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ついに、この時が来てしまった。
セラはここしばらく、ベッドから起き上がることができなくなってしまっている。しかも、腕には痣がある。
「ヴィーリオが殺してくれるなら嬉しいよ」
「うん」
ヴィーリオは、誰よりも優しく、彼の手を握った。セラは笑う。その姿が消えないうちに、最後のキスをした。
「Je t'aime.ヴィーリオ」
「俺も愛してる、セラ」
2人が最後に交わした会話。今回は、きちんとセラを殺せた。
彼の魂は、やはり彼の瞳のように透明だった。それを固めて宝石にすると、とりどりの光を反射するプリズムのようになった。
「愛してるよ、セラ」
ヴィーリオはその宝石に口付けをした後、生まれて初めて涙を流した。
たった1人の人間。ただ、それを殺しただけなのに、いつも通りの仕事をしただけなのに、こんなに苦しいのは、彼を愛しているからだろう。そうだ、嘘偽りなく彼を愛していて、彼はもう自分の一部だったのだ。愛するということはそういうことであろう。誰だって、自分の一部を失うと、その喪失感にやるせなさを感じる。
「綺麗だ、お前の宝石は綺麗だ」
ヴィーリオはそのまま、久々に寝ないまま一夜を明かした。
いくつも朝が来たって、春がきたってセラは現れない。いくつもの宝石を集めてもあれより綺麗なものはない。次々に咲く花だって、振り返る気にもならない。それは、彼が心の中にいるから。
遠い国に、こんな詩があったことを思い出す。何かに共感したくなるくらい、心は揺れていた。
「ヴィーリオ、だから情が湧いたら辛いって言っただろ?」
「でも、お前が一緒に住めって言わなければ……」
ワイドは何も言わない。ただ、彼の頭を撫でただけだ。
「料理つくてあげよっか?」
「いらん」
彼なりに、慰めてくれようとしたのだろう。その気持ちは、とても暖かい。
「ありがとう、ワイド」
「わー素直だー」
茶化した後、ワイドははにかんだ。
「きっと、いいことあるよ。彼にだって一生会えないわけじゃない」
「うん」
彼に会う方法はある。それは、ヴィーリオが死ぬ時だ。死は平等に訪れる。それは、死神にだって。
次回、最終回です!




