 8万円のインベントリ
ブティックで買った服をそのまま着せられて店から出る。
「ありがとうございます。高いのに」
「あーもう、気にしないで。大丈夫大丈夫!大した事ないよ。それに僕映像レベルめっちゃ上がってるからこれから無双するよ!」
そ、そんな甘い世界なのか映像の世界は。しかもあなたもともとWEBデザインじゃなかった?
『WEBデザインはお金の為で、もともと映像作品を作りたかったらしいですよ?でも彼なら大丈夫でしょう。昨日も映像作りに夢中で徹夜してたので今日変なテンションですが』
徹夜明けで車とか!!
私は佐々木さんに治癒をかけた。
「ん?」
「寝てないって聞いたよ?少し休も」
『莉緒たん、アオは今、テンションMAXブースト中でござる!報酬のためなら三日徹夜とか普通でござるよ!』
「いや、大丈夫だよ。僕三日とか余裕だから。ね、次いこ」
佐々木さんは私の手を取って歩き出した。
「ちょ!」
「はやく!行こ行こ」
まじか。私カリクかなんかと間違われてない?
徹夜明けのテンション恐るべし。
私の手を握る力がやけに強いんだけど?!
着いたのは化粧品屋さん。
「佐々木です。分かってるよね?」
「はい!もちろんです」
「彼女に似合うものを全て選んで。一番優しい化粧品でナチュラルメイクしてあげて。少しでも血色良くなるようにして。この子虚弱なんだ」
いや虚弱ではないわ!!
「分かりました」
私は濃いお化粧はあまり好きではなくて普段は眉と口紅くらいで済ませたいタイプなのだ。お化粧をするとただでさえキツい顔がよけいキツくなりそうであまり気が進まないけど。
「こちらはブルーパール入りの青みピンクのマスカラです。少しだけ目元を柔らかくしましょう」
長いまつ毛のまっ黒を抑えるだけで柔らかい印象になるらしい?
私は女子っぽいベージュピンクが似合わないのがコンプレックスだったけれど、私に似合うのは青みピンクだったのだ。
いくつかのトライアルセットいくつかのコスメ一式を買い、試供品を貰った。いつも垢抜けない顔だと思っていたのに、鏡を見たら、嘘の様に明るい顔になっていた。私は好きな色ではなく似合う色を選ぶ重要さを知った。
「うん!健康的になった!!さあ!ご飯付き合って!カロリー高そうなとこ行こ!」
何故この人は私を太らせようとするんだ!
それから地中海料理のお店へ。
前菜だけで2人前3800円もするんだけど!!
見た目がもんのすごい美しい!
スープもサラダもパンも全部美味しい。
メインはエビとアスパラのジェノベーゼパスタと、国産小麦のシーフードピザである。
"レシピ出た?"
"出ない"
"こっちもだめ。くそー。ほんとは鉄板焼き食べたかったのにレシピ狙いでこっちにしたんだ。ハズしたー!"
『海老を手に入れれば解放されます』
"よし。地下へ買いに行こ!"
"買ったら本末転倒だよ!"
『漁村で買うでござるよ!』
"何!漁村とかめっちゃ行きたい!戦闘もしたいよ!"
"漁村は戦闘無かったなあ"
私達四人でめっちゃ盛り上がってニヤニヤしてるのに、周りから見たら一言も喋らないカップルで怖すぎる
それから、地下でローストビーフとお刺身とサラダを買ってくれて、デパ地下やコンビニで買う場合の糖質カットのコツとか、熱く語ってくれた。父親に教えてやろう。
その後スポーツショップで新しいジャージを買ってくれて、カフェでケーキを食べてようやくマンションに。
"きたっ!インベントリがきた!!!!"
"おめでとう……"
この人はインベントリを8万円で買ったんじゃない。
8万円のガチャでインベントリを引いたんだ。
『考えてみたらまだまだ価値は見合ってないですね!貢がれる事に負い目を感じてはいけません!』
『莉緒たんがアオに与えたものは金には換算できないでござるよ!!正しく価値を自覚するでござる!』
すっかり佐々木さんのチート利用価値に魅入られてるじゃん!
てか永遠がアオって呼んでてびっくりだよ!
"前代未聞の破格だよ!!まだまだ貢ぐよー。ふふふ。貢げば貢ぐほど良い報酬来ると信じてる!"
"多分それ間違えてるんじゃないかな?"
ちょっと三人のテンションがおかしいよ?
『報酬 貢がれ接待デート スキル静止画 佐々木蒼太好感度アップ』
私は佐々木さんの顔を見上げた。
「ん?どしたの?」
「ううん。なんでもないよ。今日ありがとう」
佐々木さん好感度アップしすぎてちょっと怖いんですけど。
これ以上、彼が私にどれだけ依存しているかを数字で見るのは、精神衛生上よろしくない。
『好感度告知無しに設定しますか?』
佐々木さんだけそうして。




