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コウキはステラに相談するために畑の方へ向かった。ステラは畑手前のヘイゼルとバロメの飼育小屋の休憩スペースにいた。あれから畑仕事をしている婦人会から休憩スペースが欲しいと言われ簡易的に作った場所である。休憩スペースにはステラの他にベアリーとアリスのお母さんでガロスの妻であるティファニーと子供達のお母さん達が休憩していた。
「ステラちょっといいかな」
「おやおや私たちはお邪魔かねぇこれは」
「ちょっとティファニーさん何言ってるんですか何も無いですよ」
「何言ってんだいステラあんたはここの領主の嫁なんだからこういうことはしっかりとしないとだめなんだよ私達も早く子供の顔が見たいもんだねぇ」
ベアリーの言葉にお母さん達は皆頷き合っていた。ステラは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
「おいおい皆何言ってんだよ皆ちょっと変だぞからかわないでくれよ」
「何言ってんだいあんたがしっかりしないからいけないんだろそれで用事があったんだろもうからかったりしないからほら」
一番場を乱していたような気がするベアリーに結局場を沈められてしまった。
「まぁいいやステラ植物のことで相談があるんだけど」
「植物?次は何を始めるのコウキくん」
「紙を作りたくてな子供たちの教育には紙が必要だからな」
「紙かい紙ってのは高級品なんだろ貴族しか使ってるの見た事ないねぇ」
紙と言うワードを聞いてお母さん達が反応している。
「ティファニーさんは紙使ったことあるのかい?」
「なんでそう思うんだい」
「ティファニーさんはガロスの奥さんだから立場的には結構上の人間なのかなと思ってね使ったことあるならどんなものか教えてほしいなと思ってね」
「なるほどそういうことかい確かに軍の大事な式典の時などで使われているのは見た事あるわよでも遠目だったし良く分からなかったわねそれに紙ってのはあまり作る事が出来ないから高級なんじゃないのかい?子供たちの勉強のためっていうのは嬉しい事だけどあまり無理なことはしないでほしいねぇ」
ティファニーの言葉にお母さん達は頷き合っていた。コウキは少し考える。紙を作るのに一番難しいと思う工程は繊維を細かくすることだと思う。後は繊維を均一に伸ばすことだがやはり力仕事の方が厳しいだろう。しかし蒸気機関を作ったのだ。作業の自動化は文明開化の偉大な一歩人間は楽をしたいために技術を発展させるのだ。楽をするための努力を怠らないのである。偉大な発明な裏には今しか見ていないお堅い貴族にどれだけバカにされていたことだろうかどんなもの出来るはずがないという古い考えこそが発展を遅らせる最大の敵なのだ。なので皆にも無理とか厳しいとかはあまり思わないでほしい。コウキはしっかりと説明することに決めた。
「確かに紙作りってのは人の手で作るには大変だと思うよ。植物の繊維を崩してそれを薄く伸ばして固めたものが紙なんだけど繊維を崩すには結構な力仕事だからねでもねしっかりと勉強して知識の付いた人間には出来るんだよ自動で動かす方法がねこれから皆にはこういうことが出来るようにしっかりと勉強してもらいたいんだけどね」
「かってにやってくれるならすごいねじゃ私たちも手伝わせてもらうかね」
「それは助かるよ」
「ステラコウキから使えそうな植物を聞いて私達におしえな集めて来るから」
「分かったわコウキくん行きましょ」
「さぁみんな休憩は終わりだよ村のためにしっかり働くよ」
ベアリーがみんなを鼓舞してせっせと動き出す。コウキ達も休憩スペースを出ていった。
「それでコウキくんどういう植物が欲しいわけ」
「そうだなえっと木の川の部分とか藁みたいな細くて長い植物とかだな木の皮は丸太を作成している所にいっぱいあるはずだからあとは植物だな」
「なるほどね分かったはコウキくんは紙を作るための装置作るんでしょそっとやってていいわよ」
「そっか助かるよじゃまた後でな」
ステラに紙を作るための植物を伝えた後紙を作るためにコウキは動き出した。
「さて結局繊維をつぶすための機械どうするかな」
コウキは装置の仕組みを考えながら工房の方へ帰っていく。やはり繊維を細かくするにはミキサーがベストだろう。芋から取れるノリを混ぜるにも細かくするのにもやはりミキサーが最適だ。しかし問題がある。やはり蒸気機関というのはかなり燃料をつかうのだ。蒸気機関はかなりのパワーがあるのだがそのぶん石炭を燃やし続けなければならない。すべてを蒸気機関に頼っていたら燃料が足りなくなってしまうしやはり大気汚染などの問題も何百年か先には出て来るだろう。コウキは何となく水路を眺めながら帰っていった。
あるていど歩いて工房の近くに来た時コウキの目の前に水車小屋が飛び込んできた。
「そうだあるじゃん動力これだよ」
水車小屋は村に水を運ぶために作った小屋ではあるが水車は常に回り続けている。将来この動力を使うために小屋にしておいたのだ。水車の軸を伸ばし繋げられるようにしている。ミキサーの動力として使うにはピッタリだ。
コウキは水車から紙を作るための装置を作るための準備に取り掛かった。コウキは工房に戻って作業を開始する。まずは煮込むための鍋に水車の動力を使って回転する刃の部分を作っていく。ギアを何個か作り大きさを変えることで回転を速めるように作っていく。ある程度パーツを作ると組み合わせて完成だ。
「コウキくん来たわよ」
工房で作業をしているとステラが植物を届けに来てくれた。
「中にいるから置いといてくれ」
「分かったわ」
ステラは中に入って植物を置くとそのまま作業を見ているようだ。コウキは出来たパーツと植物を荷車に乗せると水車に向かっていく。ステラもついて来てくれた。
「この刃が何枚もついている物で紙が出来るの?」
「そうだよこれで繊維を壊すんだ刃が回転して中の植物が切り刻まれていくんだよ危険だから注意して作業しないといけないんだけどね」
「たしかにこれなら良く切れそうね」
水車小屋につくといったん水車を止めて装置を取り付けていく。軸に装置をはめ込むだけでギアがはまるように作ったためすぐに付けることが出来た。下に釜戸と鍋を作っていく。これで植物に火を入れて繊維が崩れやすくし芋の成分も染み出すようにした。鍋は横のレバーを倒すとミキサーより下に下がり横に軸を取り付けておくことで鍋が回転出来るようにして倒して水槽に入れれるように釜を改良しておく。あとは水槽までの水路を斜めに作って釜戸の目の前に水槽を作ったらいったん装置の完成だ。
「よし出来たぞ試運転してみるけど危ないから下がっててな」
コウキはステラを下がらせたあと水車を動かしてみる。すると水車は水の力で動き出しその回転がギアに伝わり回転を速めていきミキサーを回していく。ミキサーは高速で回転していた。
「これは凄いぞ良い感じだ。試運転のため水と草を入れてみる。中ではミキサーによって勢いよく回り草を切り刻んでいた。
「凄いわねホントに良く切れるわね」
「あぁそうだな」
ある程度様子を見ていると回転によって水が跳ねているのが気になり出してきた。今は水の状態なので問題ないが火を付ければお湯が跳ねてくるのだ。万が一にもあたったら大変だ。急遽回りに壁を作り壺のような形になった。上の部分は取り外し可能で釜から繊維をとり出す時には外れるようになっている。この装置の使い方はまず鍋は下げた状態で植物を煮込み柔らかくする。その際灰からとった灰汁を入れることで繊維が壊れるようになる。柔らかくしたら一日放置し次の日の上のミキサーで細かくして繊維を崩すと水槽に流し込み形を作って乾燥させれば完成だ。
「よしいったん完成だぞ後は紙を均等にするための枠を作ればいよいよ紙作りだ」




