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「死神の家なんて、どんなジメジメした場所かと思ってたけど、結構いいとこ住んでんじゃん」
ヴィーリオの家は市外から離れた深い森の中にあった。木々の隙間からは木漏れ日が降り注ぎ、サラサラと小さな川も流れている。周りには建物なんてなくて、少々不便そうではあるが、自然豊かな場所は確かにいい場所であろう。
「お前は今まで狭い世界で生きすぎたんだよ」
セラは珍しくヴィーリオにからかわれて驚いた顔をした。その後、彼の肩を数回ポコポコ殴る。
「急に元気になったな……」
呆れたような口調でも、少しだけ、ほんの少しだけ、ヴィーリオは嬉しかったのだ。彼がこんな感情を持ったことは初めてだったので、そのことを知ることはないが。
キィィーーと甲高い音を立てながらヴィーリオの家の扉は開く。中の様子は、片付いているが持っている家具の趣味は全くバラバラだった。
「……誰かに家具、押し付けられた?」
「ワイドに……」
ヴィーリオは言いにくそうにする。セラもつられて気まずい顔をした。
「いらないなら、捨てればいいじゃん」
セラに言われた後、ヴィーリオは頬をかいて考えるフリをする。
「……もらったものだから」
「はー」と音を立ててセラは大きなため息をついた。何か変なことを言ったのかと、ヴィーリオは不安になる。
「そうだね、あんたはそんなやつだ」
「降りる」といって、セラはヴィーリオの腕から抜け出した。そして、食卓につく。
「僕、お腹すいた」
「おぉ……」
彼の気まぐれさに引きはするものの嫌な気持ちにはならなかった。むしろ、そういうところを面白く感じる。
ヴィーリオにとって食事は嗜好品でしかなく、彼の家にはまともな食材が揃っていない。彼は仕方なくケーキと紅茶を出した。
「いいね、お祝いみたいで」
セラはケーキに喜んでいるらしい。そういうところはまだ子供だと思う。
「なんのお祝いだ?」
「僕たちの新しい人生に!」
「乾杯!」と2人はティーカップを合わせた。カチンと陶器の音が鈍く響き、本当に新しいことが始まったかのような気分になる。
(こいつは俺に殺されるんだけどな)
紅茶を飲みつつ、セラを見つめた。彼は優雅に紅茶を飲み、これまた優雅にケーキを食べる。まるで、ここにきた目的を忘れているみたいだ。ここはひとつ、この幼い愚か者に釘を刺しておかなくては、そう思うと口は動いた。
「俺はお前を殺すんだぞ、それを忘れるなよ」
「わかってるよ」
余裕綽々で答える。死ぬのが怖くないのだろうか。特に、人間のように寿命の短いものは死を異常に怖がる。彼は幼くして命を落とすことが決まっているのに、怖がらないのが不思議で仕方ない。
「なんでお前は死ぬのを怖がらない?」
セラはその質問に不思議そうな顔をした。その顔には「そんなこともわからないのか」という軽蔑のニュアンスが含まれている気がする。
「あんたに殺されるからだよ」
「俺に……?」
セラにはヴィーリオの疑問を解消する気はないらしく、微笑んだ後ケーキを口に入れた。
(こいつはそんなに宝石になりたいのか……?)
わからないが、自分にできることはそれくらいだろう。確かに実りのない人生を生きてそうだもんな、と納得しヴィーリオは頷いた。
「もう食べちゃったよ」
「そうか」
セラはワンホールをほとんど1人で食べ切った。虚弱な体質とは思えないくらい、食欲旺盛である。
「今までも、こんなに食べられたのか?」
「そりゃあね」
セラは自慢げに胸を張る。ヴィーリオの頭には、一つの疑問が浮かんだ。そして、それをかき消した。
(知らないほうがいいこともあるか)




