第三話 決闘
苺ジャムをスーツに塗りたくった男は拳を振りかぶって私に殴りかかってきた。
ごおおおおおお!!と空気を押しのけて大きな拳が眼前に迫ってきた。
肉厚な指とゴツゴツした関節がギュッと詰まった塊が私の顔の目の前までくる。
そこで。
私は正対した状態から右足を引いて、半身になった。
びゅぅぅん!!と大きな拳が私の顔の真横を通り過ぎた。
こめかみに垂れた黒い髪の一房がふわりと浮き上がった。
男は突き出した拳を引き戻した。
そして間髪入れず、再び殴りかかってきた。
ビュン! ビュン! ビュン! と私の顔の隣を拳がどんどん通り過ぎていく。
たったった、とステップを踏み私はそれを避けていく。
殴り続ける男の額には汗が滲んでいく。
男は殴るのをやめた。一瞬の沈黙。
一拍空いてから、下の方からつま先が飛んできた。
地面の方から私の顎を目掛けて男の蹴りが突き上げてきた。
私は顎の下に手のひらを出した。
バシィぃぃぃぃン!!!!とけたたましい音が鳴った。
私は男の爪先を握り込んでいた。
男のサングラスがずれ落ちた。
現れた極悪の瞳には、驚愕の色が浮かんでいた。
私は男のつまさきをパッと放して、
ダン!!と男の懐に踏み込んだ。
腰を捻り、ハイキックを繰り出した。
私の靴の甲が相手のこめかみにめり込んだ。
「はい、ズドン」
男の目は白くなり、泡を吹いて倒れた。
私は地面に置いていた学校用のカバンを拾い上げて、
また走り出した。
「遅刻遅刻ぅぅ〜!!」
パンはない。でも、爽快だった。
次回は今日の夜19時!




