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コウキは新しい暖房機器のために蒸気機関の作成に取り掛かるために工房へと向かった。まずは試作だ。蒸気機関が出来れば今後の産業革命に繋がり文明はさらに発展することだろう。工房の中ではリーノが働いていたので少し手伝ってもらうことにする。
「リーノちょっといいかな」
「もちろんですよ何すればいいですか」
「官を沢山作って欲しいんだよリュディアの部屋を囲んで少し余裕があるくらいで頼む」
「また新しい物を作るんですね分かりました」
リーノにお湯が流れる部分を作って貰っている間にコウキは蒸気機関の作成を開始する。構造的にはお湯を沸かし蒸気を発生させる部分と蒸気を通す部分そしてピストンとシリンダーを作るそれを官の中のスクリューに繋げて動力を与えお湯を循環させれば完成だ。ピストンは蒸気の圧力で上下して動かすことが出来る。蒸気を送り出す官はシリンダーの上下に取りつけられ官とシリンダーの間には弁が取り付けられ逆流しないようにするとまずは上の官によりピストンが下げられ下に来ると下の官から蒸気が入り今度はピストンを押し上げるこれをループさせることによりギアに取りつけたクランクがピストンに上下の動きによってギアに回転運動を発生させるのだ。シリンダーの中で出た蒸気は冷やされ水に戻りボイラーの中に戻され循環されるわけだ。
コウキはまずボイラーから製作に取り掛かる。構造が複雑なため魔法で形を作っていく。
火を起こして高温のガスを発生させる部分と水を通す部分を作る。次に官を繋げるとシリンダーとピストンを作っていく。ボイラーから出た熱は廃熱官を通り放出されるわけだがその官に全体にいきわたらせる水の官を通し温めてお湯を循環させる。これで完成だ。コウキは製造者の力を使いながらイメージをしていき細かい部分は能力に任せて作り上げていった。1週間ほどで装置は完成し穴の中に新しい部屋を掘るとそこに蒸気機関を設置した。それからリュディアの部屋の周りにリーノが作った官を通していき完成だ。横にタンクを作り水路を繋げて水を中に流し込んでしく。
「いやー大変だったな後は動くかだけど」
「コウキさんが作ったのですから絶対上手く行きますよ」
「よし火を入れるぞ」
コウキはボイラー室に炭をくべていき火をつけた。しばらく待っていたが水蒸気の圧力はあまり上がらなかった。
「んーおかしいな構造自体は成功なんだけど圧力が上がらないな」
「火力に問題があるんですかね炭以外の方法を取らないといけないですかね」
コウキは新しい燃料について考えていく。地球で良く使われていたのはやはり石油だろう。そしてガスだ。しかしまだ石油を掘り出す技術などない。
「あと何があったかな」
しばらく考えていると少し前に鉄鉱石掘り出し班のくもまると獣人の採掘担当のドルトンから何か黒い物を掘り出してしまったと報告されていたのを思い出した。
「リーノちょっといいかな」
「はい何でしょうか」
「ドルトンを呼んできてくれないかな」
「分かりました」
リーノはすぐに走っていき作業をしていたドルトンを呼んできてくれた。ドルトンは大きな体をどしどし揺らしながら来てくれた。ドルトンはコングの獣人族でとても体が大きくまた力がとても強い。見た目にはかなりごつい男ではあるが性格は穏やかで優しい男であった。ヒート達の村に住んでいた男で初めにこの村に移り住んだ組である。
「わるいなドルトン急に呼び出したりして」
「何言ってんだコウキの旦那ここに住んでいるんだから働かせてくれや」
「それでな前掘り出したっていってたやつなんだけど改めて見せてくれないかな」
「あーあれな掘ってたら出てきたんだが周りの岩より黒くて硬いし何に使うか分からんからいちよう残しておいたんだちょっと待っててくれ」
ドルトンは話を聞いて捨てずに取っておいてくれたようで取りに行ってくれた。ドルトンから謎の鉱物を受け取るとコウキはじっくりと観察していく。色といい形といい観察していたコウキは確信に変わる。
「これ石炭だなこいつはいいぞ」
「石炭ってなんですかコウキさん」
「石炭っていうのはな化石燃料とも言って良く燃えるんだよこれを使えば蒸気機関は完成だぞ」
「なんだよ旦那これ使えるのかよまだまだたくさん埋まってるぞ俺たちは随分下まで掘ってたんだが下に行けば巨大な層に当たっちまってなしょうがないから避けて掘ってたんだよ」
「そいつはいいなこれ今後必要になるからかなり必要になるぞドンドン掘り出してくれ」
「そういうことならお安い御用だぜ今からガンガン掘って来てやるよ」
コウキの話を聞いたドルトンは早速石炭を掘るために穴に戻っていった。持って来て貰った石炭をコウキはボイラーの中に投げ込んでいく。まんべんなく石炭を並べて燃やしていくとボイラーの温度はドンドン上がっていった。中の水はお湯に代わり水蒸気が発生してドンドン圧がかかっていく。やがてピストンは動き出し稼働し出した。
「完成ですねコウキさんこれは凄いですよ」
「あぁ良い感じだなもうしばらくしたら暖かくなるぞ」
しばらく待っていると官にお湯が循環しだし穴の中の温度が上がっていった。穴の中の温度はドンドン上がっていき冬とは思えないほどの暖かさになってきている。今回リーノには官の製作を任せていたため蒸気機関の製作を見学していない。リーノは動き出した装置を食い入るように見ていた。
「リーノ良かったら今度教えてやろうか」
「いいんですか昔から弟子入りしたら師匠の技は見て盗めと言われてますけどさすがにコウキさんの技は次元が違い過ぎて理解出来ませんからね」
「よしちょっと待っててくれなリュディアに報告してくるから」
新しい知識にワクワクしているリーノには待ってもらいリュディアのもとに向かった。
部屋に入るとリュディアは相変わらずではあったが暖かくなって調子は良さそうだ。
「どうだリュディア暖かいだろ」
「中々やるではないかコウキここまで温度が上がるとは思っておらんかったぞあの湯たんぽとやらも最高だったのではあるが」
「喜んでもらえて良かったよ蜂の様子はどうだなんだ?」
「あ奴らはここの横に穴を掘って入れておいた後は勝手にやるであろう」
「そっかご飯とかはどうすればいいんだ?」
「ホワイトローズが欲しいと言っておったぞ冬にはなるべく動かずに過ごすようじゃがコウキ達の襲撃でかなりの体力を使ったようじゃ食糧が持たないと言っておったわ」
「分かったよステラと相談して上の森に上手く花畑を作ってみるよ」
「そうしてやれ」
「じゃまた何かあったら教えてくれな」
コウキはリュディアへの報告を終えた後リーノがいる機関室へと戻った。中では点検用に見渡せる位置にリーノが陣取り観察を続けていた。戻ったコウキにリーノが気づくと目を輝かせていた。しかしリーノは科学というものを習っていないのでどうやって説明すればいいのか困ってしまう。この世界では魔法という存在があるため火や水などありとあらゆるものには魔力が宿りその力を持ってすべての現象が起きると思われている。確かにこの島にも魔力の流れがあり野菜なども早く育つらしいのだがコウキにはさっぱりであった。
しかし魔法を教わっていない人間はあまり魔力を使えないと聞いていたがその説明では無理があるのではないだろうか仕方がないのでとりあえず今回の機会の説明をそのままリーノにしてみた。
「というわけでこの機会は蒸気の力によって動いているわけだどうだリーノ」
「んーいかに自分達の知識とかけ離れた物が目の前にあるのかということは分かりますがいかんせん知識がないのでなんとも難しいですね」
「まぁそうだよなせっかくだから学校計画を進めようと思ってな皆で勉強してこの世の理屈を解き明かしたいな」
「その時は是非参加させてもらいます必ず呼んでくださいね」




