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こっそり陰に隠れて二人の姿を見ていく。ヒートは左手にライオネルクローと御手杵を背中に装備して構えている。フロスは薙刀を使う用だ。審判役の隊員が真ん中に立ち合図を出す。始めに仕掛けたのはフロスだ。薙刀を下段に構えて距離を詰めていく。フロスは突進の勢いそのままに突きを繰り出した。体重の乗った一撃だったがヒートは体移動とクローを使って避けた。ヒートはそのまま半身になるとはじいたクローで切りかかる。フロスも当然初撃でやれるとは思っていないのだろう薙刀を引きそのまま受ける。ヒートの一撃は軽い動きに見えてヒートの魔力でかなり強化された一撃のため受けるとかなりの衝撃をうけるのだがフロスも頑張って耐えていた。フロスは受けきるとそのまま一歩引いて構え直す。その瞬間ヒートはフロスに合わせて蹴りつけた。フロスは優秀な戦士なようだがさすがにヒートの蹴りを直接受けて耐えられ無かったのだろう膝をついてしまった。
「なんだよフロスもう終わりかよまだまだアップだぜ」
ヒートは余裕があるようで挑発まで送っていた。しかしここで逆上するほど浅い戦士ではない、フロスは挑発に乗らずに息を整えて構え直した。
「さすがはネメアの金獅子です話には聞いていましたがこれほどとは伝説は本当なのですねいったい軽いフットワークでどこからあれほどの力が出るのか」
「なんだよごちゃごちゃ考えていると俺には勝てねーぞ」
ヒートは挑発しながらフロスに突進していった。ヒートが良くやる技なのだがノーモーションから魔力の籠った突進はかなりの破壊力がある。あれに当たったら確実にノックアウトだろう。フロスはヒートのタックルを見た瞬間体を回転させた。そしてリザードマンの象徴である尻尾を駆使してヒートの足を払いタックルを交わした。
「なるほどなリザードマンは尻尾も使って攻撃するんだ凄いな人とは攻撃パターンが違うからあの尻尾はいつ来るのか分かりにくいな」
コウキも陰で二人の戦いを見ていたがフロスの戦い方もみて勉強になっていた。
種族の特徴を生かした戦い方をしているし自分にはない尻尾での攻撃の感覚は自分には分からない感覚だ。それゆえに尻尾攻撃は分かりずらい。そしてやはりあの薙刀だろう。薙刀はリーチを生かした切り付けと突き長さも自分の尻尾と合わせた距離で攻撃していてかなりのリーチを使った攻撃をしている。尻尾があるため体の重心も違い人なら倒れているであろう体の向きも尻尾でバランスを整えて攻撃や防御に生かしている。
それに気が付いているであろうヒートもさすがでフロスの間合いに入り過ぎずかといってあの短いクローだけで戦っているのだ。御手杵を使えばリーチ自体は埋まるはずなのだが体捌きとクローで攻防を繰り広げていた。コウキが陰でこっそりと見学しているとコウキに気が付いた親衛隊の女性陣が近づいてきた。
「コウキさん何見てるの?堂々と見ればいいのに」
「アリスかそれにチカとスズもいるのかちょっとこっちに隠れてくれ。人に見られてると変に意識してしまうだろだから隠れてるんだよ」
「コウキ様魔法で幕張ってるから気づかれないと思いますけどね。私も最初気が付きませんでした」
「二人とも凄いですねヒートさんを初めて見た時なんてごつい人かと思いましたけどあそこまで早いなんて凄いです」
コウキに言われて女子達は素直に隠れてくれたがそもそもコウキのカモフラージュを見破ったチカはさすがだ。姿を透明にするほどまではしていなかったが存在は完璧に消していた。元はといえばチカの魔力を参考に考えた魔法なのだがあれから魔法を学んでさらに磨きがかかったチカはごまかせなかったようだ。それにアリスにスズも二人の戦闘に見入っていたためちょうどいい勉強だと思って見学していた。20分ほど戦ってついにフロスが体力切れでリタイアした。ヒートは多少息が上がっていたがまだまだ元気だった。
「じゃ三人とも俺はヒートの所に行くから元々顔出すつもりだったからな」
「はーいコウキさんじゃまたね」
コウキの話にアリスはささっそと帰っていった。アリスの良さはあの明るさだ。距離感は多少近いとは思うがアレがよさだからあれはあれでいいのだろう。コウキは三人と別れたあとヒートの元に向かった。
「ようヒート元気そうだなフロスも頑張っているみたいで安心したよ」
「なんだコウキ俺と勝負しに来たのかおめぇなかなか強くなってるじゃねーか」
「おいおい俺は平和主義者だぞそれに金獅子様と勝負なんて怖くて出来ねーよ」
「コウキ様ご無沙汰しております。恥ずかしい所をお見せしました。」
さしぶりにヒートと話したがいきなりギラギラした顔でコウキに勝負を吹っかけてきた。なんて危ない奴なんだ。全く良くも悪くもヒートは変わらない。
「いんだよフロスこいつはもう怪物になってるからなこいつに勝てる奴なんていないよ多分な」
「なに言ってんだコウキこの前もお前に投げ飛ばされただろうがリベンジマッチだぞほら早くやるぞ俺の様子見に来たんだろ」
「そんなこと言ったっておれは蜻蛉切置いて来てるんだぞ」
「あん?うるせー奴だなちょっと待ってろ」
コウキにあれこれと言い訳をされたヒートだったが回復中のフロスの所に行って装備を全部預けてしまった。
「ふぅー軽くなったぜこれで互角だなよし」
これはヒートと戦わないと終わらないらしい。しょうがないからさくっと負けて終わらせるしかない。先ほどの戦いを見せられて普通の人間が勝てるわけないじゃないか。人間と2メートルのライオンが戦わされるなんて日本ではありえないぞ。コウキはヒートの前に立って構える。ヒートも顔をぎらつかせながら構えて軽いフットワークをしていた。
「じゃ行くぞコウキ‼」
お互いに準備が出来たと判断するやヒートは渾身のタックルを仕掛けてきた。外から見ていても分かっていたが正面に立つとヒートのタックルは体感で三倍は早く感じた。一瞬で距離を詰められこのまま避けれなければ確実にコウキは倒されるだろう。しかしさすがにコウキも当たるわけにはいかないため回避する。左右にフェイントをしてから横に飛んで避ける。そのままヒートの側面にコウキも挨拶とばかりにタックルしてやった。完全に横を付かれたヒートはたまらず倒れるが受け身を取って距離を取った。しかしコウキも予想外の事があった。ヒートにタックルしたのはいいが筋肉が厚く質量の多いヒートの体は硬くタックルした方のコウキがとても痛かったのだ。まだ腕がジンジンしている。
「なんで攻撃をした方のおめぇが痛がってんだよ痛いのは俺だぞ」
「いやいやヒートの体はどうなってんだよ壁に激突したかと思ったぞ」
「なんだとそんなに褒めても何も出ねーぞおい」
ヒートはコウキに褒められたと勘違いしてどや顔しながら両手を家に上げてダブルバイセップスを決めていた。隆起した筋肉が良く似合うことだ。このままヒートに乗せられて攻撃していてはこっちが自滅してしまう。コウキはさっそと戦いを終わらせることに決めた。ポーズを決めたヒートはご機嫌になったのかコウキに距離を詰めて殴り掛かって来る。目の前に巨体が迫り上から振り下ろされる拳を圧巻だがコウキとしても見とれているわけにはいかない。ヒートの攻撃は当たれば終わりの全てが一撃必殺なのだ。コウキは体を捻ったり手で払って避けて行く。それに合わせてヒートもどんどん回転数が上がっていき猛攻を仕掛けてきた。しかし足場の取り合いではコウキは負けなかった。しっかりと足を相手に踏み込んで耐える。ヒートの足の間に踏み込むことで相手がしっかりと踏み込めずに体重の乗った攻撃が出せないのだ。足さばきさえしておけばヒートの攻撃はかわすことが出来る。攻撃が全く当たらないことでヒートはだんだん調子が狂わされ乱暴になって来た。上半身だけの強引な攻めはいくら歴戦の戦士といえどだんだん重心がずれて前のめりになってくる。それをしっかりと見極めていたコウキはヒートが限界ギリギリで深く沈みこむと踏み込んだ足を軸にヒートの腰に手を回した。浮き腰柔道で使う腰技を繰り出すとヒートの体は持ち上がり投げられてしまった。体やパワーで負けていても上になってしまえば簡単に抑え込むことが出来る。コウキはヒートの関節を決めて抑え込んだ。
コウキの絞め技が見事に決まったヒートは抵抗むなしくギブアップした。
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