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コウキが魔法と現代技術で新しく作り出した魔道エンジンによって推進力を得る事が出来た小型のボートはラミスの操る船からどんどん遠ざかっていった。あまりにも早いスピードに船員やアレク達は驚きつつも早すぎて見失ってしまう恐れから急いで出航していた。
大型船でも新しい航行スタイルとして人工的に風を生み出して進むやり方が実験的に使われ成功したわけだがあくまで帆船であるためコウキが開発した魔道エンジンに適うはずがない。アレク達はドンドン離されていきそれに焦りを覚えた船員は慌ただしく動き回っていた。アレクは全開で魔力を開放し帆に風を当て続けている。その風力は嵐の時の最大風力にも匹敵する威力でマストがギリギリと音を立てていた。
帆を支える船員たちは必死にマストを守りながら帆を支えていた。
「アレク様このままではマストが持ちません少し緩めてください‼」
「しかしコウキ様がどんどん進んでいるんだぞしかも島からだんだん離れているこのままでは危険だ」
コウキが乗る船ではエンジンを緩める方法を考えアリスは船の航行スピードに恐怖して動けずいた。そのせいで進路を変更しておらず真っすぐ進んでいた。当然ボートは島から離れていっている。
「ねぇコウキさんちょっといいかしら」
「どうしたアリス何か意見があるのか?」
「意見というかこの船ドンドン島から離れていない?アレク様の船もかなり遠くの方にあると思うんだけど」
「あっ!確かに曲げて無かったなちょっと待ってな」
コウキは船を島に戻すため舵を操作して島に戻そうとした。島側に鍛冶をきった瞬間だった。バゴッっという音がして舵が軽くなった。
「あれ軽くなったぞもしかして...」
軽くなってからいくら舵を操作しても船の進路が変わる事は無かった。コウキは船を作る時に舵などは今までと同じ作りだったため時速30キロというスピードに耐えられ無かったのだ。
「ごめんアリス舵が壊れたみたいだこの船操作出来ないわ」
「えーどうするのよこのままじゃどこかに行っちゃうわよ早く止めてよ」
「あそっかエンジンを止めればとりあえず止まるのか」
コウキはエンジンを操作して魔力を止めていく。するとエンジンの回転はだんだん下がって行きやがてエンジンは止まった。
「そうかエンジンだからスロットルとかを考えていたけど単純に魔力を調整すればスピードも調整出来るんだ。なるほどな」
コウキは現代の考えで動いていたためスロットルでのスピード制御を考えていたのだがそもそもエンジンの構造が違うのだ。魔力で動くなら魔力を制御すればいいのだ。
「いやー止まって良かったねそれで皆はどこだ?」
「もうかなり遠くの方になっちゃったわよ」
「まぁまぁまだいちよう見えるし待ってたら来てくれるさ」
コウキが船を止めてから30分ほどでアレク達が全速力でコウキを追いかけてきた。そして船に引き揚げてもらった。船の上では皆疲れ切っていて特にアレクは座り込んでいた。
「いやーごめんごめんちょっと制御のやり方を考える前に行っちゃった」
「はぁはぁそれは別にいいのですがせめてコウキ様が作った船の性能を教えてほしかったですあそこまで早く動くならあらかじめ追いかける準備も出来ましたから」
「そうだよな次からしっかり説明するから」
「ホントよ怖かったんだから」
アレクは息を切らしながらも怒りアリスは涙目になりながらコウキに訴えていた。
「ごめん次は気を付けるからじゃ帰ろうかラミス頼んだよ」
「はい任せてください」
ラミス達はガロスの訓練の成果もあり一切疲れを見せずに働いて船を操作している。皆大したものだ。船が動き出してから少しした時だった。マストの上の見張り台が慌ただしくなった。
「船長‼3時の方向影が見えます水中かなり大きいです」
「なんだと風がどうなっている」
「こっちに向かっているようですだんだん影が大きくなっています」
「まずい下げ舵30度回避しろ」
見張りの報告から一気に緊張感が走り船員たちは止まることなく動き回っている。
「アレクさん海竜が接近していると思われます危険ですからコウキ様を連れて中に入ってください少々荒れますので何かに摑まっていてくださいね」
「分かった何かあればすぐに呼んでくれ」
アレクはすぐさまコウキを引きずって船の中に入っていった。甲板ではラミスの怒声が聞こえ船はドンドン海竜から離れていっている。しかし海竜は海の怪物であり船にとっては天敵だ。しかも向かって来ているということはかなり起こっているのだろう。もしかしたらコウキの作ったボートのスピードに驚いたのかもしれない。
コウキは訳が分からないままアレクに引きずられて船の中に入ってきた。
「どうなってるんだアレク大丈夫なのか」
「どうやら海竜がこちらに近づいて来ているようですコウキ様は危険ですから中で待機していてください我々で対処しますから」
「でもアレクはさっきの魔法の連続使用で疲れ切っているだろ」
「何を言っているのですか普段から魔法などに頼ることなく鍛えていたのですこれくらいの疲労は問題ありません」
「そんなこと言ってもな気を付けてくれよ」
「もちろんですコウキ様を島に送り届けるまでは死ぬつもりはありませんあと念のために先ほどのボートを用意しておいてくださいね」
「でもあれは壊れているぞ曲がれないしそれにそんなに海竜ってのは危険なのか」
「はい滅多に遭遇することはありませんが出会ったら最後帰るのは無理だと言われています。全長は15メートルはあり巨大な牙で船を攻撃されるとかしかし我々は負けませんよ安心してくださいね」
「そんなのやばいじゃないか」
「万が一の場合は先ほどのボートで逃げてください真っすぐ行けば島に突っ込むように下ろしますから全速力で行ってください」
「そんなアレク達はどうするんだ。そうですね負けるつもりはありませんが最悪船を盾に島まで泳ぎますよ」
アレクは出会ったら最後生きては帰れないと言われている危険な海竜を前にとても冷静でいてコウキを説得していた。コウキはアレクを信用することにしたがいざとなれば自分も戦うことを胸に誓う。
「アレクは凄いなでもいざとなれば俺だって戦うからさ蜻蛉切だってあるんだから」
「しかし危険すぎますよ」
「アレク俺の事も信用してくれよそれにアレク達を信用してるからこそ一緒に戦うんだもし部下を信用しないような汚い貴族なら真っ先に逃げてるさ」
「分かりましたなるべく我々で対処しますから中で見ていてくださいね」
アレクはコウキを中で待つように伝えるとすぐに隊を率いて甲板に上がっていった。コウキはアレクの後ろ姿をみてかっこいいと思ったのだった。
甲板ではラミス達だ必死に船を操作していたが明らかに海竜の方がスピードが速く追いつかれるのは時間の問題であった。親衛隊の何人かは甲板に残り全力で風魔法を帆にぶつけていたが追いつかれると分かっているなら海竜に備えて魔力は温存しておいた方がいいと考えたアレクはすぐに隊員に指示を出して戦闘態勢に移行する。
「すまないがラミス追いつかれると分かっている以上無駄に魔力は使えない限りがあるからな」
「もちろん分かっていますアレクさん達も危険ですので中にいてくれて構いませんよ」
「何を言ってるんだ俺たちは戦うぞそのために隊だ戦闘は我々に任せて今は少しでも港に近づくことを考えるんだ。中に入ってしまえば海底は浅くなるから奴は入ってこれないだろう」
「分かりました全力を尽くします」
アレクとラミスはすぐさま作戦会議を終えて各自の役目を果たすべく動き出した。ラミスは船を操りアレクは甲板に整列している。
海中の中の黒い影はドンドン大きくなり船に迫って来ていた。もう少しで船に到達するだろう。アレク達はその時をじっとこらえて待った。そして黒い影がピッタリ船の横に並んだ時海面から巨大な鱗を体中に生やした海竜が胴体を体に持ち上げた。船よりも圧倒的に高い位置まで顔を出すとそのまま体当たりしてきた。




