4
暑い夏も、寒い冬も、2人は一緒に過ごした。そうしているうちにセラは成長し、ついにヴィーリオよりも大きくなってしまった。
「もう、空は飛べないな」
「僕が苦しくなったらいつでも飛んでやるって言ってたのは誰だっけ?」
ヴィーリオを揶揄うそんな声も、もうすっかり大人の男のものだ。けれど、表情と口ぶりは相変わらずで、あのころの幼さを残している。
「いつでも飛んでやるさ。それは本当だ」
ニヤリと笑った。セラには嘘をつきたくない。彼が望むことならなんでもしてあげたいのだ。
「そう、それならいいんだ……」
______________
もう何回目かの誕生日、セラはあるお願いをした。
——ヴィーリオとキスができますように
彼の最大の願いはそれだった。きっと、ヴィーリオならしてくれるだろう。でも、それではダメなのだ。本当なら、心と心がつながった状態でしたい。
(ヴィーリオの気持ちと、僕の気持ちは違う)
なんだか無性にモヤモヤして、苦しくなった。その時、あの日の会話を思い出す。
——お前が苦しくなったらいつでも飛んでやる
(そうだ、苦しい時は、ヴィーリオに『空を飛びたい』っていえばいいんだ。そうしたら、彼は気づいてくれるだろうか。)
セラはヴィーリオにお願いした。彼はもちろん了承する。いつものニヤニヤした笑顔を浮かべながら。
「なんだ、セラ?苦しくなったのか?」
ヴィーリオはセラを抱き上げたまま聞いてくる。と言っても、体はずいぶんはみ出ているが。
「そうだね、苦しくなったよ」
セラに見つめられ、ヴィーリオは片方の眉毛を上げた。
「俺が解決してやろうか?」
(これはチャンスだ)
そう思い、セラはヴィーリオから顔を背けた。全く顔は全く赤くなってはいないが、ヴィーリオには恥じらっているように見えるだろう。
「僕、キスしたことないんだ……」
セラは悲しそうに、今にも死にそうな感じを装いながら言った。
「昔しただろ」
ヴィーリオの指摘に、セラは思わず舌打ちする。
(こんなことだけ覚えてるんだ)
「僕は覚えてないよ」
セラがいうと、ヴィーリオは悲しそうな顔で一言「そうか」と呟いただけだった。
(なんで悲しそうにすんの?)
セラにはわからなかった。理解するにはあまりにも、2人の距離は近すぎたのだろう。
ヴィーリオが飛び立ち、2人の体はふわりと浮かぶ。
「まどろっこしいな」
呟いて、セラはヴィーリオの唇に口をくっつけた。ほんの一瞬。けれど、その柔らかさをセラが忘れることはない。
「お前!!」
ヴィーリオの顔は途端に赤くなる。
「何?昔したんだからいいでしょ?」
顔を赤くさせた後、急に青い顔になって、ヴィーリオは口を開く。
「……そういうのは、好きなやつとするんだ」
セラはその言葉に無性にムカムカして、たまらなくなって今度は彼の首に腕を回し、深く口付けた。
「ま、」
ヴィーリオが言いかけてはセラが口を塞ぐ。どうせ許されないなら、好きにさせて欲しい。
2人は空から、家の庭に降りた。こんな冷静さがまだ残っているのも憎い。セラはさらに口付けようとして、口を開けた。
その時、ヴィーリオがセラに軽くキスをした。
2回目の、ヴィーリオからのキス。
「空ではやるな」
それだけ、注意してヴィーリオは家に入っていった。セラは腰が抜けて立てない。
——それって、どういうこと?
残り3話です!




