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ヒートの重く圧し掛かる言葉と現実に耐え切れなくなっていた雰囲気を見かねたコウキは動き出す。少しでも力になりたいと思ったからである。
「ヒートちょっといいかな俺も話したい」
「コウキやっぱりお前で良かったぜ一発かましてこい」
一言でヒートは全てを察したかのように場所を譲ってくれた。俺はヒートの立っていた場所に立ちゆっくりと口を開く。
「皆さん突然この場で話す事をお許しください。私はコウキクロサワ皆さんの手助けが出来ればと思いヒート共にこの地に来ました。ヒートから全て事情は伺っております。大変な状況に陥り大変だったことでしょう」
「なんだお前はいきなり出てきて」
「部外者は引っ込んでろよどうせ俺たちの事なんて分かるわけねーだろ」
コウキの言葉と部外者からの慰めに腹を立てた住民たちは罵倒を浴びせていく。会場は再び喧騒に包まれてしまった。収まる様子は無くヒートが鎮めようと動きだそうとしていた。コウキは手の中に火をイメージして圧縮していく。限界まで圧縮された魔力の火はやがって爆発するこれをコントロールし上に向けて解き放つドンッ!という大きな爆発音がして視線が一気に集まった。
「皆さん僕の話を聞いてください。」
コウキは一気に皆を引きつけ静かになった。
「僕は今訳あって新天地で生活をしています。始めは誰もいない無人島でした。僕は既に故郷を失いました。既にこの地に故郷はなく家族親戚友人全ていません。しかしあの島で一人で努力した。生きるために家を作り生活していく内に仲間にであった。そして新しい家族となり良き友人となったんだ。」
「コウキくん...」
ステラは心配そうにこちらを見守っており、なぜかヒートはニヤニヤしていた。真面目な場所でやめてほしい。
「だから皆いったん家に来ないかまずは体を休めて体制を整えようまだ故郷を取り戻せる後からでも遅くはないこのままここに居続けても死を待つだけだぞ。反乱軍だってやがて資金は尽きる食糧不足は深刻で子供はまともに成長出来ない。だからいったんここを去ろう必ず皆今よりはいい生活が出来る事を約束する」
考える時間が必要だと思いコウキは頭を下げて会場を後にした。その後再びヒートが立ちあがる。
「今から海賊の拠点を攻めるお前ら全員逃がすには船が足りねーからな船を奪ったらもう一度声をかけるから逃げたい奴は船に乗れ」
ヒートは逃げるための方法を伝えるとコウキを追って出ていった。住民たちは何も言わずに自分達の中で答えを探していた。
コウキ達は反乱軍の本部に集まっていた。皆で今後の作戦会議をしている。
「ジンこの後はどうなってんだ」
「はい現在海賊の主要拠点は二か所です。ネメア最大の西の港が本部のようになっていてその手前にある漁村にも海賊が集まっています。まずは漁村を取り返したいです何か意見があれば伺います」
「作戦はどうなってるんですか」
「はい明後日の夜明け前に村に襲撃を仕掛けます。海賊どもは寝静まっていると思うので一気に攻めきりたいですね。前衛は我らが務めますついて来てくださいヒート戦士長には前線に出て頂きたいのですが」
「当たり前だろ俺が後ろなんているわけねーだろ」
「さすがだなヒート良くも悪くもヒートらしいよ」
「私たちはコウキ様の護衛を務めます戦士長行くならお一人で行ってくださいね」
「なんだよアレク昔はぴったり俺について来てたのに振られちまったのか俺は」
「守るべきはコウキ様ですよ危険だと判断したらコウキ様を引きずってでも逃げます良いなジン」
「あぁ構わないぞ俺たちだけでもやりきる予定だったんだヒート戦士長もいる負けはせん」
「ラミスお前たちもコウキ様の護衛に加わるんだぞ必要最低限船に残してこっちに来るんだ」
「分かりました全力で盾となりましょう」
「私も行くわよここで待ってたら何しに来たのやら分からないじゃない」
「よし一緒に行こうかステラ」
「ではこの地図を見てくださいここの海沿いの村が攻略する村です。海には海賊船が複数止まっていて海から近づくことは出来ませんそれに今回は隠密性が重要なので陸路から侵攻します。横には森が広がっているのでそこから接近します。」
「なるほど俺は隠密ってのは苦手なんだがなやるしかねーな」
「決行は明後日なのでとりあえず今日はゆっくり休んでくださいでは解散です」
作戦会議が終わりコウキ達は休憩スペースに案内される。案内してくれた大柄な熊のような優しそうな女性が話しかけてくれた。
「お客じんにはこんな所で申し訳ないね私がお客の世話を任せられたベアリーだよ本当は宿とかいい所があったんだけどね」
「いえいえありがとうございますベアリーさん俺はコウキクロサワコウキでいいですよ」
「あんたの演説聞いたよ助けに来てくれたんだろありがとねホントはもっと早くここから出なきゃいけなかったんだよこんなことになっちまってまともに飯も食えやしない」
「私たちが食糧は持ち込んでいるので是非食べてくださいね」
「なかなかいい男じゃないか行動力もあるし人のために動ける奴なんてなかなかいないそこのエルフの嬢ちゃんも良い男を見つけたな」
「ありがとおばさん私はステラよ」
「ステラねぇなかなか綺麗な嬢ちゃんじゃないかコウキあんたもしっかり守ってやるんだよもう少ししたらお湯と食事を持ってくるからゆっくりしておくんだよ」
ベアリーはそう言うと部屋を出ていった。コウキは荷物を整理して靴を脱ぎ椅子に座った。元日本人として部屋で靴を履いているとなんだか落ち着かない家でも愛用していた草履に履き替える。くつろいでいるとベアリーがお湯と食事を持ってきてくれた。先に体を拭いてからステラに着替えを貰った。俺たち二人はヘイズルとバロメの毛から作られた服を着ている村全員分は圧倒的に量が足りないのでリュディアの作った布から服を作っているのだが俺たち二人は特別だ。ヘイゼルとバロメの毛から作る服は肌触りが良く気持ちがいいとてもリラックス出来る。二人で食事をとってゆっくりしていた。
「最近のんびりしてたから忙しくしてるの久しぶりだな」
「そうねまだ二人だったころは私も力仕事とかして筋肉痛になったわ」
「今はリーノとかが手伝ってくれるもんな」
「畑とヘイゼルとバロメの世話も皆でやってるからとっても助かるわ」
「ここの人たちはどうなるんだろうなやっぱりふるさとから離れるのは辛いことだよな」
「私達が出来る事は来てくれた人達に大変な思いをさせないことよ残る人たちだってそれなりに覚悟はしてるはずよ」
「そうだな出来る限り助けてあげたいけど全てってのは無理だもんな」
「そろそろ寝ましょ疲れたわ」
「そうだなお休み」
ランプの火を消して横になる。少したってステラの寝息が聞こえてきたが中々寝付くことが出来なかった。
「ん?」
目を瞑っていると外から子供の泣く声が聞こえてきた。気になって念のため蜻蛉切を持って外に出る。扉を開けると廊下にアレクが立っていた。
「どうしたんだアレクこんな所で」
「俺たちは交代でコウキ様の護衛に付こうって決めたんです三時間ごとに入れ替わりで近くにいますそれよりコウキ様はどうしたんですか?」
「そうだったのかありがとうそれでな外から子供の泣く声が聞こえてな気になったんで様子を見たくてな」
「なるほどお優しいコウキ様なら確かにそうでしょうね。お供します」
コウキとアレクは一緒に外に出て鳴き声の方に歩いていく。少し歩くと墓なのだろう石が積まれている場所がありその前で女の子が座り泣いていた。年は十代くらいでまだ幼さが残っている中学生ほどだろうか。怪しまれないようにゆっくり近づいて声をかけた。




