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今日の仕事の日、ヴィーリオはあることを決めていた。それは、殺す相手の話を聞くこと。そうすれば、何かがわかる気がした。
この日の仕事場は森の中、口の大きなお婆さん相手だった。
「どうしてお前の口はこんなに大きい」
「それは……お前を食べるためだー!!!」
飛び出してきたのは、おばあさんの格好をした、狼だった。
「そうか、お前は今まで何人の人間を食べた」
「覚えてるわけないだろ」
不貞腐れたように狼は答える。ヴィーリオもそこまで興味があるわけでもないし、責める気もないのでとりあえず彼の手を握った。
「そういう人生だったんだろうな」
動物相手に「人生」という言葉を使うのもおかしいが、それ以外の言葉を知らない。
そのまま宝石を手に入れた。キラキラと輝く赤い宝石。彼はきっと、この宝石みたいな血に塗れた人生を生きてきたのだろう。
セラは、どうだったのだろうか。彼はベッドの上で過ごす以外の日々があったのだろうか。もしかしたら彼には人生が、思い出がなかったのだろうか——
彼と、他の人とを分けるものがそれなのだったらきっと、死神が刈り取るものは——
ヴィーリオは頭をふった。考えたくなかった。そうすると、いまの日々を否定することになる。もし、一緒に過ごすことで彼に思い出ができてしまったら。そうすることで、もしセラが死んでしまったら。
それでいいじゃないか。綺麗な宝石が手に入るのだから。けれど、けれど。その後の生き方がわからない。
そのとき気づいてしまった。
いつだって、彼の顔を思い浮かべる。怒った顔も、笑った顔も全部が網膜に焼き付いている。いつだって、彼の声が聞こえる。眠そうな声も、機嫌のいい声も全部が鼓膜にこびりついている。
——俺は、あいつを、セラを、愛している。
もう、離れることなんてできないのだ。始めは、ただの宝石だったのに。1人の人間だと知ってからがおかしくなった。彼が唯一無二になった。
悔しいけれど、この気持ちをごまかすことなんてできない。彼が死ぬまでの時間で、彼をもっと知ろう。「愛してる」なんて言えなくても、そばにいよう。
自分ができることはこれだけだった。
アダムとイブだって、愛したことを後悔はしていないだろう。
早く帰ろう。そして、長く一緒にいよう。彼が死ぬ前に、もっとよく知ろう。
第3章完です!




