↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C’est la vie!!  作者: 日々桜香
第3章 私を知り、あなたを知る
20/27

6

 今日の仕事の日、ヴィーリオはあることを決めていた。それは、殺す相手の話を聞くこと。そうすれば、何かがわかる気がした。

 この日の仕事場は森の中、口の大きなお婆さん相手だった。


「どうしてお前の口はこんなに大きい」

「それは……お前を食べるためだー!!!」

 飛び出してきたのは、おばあさんの格好をした、狼だった。


「そうか、お前は今まで何人の人間を食べた」

「覚えてるわけないだろ」

 不貞腐れたように狼は答える。ヴィーリオもそこまで興味があるわけでもないし、責める気もないのでとりあえず彼の手を握った。


「そういう人生だったんだろうな」

 動物相手に「人生」という言葉を使うのもおかしいが、それ以外の言葉を知らない。

 そのまま宝石を手に入れた。キラキラと輝く赤い宝石。彼はきっと、この宝石みたいな血に塗れた人生を生きてきたのだろう。


 セラは、どうだったのだろうか。彼はベッドの上で過ごす以外の日々があったのだろうか。もしかしたら彼には人生が、思い出がなかったのだろうか——


 彼と、他の人とを分けるものがそれなのだったらきっと、死神が刈り取るものは——


 ヴィーリオは頭をふった。考えたくなかった。そうすると、いまの日々を否定することになる。もし、一緒に過ごすことで彼に思い出ができてしまったら。そうすることで、もしセラが死んでしまったら。


 それでいいじゃないか。綺麗な宝石が手に入るのだから。けれど、けれど。その後の生き方がわからない。


 そのとき気づいてしまった。


 いつだって、彼の顔を思い浮かべる。怒った顔も、笑った顔も全部が網膜に焼き付いている。いつだって、彼の声が聞こえる。眠そうな声も、機嫌のいい声も全部が鼓膜にこびりついている。

 

 ——俺は、あいつを、セラを、愛している。


 もう、離れることなんてできないのだ。始めは、ただの宝石だったのに。1人の人間だと知ってからがおかしくなった。彼が唯一無二になった。


 悔しいけれど、この気持ちをごまかすことなんてできない。彼が死ぬまでの時間で、彼をもっと知ろう。「愛してる」なんて言えなくても、そばにいよう。


 自分ができることはこれだけだった。


 アダムとイブだって、愛したことを後悔はしていないだろう。


 早く帰ろう。そして、長く一緒にいよう。彼が死ぬ前に、もっとよく知ろう。


 

第3章完です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。