第四話 学校
校門に向かって多くの生徒が雪崩込んでいた。
私もその流れに乗って、学校の敷地の中に入った。
時刻は8時15分。
始業は8時半だ。今日は案外早く着いた。
校門を通ってすぐ後、空から何か降ってきた。
パシッとキャッチする
ポツリとした豆粒だ。
銀杏か。
私はそれを齧る。
独特な匂いが口の中に広がった。
お腹が一気に満たされた気がする。
今日は食パンを食べることができなかったのでこれを朝ご飯にしよう。
校舎の中に入り自分のクラスの下駄箱の前まで行く。
それぞれのボックスがあり、扉が付いている開閉式の下駄箱だ。
私のボックスの扉には「死ね!」と書かれていた。
私はその扉を開いて上履きを取り出し、さっさと履き替えて2階にある教室まで向かった。
階段を上る。
頭上にはスカートの短いJKが歩いていた。
下着の下の方は見えており、おしりとふとももが作る扇情的なしわが露わになっていた。
私はすたすたと歩いてその横を抜かした。
教室に着くと私はすぐに自分の席に着席した。
窓際だ。
教室に飾られた時計を見やる。現在の時刻は8時20分前だ。
あと10分。
暇だな。
そう思っていると、私の机の前に数人の女子が現れた。
「ねぇねぇ~ 昼のご飯忘れたんだけどぉ、買ってきてくれない?」
にやにやしながらそうやって話しかけてきた。
どぎついメイクをしている。
「どうせ誰も話す相手いないから暇でしょ?」
取り巻きたちも口角を吊り上げて笑っている。
私は口をもごもごと動かした。
もごもごと動かして唾液をため、ぺっっと吐き出した。
ボスの女の胸元に私の唾液が付着した。
据え膳だろう、美少女の唾液。
彼女らは呆然としている。
そして、次第に怒りがこみあげて来たのか、それが表情に表れて来た。
「……はぁ? 何してくれてんの」
その声は教室全体に響いて、教室中の目線がこちらに向いた。
「ごめん、でもあなたたちのお昼ご飯は買いにいきたくないから」
「だからってつばつけるとか何考えてんの? 超汚いんですけど。うわっ、というか臭っ‼」
「ほんまや、くっさ」
「くっさ~」
教室のどこかで、誰かが呟いた。「マーキングやん」
それで、どっと笑いが起きた。
それもあって目の前の女子たちは気が済んだのか、私の机の目の前を去っていった。
クスクス笑いを買うこと10分ほど、先生が教室に入ってきた。
キーンコーンカーンコーン。
教室のドアがバタンと締め切られる。廊下からも話し声が少なくなった。
一気に閉鎖的な空間になる。
「座れよ~」
始業のベルが鳴り終わった。
「はい、じゃあ教科書出して~。え、とこのクラスは、そうやね、積分のとこからか」
私の学校では朝のホームルームのようなものはなく、8時半から1限目の授業が始まる。
今日は数学だ。
先生が黒板に何か書き出しているが、クラスの話し声は一向にやまない。
わいわい、がやがや、としている。
そのとき、教室の前方のドアが、コンコン、とノックされた。
教壇上の先生が、それにぴくりと反応した。
私も含め学生の何人かも気付いたそぶりを見せる。
しかし、ドアの上部にある透明の窓には何も映っていない。
気のせいだろうか、そう思ったとき、
がらッとドアが開けられた。
がやがやしていた学生たちの目は全てそちらに向いた。
そして、おおきなざわめきが次第に収まっていき、やがてさざなみのようになって、波が完全に引いたあとのように、静まり返った。
皆の視線の先、教室の入口に立っていたのは、奇妙な子供だった。
異常に頭が大きく、身体は小さくて細い。
耳がとんがっており、目はあり得ないくらい大きい。
真っ黒な水晶玉を目の部分に埋め込まれたようだった。
その真っ黒な眼球は少し斜め上に吊り上がっていた。
一目でわかる、宇宙人だった。
次回は明日の朝8時に投稿。




