175
よしよし皆いい感じだ。畑仕事を見回っていたコウキは一通り回ると海に向かった。
さて人魚族の方はどうだろうか。人魚族はリザードマンに魚の養殖について学んでいるはずだ。早速そっちに行ってみる。人魚族はシャークが案内していたのだがさすがにずっとシャークが一緒にいるわけにはいかない。そのため人魚族は人魚族で独立してもらうことにした。その代表がセイレーンという美しい声の女性人魚だ。コウキが海に近づくとバルカンが海から上がって来た。
「どうだ皆の様子は?」
「やはり人魚族は海では素晴らしい動きですな。泳ぐのも早いし海の中での作業はまさに適任の一言ですなそれにしてもリザードマンは伝統的に川エビは養殖しますけどまさか海の魚の養殖をするなんて発想はありませんでしたな。」
「そうか?いくら海には多くの魚や魚類モンスターがいるとはいえ漁というのは安定しないだろう?」
「確かに最近は毎日漁に出ているとはいえ港があの人気ぶりですからね。人気の魚料理も多いですし我々の間でも問題になっていたのですよ。」
人口の増加と同時に文明は狩猟生活から定住型の飼育に変化していったのだ。どれだけ優秀なハンターでも大量の獲物を毎回決まった量取り続けることは出来ないのだ。そのための養殖である。動物だって家畜になったのだ。まして魚に対する技術は人魚族リザードマンは一流である。そこに加えてくもまるの糸で作った特別製の網。魚にストレスを与えること広範囲で飼育できるためかなりの量を養殖することが出来るだろう。これによって港の食事情はより良い物になるだろう。
コウキとバルカンが話しているとセイレーンが上がって来た。
「コウキ様わたくし頑張りますわまさか魚を育てることが仕事になるなんて思ってもみませんでした。頑張りますわ。」
「あぁ頼んだよ。所でセイレーンは人の前に建ったりすることって抵抗とかある?」
「それはどういう意味ですか?」
「いやな人魚族の子たちの事をブラックから聞いたんだ。それとこれから俺がやろうとしていることがぶつかってしまうかなと思ってな」
「詳しくお聞かせください情報がないと何も分かりませんわ」
「そうだなそれじゃ話していくよ」
コウキはこの場所をいずれはリゾートのようにしたいということを伝えた。海の上の高級ホテルで人魚の皆が切り盛りする宿だ。そしてセイレーンのその美しい声を使ってステージに立ってくれないかということを伝えていく。
「そのお給仕をするということは仕事ですのでもちろん大丈夫です。ですがその歌というのは良く分からないのですが私で大丈夫なのですか?」
「あぁもちろんだよ。セイレーンの声はとてもきれいなんだ。人の心を癒してくれる力がある。その歌声を皆に届けることが出来れば皆を癒せて素敵な事になると思うんだよな」
文明が発展するうえで技術がある程度発達してくると人々は娯楽を求めるようになる。
娯楽というのは色々な物があって例えば絵画例えば銅像等があげられる。そうした目で見て楽しむものが一つの楽しみだとすれば音を使って楽しむ娯楽も存在するのだ。楽器を奏でて音色を楽しんだり歌うことによって楽しむという方法もある。その歌という芸術においてセイレーンは適任だと感じたのだ。
「分かりました。このような素敵な場所に来れた感謝もありますしその時はご協力させて頂きますわ」
セイレーンは嫌な顔一つせずに朗らかな笑みで笑いかけてくれた。
「もちろんいやだったりしたらその時はすぐにやめるからな。この島に来たからには全員が幸せになって貰わないといけないんだ。だから絶対無理はしちゃだめだよ」
「はいありがとうございます。」
「じゃ俺は海の中の事は分からないから後は任せるよ。」
「お任せくださいコウキ様では戻ります」
話を終えるとバルカンとセイレーンは海に戻って行った。さてこれで一通りは終わっただろう。ラミスも帰って来たしいよいよ次はステラの里帰りと親御さんに挨拶に行かなければいけない。
「よし行くぞアレクまずは準備だ。村に帰るぞ」
「はいコウキ様」
二人は魔道車に乗って村に帰って行ったのだった。
セイレーンと新しい海
少し遡る事人魚族がやっと水槽から解放されて海に出た時の事だ。セイレーンたち人魚族はシャークについて新しい生活場所に向かっていた。スラムでは岩場に何とか穴を見つけてはそこに寝ていた。しかしある程度住みだすと当然人とが集まり出しそこに集落が形成される。スラムの海はけしていい環境とは言えなかったがそれでも皆で集まって住んでいればいい物だった。
しかしある時から人魚狩りが始まりセイレーンたちは海賊に怯えながら生活しなければいけなくなった。前まではブラックタイガーがスラムを守ってくれていたので楽しく生活できていたのだが捕まったと聞いてからすべてが変わったのだ。
それから状況はめまぐるしく変わりなんと今目の前に見えている景色はとんでもない事になっている。それは海の中に家が建っているのだ。石で組まれた地上で見るような形の家。大きさはそこまでないが今まで岩に身を隠していたことを考えれば十分すぎるほどである。まして家と言っても基本は寝るだけなので大満足だ。
「シャークさんここが本当に私達の家なのですか?」
「そうだ今フロス殿から聞いた好きな家に入るといい」
フロスとはあちらにいるリザードマンの方だそうだ。真面目そうだし中々いい人そうだ。
それにこんなにも素敵な場所を用意してくれるなんてここはしっかりと挨拶をしておかなければいけない。
「フロスさんありがとうございます。このような素晴らしい場所を用意していただいてとても感謝しておりますわ。私はセイレーンと申します。以後よろしくお願いしますわ」
「これは丁寧にどうも。私はフロスリザードマンの代表をやっております。それとここを用意されたのはコウキ様です。あちらの家を作られたのはベーグ様です。私共は家を設置しただけにすぎません。コウキ様はここの主でベーグ様はドワーフの職人の親方でこの島で物作りにおいてかなりの地位をお持ちの方です。先ほどの言葉はそのお二人に仰ってください。」
人族の領主に物作りはドワーフ?船に乗っていたのは獣人族だったし目の前の紳士はリザードマンだ。さらに驚いたのは船を動かすのを手伝っていたのはまさかのアラクネだった。しかも進化個体で敵として出会えば私ならあきらめてしまうことだろう。
そんな多種多様な方たちが集まって一つの島になっているなんてとんでもない事だ。
「この島には色々な種族の方が住んでいるのですね私驚きました」
「あぁそうですよねかの大国ジオストンでさせエルフ、ドワーフ、人族が主な人口分布ですから後から私達リザードマンなども入って来てはいますが多くはおりません。でもコウキ様は違うのです。そもそもここは難民つまり行き場の無くなった方が集まって来て住んでいる場所ですからね。多くの種族の方がいるのですよ。コウキ様は全ての種族に関係なく助けを求めている人たちを助けたいという考えの非常に素晴らしい方ですからねセイレーンさん達も必ず幸せな暮らしが出来ると思いますよ。」
「なるほどそういうことですか分かりました。そうさせて頂きますわ」
「それでは私はこれで失礼します」
セイレーンは話を済ませた後早速家に入った。今までごつごつとした岩場で過ごしていただけに丸みのあり温かみのある家と言う物に入ったのは初めてかもしれない。明日から早速仕事を貰えるらしい。セイレーンは家の安心感と明日に備えて眠りにつくのだった。
読んでくれてありがとう




