Prologue...
――2022年12月30日。
――王都アストレリア北部郊外山地、砦アスガルド
ひっそりとして、冷たい風が吹きぬけていた。
誰も開いていないはずの扉が開かれていた。
風は木の葉を運ぶ。音もなく、それでいて、どこかに連れて行ってもらいたいと願っているかのように、この葉は風にせがんでいた。
やがてたどり着いた宝玉の間――誰もいないはずの広間には、広大な空間と、ギルドの紋章を象ったタペストリー。
その眼下には、玉座が置かれていた。
青白い光の柱が、玉座を包み込む――。
白髪に白髭を蓄えた老人の姿が、幽かに浮かび上がった。
黒い法衣のようなもので、袖や裾のあたりが燈花色をしている。その燈花色に燃えるような衣の袖や裾から、筋肉隆々、鍛え抜かれたであろうそれが見えていた。
老人は黒鉄の篭手に手を当てながら、長きに渡る繁栄、20年という歳月に思いを馳せていた。隣に、傍に侍るべきその姿が現れないことが、唯一悔やまれた。
ノイズが走る。
老人のいる空間が、世界が、乱れている。
それは、この世界が終焉を迎える前触れ――
「また会おう、小僧。わしはいつでも……ここで待っておる」
――の、はずだった。
ノイズが迸る。
世界が歪んでいく中で、老人は、一人の女の姿に気づいた。
女は真っ直ぐに老人のもとへ向かうと、老人にこう問いかけたのである。
この世界を終わらせない方法――知りたくありませんか?




