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ヴィーリオが2人の家に帰り、寝室に行くとまだセラはスヨスヨと寝ていた。セラのさらさらとした髪を手櫛ですくうと髪はすぐに指の間を滑り落ちる。
早く目を覚まして欲しかった。その瞳を見たい。そして、色がないことに、透明なことに安心したい。
ヴィーリオの願いは以外とすぐに叶った。「うぅん」と声をあげながら、セラが目を覚ましたのである。
「おはよう」と、ヴィーリオが微笑むとセラは安心したように彼の手を頬に当てる。ヴィーリオはそれが憎くて、少しだけ力を入れて引っ張ってみた。すると、セラの眉間には皺が寄りきちんと目を覚ます。
「おはよーう」
寝起きのガサガサとした声。彼は目をこすっていて、瞳の色がわからない。
ヴィーリオはその手を絡め取り、瞳を覗き込んだ。セラは驚いて目を見開く。彼の瞳は、やはり透明だった。
「よかった……」
一息ついた後、ハッとする。そして、視線を遠くにおきながら手を離した。
「……なに?」
「いや、なんでもない」
セラには、話さないでおこう。彼はきっと、ショックを受けるだろう。そうなったら、慰めかたがわからない。
「朝ごはんは、何が食べたい?」
「うーん?ハーブティーは飲みたいよね」
言いながら、セラは腕をまくった。ヴィーリオも日課の、痣のチェックをしようと彼の腕を見た。しかし、腕はどこを見ても真っ白だった。
「お前、痣……!」
ヴィーリオの言葉に、セラも自らの痣を探した。結局、服まで脱いでも痣は見つからない。
「なんで……?」
セラにもわからないみたいで、2人はオロオロとしながら何度も腕を見た。
「ちょっと、ワイドの所いくぞ!」
「う、うん」
急いで飛び出し、2人は再びワイドの家まで走った。
ワイドは、庭掃除をしていた。ただならぬ様子で走ってくる2人をみて、目を丸くする。
「どうしたの?」
「こいつの、セラの、痣が消えた」
ワイドはただでさえ丸くなっていた目をまた大きく見開き、楕円形に変える。
「どういうこと?」
「そのままの意味だよ」
とりあえず、三人は家の中に入った。そして、ワイドは死神のローブを羽織り、セラに触れる。やはり、彼はなんともない。冷静になるために「フー」と息を吐き、ワイドはどこかに行ってしまった。帰ってきた彼は、何やら分厚いノートを手にしている。
「これ、死神が使う死期のわかるノートなんだけど……」
ヴィーリオが初めにセラの元を訪れた日、つまり彼の本来の死期に彼の名前はなかった。
「死期が伸びた……?」
「そうだね……」
信じられないことだが、そうとしか思えなかった。
「こんなことは前にも?」
「いや、ない。僕の知る限りね」
普段ヘラヘラしているワイドの眉間にはシワがよっている。それくらいの出来事なのだろうが、ヴィーリオにはいまいちことの重大さがわからない。
「じゃあ、まだヴィーリオと一緒にいれるってこと?」
「……そうだね」
ワイドはローブを脱いで、セラの頭を撫でた。セラは恥ずかしそうに肩を縮める。
「……君、ことの重大さをわかってる?」
セラに聞こえないよう、低い声でヴィーリオに聞いてきた。ヴィーリオはコクコクと何度も頷く。
「これ、ほかの人にバラしちゃダメだよ。死期がずれるなんて知られたら、死神の仕事がなくなる」
ヴィーリオはまた、コクコクと頷いた。
——死期がずれる
死神が刈り取るのは、魂だと聞いた。体から魂が剥がれる補助を死神がするのだ。それだというのに、「死期がずれる」だなんて。本当に死神が刈り取っているものはなんなのだろう。考えて、やめた。考えてしまうと、セラを殺すための答えが出てしまうから。




