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(仮)飯の楽しさを教えてやる!  作者: 豆爺
俺。始動
1/3

~暴食を満足させよう~

初めまして。豆爺と申します。

この作品が初投稿となります。

作者は豆腐よりも脆いメンタルです。

批判中傷よりはブラウザバックを。

料理人の朝は早い。

まだ日が昇っていない明け方に、4畳半の狭いアパートにて一人の男が布団の中でのっそりと起床する。

じりりり、と喧しく響く目覚ましを止め、体を伸ばし意識を覚醒へと持っていく。

顔にいくらかの幼さを残すきっちり揃えた黒い短髪のこの男。


起きて早々に雪平鍋でお湯を沸かす。

使い込まれたこの雪平鍋は毎日手入れされており、長年使ったような古ぼけた印象を持たせないほどピカピカに磨かれていた。


一かけの昆布、頭と内臓を処理した煮干しを鍋にぽちゃりと浮かべ、愛用の煙草にそっと火をつける。

このじっくりと出汁がお湯に広がっていく様を煙草をくゆらせながら眺める。

鍋肌がふつふつと湧き上がる。慣れた手つきで金ざるに濾すと、冷蔵庫から秘伝の味噌を取り出す。

白味噌と赤味噌、それに八丁味噌を6:3:1の割合で混ぜたこの独特な味噌の風味は眠っていた脳を起こしてくれる。


味噌汁の具材なんてなんでもいい。

小さく解した豆腐と笹打ちした長ネギでも、塩蔵から戻した若芽でも、果ては卵と玉ねぎでもなんでもいいのだ。

今日は小口に切った万能ねぎと短冊状の大根にしたようだ、とんとん、とリズム良くまな板を叩く音が部屋中に広がる。


昔からそうだった。一つのことに集中しだすと周りが見えなくなる癖はここでも発揮され、材料を切る前に灰皿に置いた吸いかけの煙草はいつの間にか末端まで到達し煙をあげなくなっていた。


味噌を溶いたら、小さじほどのみりんをいれ沸騰させる。

完全に沸騰させないように気を付け器に盛る。

所詮一人暮らしの身。器二杯分ほどしか作らない。


「ふむ…」と一人男は納得したように味噌汁を啜る。

空になった鍋を洗い、器を洗い身支度をする。

春方とはいえまだ朝は寒く冷たい風が肌に突き刺さる。

向かったのはいつもの市場。常連と化した店にて野菜やその日に水揚げされた魚介類を吟味しながら今日の献立を考える。

一通り済ませたら漁師の方達の元気な声を背に、交差点を渡る。


漁師の関係者だろうか、キャッキャと騒ぐ子どもに追い抜かれるのも束の間。

右方からライトもつけずに前進するトラックの姿が視界に入る。


「こいつは…不味いな」

そこからは男の目に映るすべてがスローモーションに変わる。

気づいたら子供を突き飛ばした自分の姿をまるで俯瞰的に見ている男。

後悔はなかった。未練はあったのだが。

幼い頃より料理、というものに惹かれ孤児院時代を送ってきた。

孤児院の先生には高校まで面倒をかけたが、自らの夢を追い高校中退。その後イタリアへと渡る。

単身持ち物はカバン一つの身で向かったイタリアは町並みや人々のやさしさに触れ、3年ほどでトラットリア(大衆的なレストラン)の厨房を任されるようになった。


日本に帰ってきてからは和食料亭に腰を落ち着け、一年前に独立したばかりだった。

その矢先にこれだ。走馬灯のように浮かぶ様々な思い出。

居酒屋「きさらぎ」はこれにて幕を閉じる、がこの男…

如月悠大の物語はここから始まったのだ。

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