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C’est la vie!!  作者: 日々桜香
第1章 君と出会い新たな世界が広がる
5/18

5

 今日もヴィーリオはセラの家まできた。メイドも、彼のことを客人のように扱う。試しにこっそり入ってみるか、とも思うが彼にそんな度胸はない。そして、いつものように彼にせがまれて宝石を見せる。


「これはどんな人だった?」

「お前の前に殺したやつだ。獣人だな」

「なんだ、結構覚えてるじゃん」

 ヴィーリオはムッとする。


「たまたまだ。最近のことだから忘れることないだろ!」

 セラは一切怯まずにヴィーリオに向き合う。すると、彼の方が先に気まずくなるのだった。


「ヴィーリオは偉いね。僕なんて、何にも覚えてない。大切なものなんて何もない」

「……記憶喪失なのか?」

「いいや、そういう人間なんだ」

 にこりと苦しそうに笑った。人の感情の機微に鈍いヴィーリオにだってわかるほどに、セラは何かを抱えているのだろう。


「いいんじゃね?俺だって、死神になる前何してたか覚えてない」

「結構生きてそうなのに?」

「そこまで老けてねーよ」

 ヴィーリオは自分の顔を触って形を確かめる。


 (何か、自分の姿を映すものがあればいいのに。そしたら、俺の宝石だってわかるのに)

 彼は変わり者なのでそんなことを考える。もし、そんなものがあれば自分の容姿を強く意識してしまうだろう。それは生きやすいのだろうか。ヴィーリオにはよくわからなかった。


「死神なんて、そういうもんだ。自分が何年生きてるかも、なんで生きてるかもわからない」

 ヴィーリオに言われてセラは笑った。それはもう、嬉しそうに。

「僕以外にも、そんな人がいるなら嬉しい」

 彼の赤い頬はさらに赤くなっていた。きっと、喜んだことで熱が上がったのだろう。


「大丈夫か?」

「大丈夫」

 セラはふと悲しそうな顔になる。そうされるとヴィーリオはどうしていいかわからず、オロオロしているだけだ。


「どうしていいのかわからないなら、手でも握ってよ」

 ヴィーリオは確認するように優しく彼の手に触れた後、確信したように手を握った。

「また死ななかったね?」

 セラに見上げられてヴィーリオの心臓は跳ねた。彼は幼さと特有の色気が混じって、なんだか少しだけ扇状的なのである。


「早く宝石にしたい……」

 ヴィーリオは呟いた。きっと、彼の瞳の美しさに胸が躍ったのだ。そう思わないとダメなのだ。だって彼を殺すのは、もう二度と会えないようにするのは、自分なのだから。


「触れる場所を変えてみるとか?」

 セラは揶揄うように笑った。

「……例えば?」


「こっち……」

 彼が指したのは、自らの唇だった。ヴィーリオは赤くなりながらもそこから目が離せない。


「おいで」

 セラは女神のような微笑みをヴィーリオに向け、唇を尖らせる。


 ヴィーリオも覚悟を決め、自らの顔を近づけた。顔は熱いし、頭は混乱して痛い。けれど体はまっすぐそこに向かっている。


 2人の顔と顔が極限まで近づき、ついに触れ合った。


 まつ毛の当たる感覚がくすぐったい。ほのかに触れた後、すぐに顔を離した。


 セラは下を向いて唇を手で押さえている。ヴィーリオが謝ろうとした時だった。


「えー?手でって意味だったんだけど?」

 いつものようにセラは揶揄うように言った。それがヴィーリオの心をめちゃくちゃにする。


「お、お前!!!」

「ハハハハハ」

 作戦が成功して嬉しいのか、セラは笑った。それはもう大いに。


「いいよ、気にしないで。」

「気にするかよ!」


 ブチギレるヴィーリオを横目にセラは急に真顔になった。


「もしさ、本当は気にして欲しいって言ったら?」

 彼にしては珍しく覇気のない声。

「あ゙ぁ゙?」

 それに気づいてはいたが、また揶揄われているのかと思ってしまった。そして、心のままイラつきをぶつけてしまう。


「なんでもない」

 セラはまた笑った。今度は諦めたみたいな笑い方だ。


 ヴィーリオはその顔が気に入らなかった。だから、ローブを外してセラの頭を撫でた。

「……死神は、ローブを脱ぐと力がなくなる」


 

 

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