~暴食を満足させよう~2
書きためなんてありません。
なので見切り発車です。
途中投降失礼いたしました。
ふと目覚ます。
死んでいるのだから目を覚ますという表現はおかしいだろう、と一人ごちる。
だが目に映っている天井は何だ?体をあたたかく包むヤギのような毛皮はなんだ?
頭が混乱する。意味が分からない。
ぎぃ…と木製のドアが開く音がしたが、怖くて体が動かなかった。
「あ、目を覚ましたみたいですね!よかった!」
まるで水面を雨露が叩くかのような声がした。
「びっくりしましたよ、いきなり倒れてるんですから!今おじいさまを呼んできますね!」
頭が回らないのは寝惚けのせいだろうか…
足音が2つに増えこちらへ近づいてくるように感じる。
自分が自分でないような酔いの感触を脳が認識する。
「ほっほっほ…旅のお方、身体の具合はどうかね?」
「もう!おじいさまったら!発見してから3の日を仰ぐのですから意識が戻ったばかりじゃないですか!」
和礼服に似た黒の衣服に身を包んだ白髪がかちりと似合う中背の御大と、朱に染まった決して派手ではないが煌びやかな衣服の妙齢の婦人がドアを開け、男のいる部屋へとやってきた。
「目を覚ましたのならば…まずは胃労をとろうかのぉ。おぉーい、粥を持ってきておくれ!
さて、自己紹介と参ろうか。
ワシはフィナス王国ガーバント領主、コンコルド・ガーバントじゃ。
隣におるのが次孫のセリアじゃ。
お主の格好や黒目黒髪を見るに、神使者だの?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません、ガーバントが次孫、セリアと申します。
神使者というのは、この国に伝わる他の世界から何らかの使命を持って来訪される方々のことです。
歴史上6人の神使者が確認されていますのであなたで7人目ですね!」
…神なぞいるものなら是非とも背中を蹴ってやりたいものだ。
軌道に乗ってきたはずの自分の店をほっぽりだし、挙句に異世界だと?
話を聞くと神使者というのは元の場所に戻っていった記録がないという。
もう一度言おう。神を蹴りたい。
「先ほどから失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。
私は如月 悠大と申します。悠大というのが名、如月が家名となります。
ところで私は…あ。」
そこまで喋った所で腹の虫がぐぎゅう、と鳴る。
ガーバンド家の方達はくすり、と一笑いした。
「ほっほっほ!腹が鳴っては頭も回らぬ。
夕食後であるが故、テクィートの卵を使った粥じゃ」
粥…昔、孤児院にいた時によくシスター先生が作ってくれた粥を思い出す。
思えばあの時から俺の人生は始まったのかもしれない。
柔らかく煮込まれた米粒に絡まる、変哲もないスクランブルエッグをただ味噌と万能葱を入れ炒めた先生特製の玉子味噌。風邪で寝込んだときに出る一種のご馳走だった。
ほろり、と涙が出そうになるのを抑え、テクィート粥なるものを受け取る。
ほわっと湯気が鼻腔を刺激する。あぁ…先生…最後に会いたかった…
木で作られたレンゲでさっと掬い、口に運ぶ。
「ほっ?熱かったかね?ゆっくり食べなさい。」
「自然に涙が出るほどお腹が空いていたのですね…」
俺は何故だか泣いていた。
理由は知っている。思わず大声が出る。
「不味いっ!!!」
心の奥底でぽっと火がついたようだ。




