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あの金獅子のヒートさんに勝つコウキ様っていったいどこまで凄いんだ。コウキとヒートの試合を見ながら回復を待っていたフロスは目の前でとんでもない試合を見てしまった。フロスがヒートに挑んだ時はまだ余力を残されている印象だった。現にヒートの得意技であるタックルも上手く避けれたと思っていた。しかしコウキとの闘いで繰り出したヒートのタックルはフロスの時に比べて3倍は早くなっていただろう。あのスピードで来られたら対処など不可能だ。それに比べてコウキは見事にかわすと反撃まで加えその後冗談まで交えていたほどだ。その後も凄かった。全力状態のヒートの連打を受け続け絶体絶命の状況かと思われた状態からなんと一発で返しそのまま勝負を終わらせてしまったのだ。
「コウキ様はとてもお強いのですね正直驚きました。」
「たまたまだよヒートがこけてくれたんだよ」
「何言ってんだコウキいいかフロス少なくとも俺は今までここまで格闘戦が強かった男を見た事ねぇよこの島でコウキの間合いに入った奴は例え武器を持っていても勝てんだろうなぁ」
「それほどまでとはすさまじいです」
「おいおい二人ともいつも言ってるだろ俺は平和主義者なのこの島で安全に生きていくの」
「そんなこと言ってもよゴルドの話じゃ大陸がちと荒れてるらしいじゃねーかあのまま行くとどこかがネメアの二の舞になるぞそうなってもし覇権国家でも誕生すればここだって狙われるんだぞそん時は戦わないといかんだろ」
「もしそうなったら頼むよヒート期待してるからさ」
「任せとけよここはまだ周りからも認知されていないから敵も来やしないでもなコウキが港で何やら企んでんだろそうなったら確実にここに人が集まるからなそうなったら俺が暴れるだけよ」
さしぶりにヒートの顔とちょうどいいのでリザードマンの二人の様子を見に来たわけだが調子も良さそうだし意外と将来のことも考えているようで安心だ。ヒートがあの様子なら問題は無いだろう。コウキは用事も済んだので訓練の邪魔をしても悪いと思い退散したのだった。いったん家に帰りステラと皆と食事をしているとそろそろバロメの出産が近いという話だった。ステラに頼まれて飼育小屋に行くと婦人会の皆が交互に身重のバロメの世話をしてくれていた。バロメはかなりお腹も大きくなっていて座り込んでいた。傍にいたベアリーがコウキに近づいて状況を説明してくれた。
「もうすぐ出産かねこの様子だとそろそろだね」
「そっか頑張れよバロメ」
コウキはバロメの傍に行くと頭を撫でてあげていた。まぁいつまでもここで頭を撫でているわけにもいかないため畑に行って皆の手伝いをして過ごした。前まで冬だったとはいえ薬草や芋は植えてあるので皆で手入れしてくれていたため綺麗に整備されている。今更コウキがいった所で特にやる事も無いのだが見て回るだけでも多少は気が紛れるだろう。コウキが畑でうろうろしているとついにバロメの陣痛が始まったと報告が入った。コウキは急いで小屋に戻るが既に出産は始まっていた。コウキも何か手伝おうとしていたが今まで出産を仕切って来たベアリーが素人は来るなと怒られてしまいコウキは小屋の外で待っていた。しばらく待っていると婦人会の人たちが外に出てきた。話を聞くとお湯が必要だということでコウキはすぐに魔法でお湯を作り渡してあげた。ようやくベアリーから小屋に入っていいと言われたためコウキが中に入るとなんと三匹の赤ちゃんが生まれていた。コウキが中に入ると赤ちゃんは必死に立とうとして頑張っていた。これは立ってすぐに立たなければ天敵から逃げることが出来ないと言われているためだがこの光景はいつ見ても感動する。生まれてから呼吸を開始すると必死になって足を立て何度もよろめきながら立ち上がろうとしていた。コウキ達はそっと見守っていると三匹の赤ちゃんはようやく立ち上がる事が出来た。そしてバロメのお乳を元気よく飲んでいた。
「ふぅいやーいつみてもどきどきするよなそれに元気そうで安心したよ」
コウキが一息ついていると婦人会の皆は赤ちゃんにお乳を飲ませてあげながらお湯で体を綺麗にしてくれていた。近くにいたヘイゼルも嬉しそうで良かった。コウキはバロメの所に行って思いっきり頭をなでてやった。バロメも頭を寄せて喜んでくれている。ヘイゼルも寄って来て既に男の父親の顔になっているのか少し凛々しく見えた。
「良かったなヘイゼルこれからはしっかり守ってやれよ」
ひとしきりバロメを撫でたコウキはひとまずバロメの出産が終わった事で安堵した。一つ心配事が減ったのだ。これからは仲良く過ごしてほしい。赤ちゃんはオスが2匹と雌が1匹生まれた。三匹ともまだ特徴はあまり感じられない。そのため名前をどうするべきか悩んだ。毛は白いため色の違いで変化は付けられない。
「んー思い浮かばないからステラに決めてもらうかな」
「まったくなさけないねぇここの主なのに」
いつまでも名前を決められないでいるとベアリーに怒られてしまった。しかしそんなこと言われてもしょうがないじゃないかただでさえ考えるのは苦手なのにしかもヴァンシープなんて初めて見たんだぞ。固有の名前も分からないし皆なんて名前を付けているんだよそれにこの調子だとどんどん増えていくじゃないか。コウキは不満に思いながらも怒られてしまってはしょうがないので考えてやる事にした。必死になってアイデアをひねり出す。しばらく唸っていると不意に頭に出てきたのがムギ、リンゴ、モモである。今後この島の名産になるであろう果物に酒を造らないといけないと思っていた時に頭にあった麦出てきて名前になりそうだったものなので良しとしよう。
「女の子がモモで男の子右から麦そしてリンゴだ文句は受け付けるがその場合代わりに名前を付けてもらうぞ」
コウキの宣言に回りで待っていた皆は呆れてしまった。そもそもこの島でコウキに反論というか意見できる奴なんて数人しかいないのだ。コウキはあまり気にしていないしそんな雰囲気も感じないのだがコウキとはこの島の全てであり皆避難民なのだ。いかにコウキがいい人間だと気が付いていてもやはりそういった部分は皆気になる物だ。しかしそんな空気でもベアリーだけはコウキにしっかりと突っ込んでくれる。
「まぁ名前は名前は食べ物だけどいいんじゃないのかい?まぁコウキにしては合格ラインかしらねぇ」
「まぁ頭の中に出てきた単語を拾っただけだ特に意味はないけど意味はあるぞ。この島の今後の特産になるであろう果物だからなじゃ落ち着いたことだし赤ちゃんにもこんなに騒いでると悪いだろうから俺は退散するよ」
一息ついたためコウキは家に帰る事にした。まぁあんなものだろう。今日はめでたい日なので早めに家に帰ってステラとヘイゼルとバロメの間に出来た赤ちゃんの話をしながら過ごした。夜ご飯を食べた後ステラとゆっくりしている時この前のコディアックとエトルの話を思い出したためステラに聞いてみることにした。
「そういえばステラちょっといいかな」
「どうしたのコウキくん」
「実はなこの前の話なんだけど」
コウキはステラに全て話していった。実はデートが見られていたことやステラがかなり好評なことによりエルフの子とお近づきになりたい隊員がいるということを話していった。
「そうね村から飛び出して勝手に子供まで出来ちゃったからお母さんにさしぶりに会いに行かないといけないしその時に話してみようかしらねもちろんコウキくんにも来てもらうわよ」
コウキはステラの話に緊張してしまった。色々と飛び越してしまったがそういえばご両親に挨拶をしていなかった。いきなり娘が帰って来て結婚して子供が出来たなど普通の親は許せるのだろうか。いや許せないこれはしっかりと説明していかなければいけない。改めて気を引き締めたコウキであった。
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