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画面の中の戦争の日常  作者: ぐりこ


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囚われの賞金首 破

空母のブリーフィングルームには、第三要塞から出撃する各飛行連隊の隊長と副隊長が集まっていた。


正面の大型スクリーンには、小惑星帯とスペースデブリが散らばる宙域が映し出されている。作戦区域は二つに分かれていたが、敵基地を示す印はない。


宙賊基地の場所は分からない。基地の数も、規模も、敵の機体数も不明。現地で探し出すしかなかった。


俺は第三要塞の総隊長にされ皆の中心に座っていた、説明役のイリヤは前に立ち説明をスタートさせている。


「明日は飛行連隊六つ、百二十機を一旅団として数える。今回は二旅団を編成し、第三要塞から合計二百四十機が出撃する」


イリヤが画面を切り替える。星図に二つの戦闘区域が表示された。


「旅団ごとに担当区域を分ける。第一旅団はレン総隊長の指揮下で動き、第二旅団は別の区域を担当する。それぞれの区域を越えて勝手に移動するな。状況が変わった場合は、総隊長か俺へ報告しろ」


イリヤが航路を表示した。


「両旅団とも、敵に接近を悟られないよう、戦闘区域のおよそ八千キロ手前で空母から出撃する。対象区域まで千キロの地点でブースターを停止。そこから慣性で進み、基地まで三百キロの地点を目指す」


画面には予定速度が表示されている。


「宇宙空間に空気抵抗はない。ブースターを止めても、停止時の速度を保って進む。予定速度は時速三百キロ。到着まではおよそ二時間だ。その間は無線通信を禁止する。合図や短い会話は発光信号で行え。発光は必要最低限にしろ」


イリヤはミサイルの航路予測を示した。


「三百キロ地点に到達したら、ブースターを再起動すると同時に対要塞ミサイルを発射する。基地の位置は分かっていない。ミサイルに敵の電波を追わせ、反応を追跡して発信源を探す。発射から五分から十分ほどで敵基地の周辺に届く見込みだ。表面に命中すれば外壁や設備を損傷させられる可能性はあるが、命中は当てにするな」


「発艦口を見つけたら、まずレーザー兵器を内部へ撃ち込む。その後に侵入して全体の制圧を始める。入口を発見しても単機で突っ込むな。先行機は状況を報告し、後続へ進路を知らせろ」


イリヤが別の空母から伸びる航路を表示した。


「白兵戦専門の上陸部隊は、俺たちの現場到着から一時間後に到着する。揚陸艇で複数の基地へ向かい、発艦口から入る。入口では白兵戦部隊が先頭に立つ。」


「第一旅団は、外周の警護・警戒と、基地への侵攻支援に分かれる。侵入支援の部隊は、複数の基地へ分かれて白兵戦部隊と合流する。俺たちも基地へ向かう。白兵戦の支援に入る」


「外周を担当する部隊は、揚陸艇の航路と退路を守れ。侵入する部隊は、基地内部の状況を見ながら動け」


俺は画面の端に並ぶ賞金対象者と救出対象者の一覧を指した。


「宙賊の捕縛ポイントと、民間人救出の報奨金は別だ。リストにない人間が基地内にいる可能性もある。名前がないから敵だと決めつけるな。人を見つけたら報告しろ」


指揮官たちが端末へ内容を記録する。


その時、ノアが手を挙げた。


「隊長。敵の船の下に、黒い円板から八本の足が伸びている機体があります。これは何ですか?」


イリヤが画像を拡大する。円板状の装置から八本の脚が伸び、船体を挟み込む形になっていた。


「あれは通称、蜘蛛足と呼ばれる船だ」


俺が答える。


「獲物の輸送船に取り付き、八本の足で船体を挟んで固定する。蜘蛛という生き物が餌を捕らえる姿に似ているから、そう呼ばれているらしい」


「取り付かれた船はどうなるんですか?」


「蜘蛛足に装備されている目潰しという装置を使う。大きな電動丸ノコみたいなものだ。船体を削り、コックピットを潰す。そのまま機体を持ち去るための装備だ」


「宙賊が作っているんですか?」


「分からない。宙賊専用みたいな道具だが、どこが作っているのかは謎だ。見つけても近づくな。位置と周囲の敵の数を報告しろ」


「了解です」


「以上だ。各隊、発進準備に移れ」


*


翌朝、空母の格納庫では第一旅団の機体が発進準備を終えていた。


整備士たちが最終点検を続けている。レンナは俺の機体の脇で端末を操作し、推進器や火器管制装置を順に確認していた。


「推進器、火器管制、生命維持装置。全部正常よ」


「助かる」


「帰ってきたら、また点検するから」


レンナは端末から顔を上げた。


「必ず戻ってきて」


「ああ」


「レン一人じゃなくて、みんなも連れて帰ってきて」


「分かってる」


俺は彼女を抱きしめた。胸元のロケットペンダントに、レンナの指が触れる。中には二人の写真が入っていた。


「帰ったら続きを話そうね」


「約束する」


短く口づけを交わして、俺はヘルメットをかぶった。


レン飛行連隊の五小隊は、同じ基地へ向かうための順番を確認していた。第一小隊はレン、エリサ、ルイス、ノア、イーサン。第二から第五小隊も、各隊長の指示の下で機体の準備を進める。どの小隊も、基地へ入る時は隊形を崩さず、連隊としてまとまって動く。


「ルイス」


俺が通信をつなぐ。


「はい、隊長」


「敵にロックオンされた時は、まず報告しろ。攻撃を続けるか、味方を援護するか、一人で決めるな」


「はい」


「自分が撃つことだけじゃなく、味方がどこにいるかも見ろ。見えたものを伝えれば、イリヤが判断する」


「了解です」


イリヤの声が連隊全体に響いた。


「ノアはルイスの報告を拾え。イーサンは索敵結果を全体へ回す。敵を見つけても追うな。位置と進路を伝えろ。エリサは第一小隊の新人の位置を確認。全小隊、隊形を整えろ」


「第一小隊、確認」


第二、第三、第四、第五小隊からも返答が続く。


発進口が開いた。


「第一旅団、発進開始」


先頭機が空母から射出され、指定位置へ滑っていく。俺の機体も発進レールに固定された。


「全機、俺に続け。出るぞ」


機体がレールを走り、空母の外へ放たれた。格納庫の明かりが後方へ遠ざかっていく。


「第一旅団、全機発進を確認」


イリヤが報告した。


「各小隊、予定速度まで加速。編隊を維持しろ」


「レン飛行連隊、五小隊すべて発進完了」


エリサの声が入る。


「後方、異常ありません」


イーサンも続いた。


「ノア、位置は?」


「全機、予定位置です」


「よし。隊形を崩すな」


第二旅団は別の戦闘区域へ向かった。第一旅団は敵に発進を悟られないよう、戦闘区域の八千キロ手前から航行を続ける。


「対象区域まで千キロ。ブースター停止準備」


各機が速度を調整した。


「五秒。三、二、一。ブースター停止」


推進器の音が途切れ、機体は慣性で進み始めた。


無線が切られる。


時速三百キロ。宇宙空間に空気抵抗はない。ブースターを止めても、機体はその速度を保ったまま進む。発光信号で隊形を確かめ、必要な合図だけを送り合った。


小さな探知反応が表示されるたび、各機のレーダーがそちらを向く。しかし、反応は小惑星やデブリの影で途切れた。俺たちは進路を変えず、通信もしなかった。


二時間ほどが過ぎた頃、イリヤから発光信号が届いた。


――三百キロ地点。再起動準備。


俺は全機へ合図を送る。


――対要塞ミサイル発射準備。


無線がつながる。


「ミサイルの反応を追跡する。基地の位置はまだ分からない。発信源を見つけるまでは、勝手に目標を決めるな」


俺は操縦桿を握った。


「エンジン点火!」


推進器が唸り、機体が震える。


「対要塞ミサイル、てぇ!」


第一旅団の機体から、一斉にミサイルが放たれた。航跡はすぐ暗闇へ溶け、レーダー表示に小さな点だけを残す。


俺たちは発射後三分間、航跡と探知情報を追った。


「右前方、小惑星群から弱い電波反応!」


ノアが報告する。


「反応は断続的です。複数あるように見えます」


「イーサン、方角を確認しろ」


「小惑星群の奥です。ミサイルの一部がそちらへ向かっています」


イリヤが全体へ指示を出した。


「第一旅団、反応のある小惑星群へ向かえ。先行機は距離を詰めすぎるな。ルイス、右前方を見ろ。ノアは反応を記録。マルク、左側のデブリを警戒しろ」


「了解!」


三分が過ぎ、俺は出力を上げた。


「加速開始! 最大戦速! ミサイルの誘導先を追う。突っ込むぞ!」


機体が一斉に加速する。


ミサイルの航跡は、小惑星とデブリの間を縫うように進んでいた。一発が急に進路を変え、巨大な小惑星の割れ目へ向かう。


「反応源の方向が変わりました!」


ノアの報告に合わせ、画面上のミサイルが割れ目へ集まっていく。


「前方に敵影が出る可能性がある。撃つ前に確認しろ」


小惑星の割れ目から光が走った。


敵機だ。


軽装甲の船体に大型ブースターを備えた宙賊機が、次々と発進してくる。岩塊の隙間を縫い、こちらへ向かって加速していた。


「敵機確認! 二十機以上!」


「隊形を崩すな。各小隊、電磁ミサイルを撃て。味方の位置を確認してからだ!」


イリヤの命令が飛ぶ。


味方機から電磁ミサイルが放たれた。先頭の宙賊機は旋回しようとしたが、回避先にも岩塊が迫る。ミサイルが機体の側面に命中した。


推進器が止まり、敵機は姿勢を崩した。脱出ポッドは射出されない。機体は岩塊の陰へ漂っていく。


「敵一機、行動不能!」


「次を見ろ。射線を重ねるな!」


俺は宙賊機の背後へ回り、レーザーを撃ち込む。翼が焼けた敵機は小惑星の影へ消えた。


別の機体が岩をかすめて急旋回し、味方の射線を抜けようとする。


「リン、右の敵を引きつけろ。ネッサは反対側から回れ!」


「了解!」


リンが機体を傾け、敵の射撃を避ける。宙賊機は彼女を追って旋回した。その背後からネッサがレーザーを撃つ。推進器が火を噴き、敵機が回転を始めた。


「一機、撃墜!」


「追いすぎるな。前方の反応を見ろ」


イリヤの指示に、リンは進路を戻した。


宙賊機がミサイルを撃ってくる。


「ミサイル警報! 左から二発!」


ルイスが叫んだ。


「第一小隊、右へ回避。ノア、フレアを出せ!」


「了解!」


ノア機からフレアが放たれる。一発のミサイルは誘導を外れ、岩塊に衝突した。もう一発は味方機を追い続ける。エリサがレーザーを撃ち、味方機の手前で爆発させた。


爆風が機体を揺らした。


「損傷なし。助かった」


味方機の報告が入る。


「礼は後。まだ敵がいるわ」


エリサは機首を戻した。


一機の味方が敵のレーザーを受け、翼を失った。機体は姿勢を崩し、小惑星へ向かって流れていく。操縦者が脱出ポッドを射出したが、別の敵機がポッドへ照準を合わせた。


「ポッドが狙われてる!」


ノアが叫ぶ。


俺は機首を返し、敵機の進路へ割り込んだ。レーザーを撃つと、敵の射線がポッドから逸れた。ポッドは小惑星の陰へ流れていく。


「位置を記録。回収は後だ」


イリヤが言った。


初めのうち、戦闘は俺たちに有利だった。宙賊機は小惑星群の中で動きを制限され、隊形を組み直す余裕もない。電磁ミサイルを受けて動きを止められる機体、レーザーを浴びて砕ける機体が続いた。


その後方から、知らない戦闘機の編隊が現れた。


宙賊とは違う動きだった。二機一組で岩塊を使い、こちらの射線を避ける。味方が宙賊を追って隊形を乱した瞬間を狙い、別方向から攻撃してくる。


「新たな敵編隊! 宙賊機とは動きが違います!」


イーサンが報告した。


「傭兵か、用心棒だな」


イリヤが即座に判断する。


「第一旅団、警戒を上げろ。第二小隊は右の敵を引きつけろ。第三小隊は損傷機を援護。味方の間へ敵を入れるな!」


傭兵たちは宙賊機を盾に使い、こちらの電磁ミサイルが味方へ向かない位置を保った。電磁ミサイルを避けるために動いた敵を、別の傭兵がレーザーで援護する。


「敵二機、損傷機へ向かっています!」


ルイスが報告する。


「損傷機は小惑星の陰へ入れ。そこの小隊、敵の進路を変えろ!」


イリヤの指示で味方機が損傷機の前に出る。傭兵の一機が通常ミサイルを放った。狙いは損傷機だ。


「ミサイル接近!」


味方機が旋回したが、ミサイルは追いすがり、翼へ命中する。機体が爆発した。脱出ポッドは出なかった。


「味方一機、撃墜!」


イリヤがすぐに指示を出す。


「隊形を維持しろ。敵の追撃を止めろ!」


傭兵のレーザーが別の機体のコックピットを貫いた。機体は光を散らして爆発した。こちらも被害を免れてはいなかった。


「後方に二機! 片方は隊長機を狙っています!」


ルイスが叫ぶ。


「イリヤ、後方を頼む」


「了解。第一小隊はレン隊長を援護。第二小隊は右の傭兵を引きつけろ」


傭兵隊長機が俺へ通常ミサイルを撃つ。


「ロックオン警報! ミサイル一発!」


俺は機体を急上昇させ、小惑星の表面をかすめた。ミサイルは軌道を変えて追ってくる。右へ逃げれば味方と交差し、左には岩塊が迫る。


俺は機首を下げ、岩塊の割れ目へ滑り込んだ。


ミサイルは狭い隙間を曲がりきれず、岩肌へ衝突する。爆発の光を背に、俺は機体を反転させた。


傭兵隊長機は別の味方を狙おうとしていた。


「第一小隊、射線を作れ!」


エリサが正面へ回り、射線を作り敵の進路を狭める。敵が回避した瞬間、俺は機体を横滑りさせて至近距離へ入った。レーザーが敵の火器を焼き、次の一撃で推進器を損傷させる。


傭兵隊長機が姿勢を崩し、脱出ポッドを射出した。ポッドは小惑星群の外へ流れていく。


「敵隊長機、行動不能!」


「ポッドの位置を記録しろ。まだ戦闘中だ!」


傭兵団の連携が揺らいだ。


リンが敵を引きつけ、ネッサが逃げ道を塞ぐ。エリサは味方機を援護し、ノアは敵の位置を記録する。イーサンは電波と熱源を照合し、岩塊の陰の反応を見つけた。ルイスは味方の位置を確認しながら敵の進路を全体へ報告している。


「左のデブリ群から三機! こちらの後方を回ろうとしています!」


イーサンが報告する。


「第二小隊、外側へ出ろ。正面から受けるな。第一小隊は中央を割れ!」


傭兵の一機がルイスの機体を狙った。レーザーが左翼をかすめ、外装を削る。火器管制に警告が出た。


「ルイス、損傷は?」


「左翼の外装と火器管制に警告。操縦できます!」


「追撃をやめろ。エリサ、援護。ノアは敵の位置を報告しろ」


「了解!」


ルイスの機体が揺れる。それでも彼は隊形を離れず、周囲を見た。


「隊長、右の小隊が孤立しかけています。傭兵二機が後ろへ回っています!」


「イリヤ、聞いたな」


「第四小隊、進路を変えろ。外側へ出て挟まれるな。第三小隊、援護に入れ!」


ルイスの報告で、味方の隊形は崩れる前に修正された。


「ルイス、飛行を続けられるな?」


「はい。警告は残っていますが、操縦できます」


「異常が増えたらすぐ言え」


「了解です」


傭兵たちは最後まで抵抗した。通常ミサイルが機体を追い、レーザーが装甲を貫く。味方機が小惑星へ衝突して爆発し、別の機体はコックピットへの直撃で脱出ポッドも出せずに消えた。


レン飛行連隊でも、第三小隊の隊員一名が撃墜され、死亡。第五小隊では隊員の機体が通常ミサイルを受けて爆発し、ポッドは確認できなかった。第一小隊ではルイスの機体が軽く損傷したが、操縦者は無事だった。


「レン飛行連隊、二名未帰還。ポッド反応なし。ルイス機は軽度損傷、飛行可能です」


エリサの報告が通信に入った。


「記録しろ。残弾と他の損傷も確認。戦闘が終わったら、ポッドの反応を調べる」


傭兵の残りは三機だった。


「ルイス、前だけを見るな。ノア、右後方。イーサン、逃げる敵の進路を報告」


「敵一機、左の割れ目へ向かっています!」


「リン、右から押せ。ネッサは出口を塞げ。全機、隊形を保って包囲しろ!」


リンが敵を割れ目へ追い込む。ネッサが反対側から進路を塞いだ。逃げ場を失った傭兵へ、俺とエリサが射線を重ねる。敵機は爆発した。


残る二機は別方向へ逃げようとした。第五小隊がそのうち一機の進路を塞ぐ。傭兵が振り返りざまに撃ったレーザーが、第五小隊の機体をかすめた。


「第五小隊、一機損傷! 操縦者は無事!」


「隊形を崩すな。損傷機を小隊の内側へ入れろ!」


イリヤが指示する。


第五小隊は損傷機をかばいながら進路を整えた。傭兵は小惑星の外側へ逃げようとするが、他の機体が退路を塞ぐ。味方のレーザーが重なり、敵機は姿勢を崩して岩塊へ衝突した。


最後の一機はミサイルを撃ち、包囲を抜けようとした。


「ミサイル接近! 右から一発、第一小隊を追っています!」


ルイスが報告する。


「全機、散開。ノア、デコイ!」


ノアがデコイを放ち、ミサイルの誘導が逸れる。イリヤが撃ち抜いた。爆発に紛れて傭兵機が逃げようとしたが、マルクが進路を塞ぐ。


リンの銃口が光を放ち敵の翼を捉え、ネッサが推進器へ追撃を加えた。傭兵機は姿勢を崩し、回転しながら漂った。


「傭兵団、全機撃墜。敵機反応はありません」


イーサンが報告した。


俺は周囲を見渡した。破損した機体、漂う残骸、いくつもの脱出ポッド。生き残った者もいれば、戻らない者もいる。


「各小隊、損傷と残弾を報告。救助可能なポッドの位置を記録しろ。反応のない機体は未帰還として扱う」


イリヤは対要塞ミサイルの追跡情報と敵機の発進地点を照合した。


「基地の位置を確認。小惑星の裏側だ。電波源が複数ある。入り口も一つとは限らない」


画面に別々の小惑星の陰から立ち上がる反応が表示された。


「第一旅団は担当区域内の入口と揚陸艇の退路を押さえる。外周警護の部隊は配置につけ。侵入支援部隊は、白兵戦部隊と合流準備しろ」


第一旅団の一部は外周を警戒し、別の部隊は白兵戦部隊とともに複数の基地へ向かう。レン飛行連隊の五小隊は、一つの基地へまとまって向かうこととなる。


*


基地外部の戦闘終了から10分後、白兵戦専門の上陸部隊を乗せた揚陸艇が作戦区域へ到着した。


揚陸艇は複数の隊列に分かれ、それぞれ違う基地の発艦口へ向かう。入口に近づいた艇の装甲に、銃弾が当たって火花を散らした。


「第一揚陸艇、第一基地の発艦口へ接近」


「第二艇、第二基地の入口を確認」


「第三艇、第三基地の割れ目へ進入します」


揚陸艇は小惑星の陰へ進んでいく。俺たちは外周から航路を守り、基地の外へ出る敵機がいないかを確認した。


「第一艇、発艦口から内部へ侵入。入口付近に敵影あり」


「第二艇、内部で銃撃を受けています。入口を確保できていない」


「第三艇、侵入成功。通路内で敵と接触」


通信に報告が相次ぐ。各揚陸艇は基地の内部へ入ることには成功していた。しかし、入口の確保をめぐって激しい攻防が始まっている。


「第一基地、入口の左側に敵。複数を確認!」


「第二基地、艇の外装に損傷。白兵戦部隊が入口手前で応戦中!」


「第三基地、敵が発艦口から出てきます。迎撃を要請!」


イリヤが第一旅団全体へ指示を飛ばす。


「外周担当は揚陸艇の退路を確保しつつ残敵掃討!侵入支援部隊は入口付近の敵を押さえろ。各隊、担当地点を離れるな!」


第一基地の入口では、白兵戦部隊が揚陸艇から降りていた。先頭の隊員が壁際に身を寄せ、後続を通すために銃を構える。入口の奥から銃弾が連続して飛び、装甲壁に当たって火花を散らした。


「入口に敵の銃座を確認! 正面から進めません!」


白兵戦部隊の声が通信に入る。


「左の通路から回り込めるか?」


「確認中です。左側にも射線があります!」


揚陸艇は入口の内側で停止したまま、退路を塞がれないよう姿勢を保っていた。兵士たちは艇の陰を使いながら、少しずつ入口の左右へ散開する。だが、奥から撃たれるたびに進む足が止まった。


一人が入口の縁まで駆けた。敵の銃撃が床を削り、彼は後ろへ身を引く。別の隊員が援護射撃を加えると、その隙に二人が先へ進んだ。しかし、すぐに入口の反対側から別の銃撃が浴びせられ、二人は壁際に伏せる。


「負傷者一名! 揚陸艇まで搬送します!」


「担架を出せ。入口の正面を空けるな!」


報告が交錯する。


第二基地では、揚陸艇の側面に敵弾が当たり、外装がへこんでいた。艇内の隊員が全員降りきる前に、入口の奥から銃撃が始まったという。


「艇のハッチを開いたままにできません。後続が降りられない!」


「揚陸艇は入口から少し下がれ。外周の部隊が敵機を抑えている。降りられる者から壁沿いに進め!」


「了解。三名が降りました。残りは艇内で待機しています」


第三基地では、入口から宙賊機が一機飛び出してきた。外周を警戒していた飛行部隊が迎撃に向かう。機体は入口の前で旋回し、揚陸艇へ向けて火器を構えた。


「敵機、発艦口から出てきます!」


「入口へ接近させるな。外周担当、迎撃しろ!」


第一旅団の機体が敵機を追い、揚陸艇の上空から引き離す。だが、入口の内側からはまだ銃撃が続いていた。


それぞれの基地で、白兵戦部隊は入口を押さえようと前進し、内部の敵はそれを押し戻そうとする。撃たれて倒れる者、仲間に支えられて引き戻される者、装備を落としても入口の外まで退けない者。揚陸艇は兵士を降ろし続けるが、入口の確保は簡単ではなかった。


「第一基地、入口の奥から新たな敵が出てきます!」


「押し返される! 援護を頼む!」


「第四基地、通路の一部へ進みましたが、別の入口から銃撃を受けています!」


「負傷者二名。どちらも意識あり!」


イリヤは複数の通信を聞き分け、外周と侵入支援の部隊へ指示を振り分けていた。


「外周担当は敵残党を揚陸艇から遠ざけろ。入口を支援する部隊は、白兵戦部隊の位置を確認してから攻撃しろ。誤射するな!」


俺はレン飛行連隊の五小隊を見た。


第一小隊ではルイスが損傷した左翼を確認している。飛行と通信に問題はない。第二小隊、第三小隊、第四小隊、第五小隊も編隊を維持していた。第五小隊には損傷機が一機あるが、操縦者は無事で、隊形の内側を飛んでいる。


俺たちの担当基地では、揚陸艇が入口の内側まで進入していた。白兵戦部隊が艇から降りて入口の両側へ展開する。だが、奥の敵は射撃を止めない。先頭の隊員は遮蔽物に身を隠し、後続を通す隙をうかがっていた。


「入口の正面、敵の射線が集中しています」


ノアが報告する。


「左側の壁に銃座らしき反応。右の通路にも動きがあります」


「イリヤ、聞いたな」


「確認した。第一旅団の侵入支援部隊へ共有する」


ルイスは損傷した火器管制の表示を見ながら、敵の射線を確かめていた。


「隊長、左側の銃撃は一定の間隔です。撃ち終わりに短い間があります。右の反応はその間に動いています」


「分かった。見えた事実だけを共有しろ。撃つ場所はこちらで決める」


「了解です」


外周の警戒部隊から、揚陸艇の退路が確保されたとの報告が入った。一方で、複数の入口ではまだ戦闘が続いている。白兵戦部隊が突破した基地も、入口から押し返されている基地もある。制圧には至っていない。


俺は第一旅団全体への通信を開いた。


侵入予定の部隊は、白兵戦部隊が入口付近で交戦中の各基地へ進む。外周の警護部隊は残り、揚陸艇と退路を守る。レン飛行連隊は五小隊全員で、指定された一つの基地へまとまって入る。


「第一旅団、侵入予定の部隊へ。白兵戦部隊と合流し、基地へ侵入開始!」


俺はレン飛行連隊へ続けた。


「全機、俺に続け。全員で同じ基地へ入る。入口の白兵戦部隊を援護するぞ!」


五小隊が一つの編隊を保ったまま、敵基地の入り口へ続く。入口では白兵戦部隊が銃撃を受けながら、前進の機会を待っていた。


俺たちは隊形を崩さず、その基地の内部へ進入していった。

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