5
ある晴れた日、ヴィーリオは庭をいじっていた。今年は試しに花を植えてみたのだ。とりどりと咲く花は心を笑わせる。ヴィーリオにだって、こんな気持ちがあるのだ。
「何この花?」
「植えたんだ」
セラは後ろから抱きついてきた。ヴィーリオが振り向いた時、2人は「チュ」っと軽くキスをした。
「綺麗だろ?」
なんてことないように会話を続ける。これが最近の2人の日常だった。
「Cette fleur est belle.」
「そうだな」
しばらくじゃれあった後、ヴィーリオはいくつか花を抜き取った。
「何するの?」
「花冠」
出来上がった花冠はセラの頭に乗せられた。
「似合わねーな」
「若い頃なら様になってたよ」
はにかむセラの目尻には若干の皺が寄っている。
「今でも可愛いよ」
ヴィーリオはセラのおでこに口付けた。
「ヴィーリオは変わらないね」
セラもお返しに口付ける。
「……今日は先に風呂に入らせてくれ」
「一緒に入らないの?」
顔を赤くしながらヴィーリオは頷いた。
______________
長めのお風呂から出た後、ヴィーリオはやはり顔を赤くしていた。
「のぼせたんじゃない?」
「そうじゃないから、早く入ってこい」
ヴィーリオに急かされて、セラはセカセカとお風呂に入る。お風呂から上がった後、ベッドルームでヴィーリオは待ち受けていた。ベッドの上には、薔薇の花びら。
「誕生日おめでとう、セラ」
「あぁ……」
あまりの光景に、セラは言葉を失ってしまう。ヴィーリオはほとんど服を着ていなかった。それはつまり、そういうことだろう。
「……いいの?」
「いいからしてる」
そのまま、2人はベッドに倒れ込んだ。子供がいたずらするみたいに服を脱いだ後、真剣なキスをする。
この晩は、2人が一つになった初めての日だった。
____________
「おはよう」
「うぅん……」
今日は、ヴィーリオの方が後に起きる。いつもは、何があってもセラが後に起きるのに。
「体、痛くない?」
「痛いに決まってんだろ」
ヴィーリオは自分の、噛み跡だらけの体を見た。痛みの原因はそれだけじゃないが。
「今日は僕が運んであげるよ。全部僕がやる」
「当たり前だ」
悪態をつきながら、セラの背中を見つめる。引っ掻き傷の残るそれは、恥ずかしくもあり頼もしくもある。その全ては、「愛おしい」という感情で完結するのだろう。
セラは決して、「好きだ」とも、「愛している」とも言わない。けれど彼が自分のことをどう思っているかくらいはわかる。
それに応えてよかった。この人生が、彼でいっぱいになるなら嬉しい。できれば、彼と一生一緒にいたい。けれど、それは叶わないことなのだ。だって、セラは人間でヴィーリオは死神なのだから。




