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今から数百年前——
新米死神のヴィーリオは仕事に向かっていた。トボトボと歩く姿はまさに死神であり、通りすがりの人は皆、振り返る。そして、親指を隠した。
彼はそんな様子を見ても動じない。もう、慣れたことなのだ。
「死神」は正式な職業として存在はしているものの、忌み嫌われることに変わりはない。死は誰にでも平等に訪れるのに、それが近づくと嫌がるのはどうしてだろう。ヴィーリオはわからない。けれど、考えることをやめはしなかった。
今日の仕事場は、深い森の中。その中に、一箇所だけ日差しのよく当たる場所がある。そこで、ガラスケースに入れられたまま瞳を閉じている少女。その少女が今日、手を下す相手だった。
少女の周りを七人の小人が取り囲んでいる。
ヴィーリオの姿をみた小人たちは、諦めたようにガラスケースを外す。
ヴィーリオを睨むもの、祈りを捧げるもの、さまざまではあるがこちらに感情を向けてくるのは筋違いである。
ヴィーリオは淡々と手を握った。その瞬間、彼女は目を覚ました。可愛らしいピンク色。彼女の頬の色とそっくりだ。
小人たちは感嘆の声を上げる。しかし、もう遅い。彼女には痣が出ていて、ヴィーリオが手を握ったのだから。
「あなたが、私の王子様?」
「違う」
ヴィーリオは冷たく答える。
「それでもいいの、好きよ。愛してるわ」
「お前はもう死ぬ」
彼女の体からはピンク色のモヤが出てきた。ヴィーリオはそれを刈り取る。その瞬間、彼女は微笑んだ。
彼女の頬のピンク色は消え、残っているのはヴィーリオの手元にある宝石のピンクだけ。
「あぁ、どうしてこんなことに……」
小人たちはおめおめと泣いた。それがなんだか心に響いて、せめてもの証にと、ヴィーリオは宝石を八つに割った。
7つは小人に、一つはもちろん自分に。こんな時でもコレクションはやめられない。
「これはあの子の魂だ。貰っとけ」
ヴィーリオは小人たちに見つめられる。そうされるとどうしていいかわからなくて、足早に去るしかなかった——
「これがこの宝石の話だ」
「なんだ、覚えてるのもあるんじゃん」
愛おしそうにその宝石をいじるヴィーリオをセラは何か納得したように見つめる。
「もしかしてさ、その後小人に追いかけられたりした?」
「そうだ、何日か付き纏われた」
セラは大いに笑った。
「王子様だって、勘違いされたんでしょ?」
「……」
ヴィーリオは黙りこくったまま、セラを睨む。それがもう、答えだった。
「でも知らなかったな、死神にも感情があるなんて」
「死神だって、元は生きてた」
「へー」
この世界に生きているものたちは、死神について知らなすぎる。誰だって、死んだら死神になる可能性があるというのに。
「お前ももしかしたら死神になるかもな、性格悪いし」
「そうかなー?あんたはいい奴だと思うよ」
ヴィーリオは照れてしまって何も言えない。そんな様子をセラは面白そうに見つめている。
「あんたの名前は?」
「……ヴィーリオ」
名前を教えるのなんて初めてだった。これから殺す相手だというのに、なぜかセラには冷たくできない。きっと、彼の性格が悪いせいだろう。そして、自分は彼の手のひらの上で踊らされているのだろう。それでもいいと思った。だって、この関係性の幕を引くのは自分なのだから。




