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C’est la vie!!  作者: 日々桜香
第3章 私を知り、あなたを知る
16/26

2

「なんだったの?」

「なんでもない」

 ヴィーリオはあまりぶっきらぼうに聞こえないように、なるべく優しく答えた。


「そう……」

 その意図が伝わったのか、セラは追求してこない。


「とりあえず、今日は寝よう。またあしただ」

 落ち着いて話した。そうすれば、彼も納得してくれると思ったからだ。

「えー?今じゃだめ?」

「ダメだ」


 ヴィーリオはセラを布団にくるみ、トントンと手で叩いて寝かしつけた。こうしていると、本当に子供だと感じる。


「はー」と一息吐いて、ヴィーリオも眠る。この日、彼は不思議な夢を見た。


 自分の右手にあるあの、特有の痣。ベッドにはピンク色の巻き毛の男が座っている。

「起きた?」

「寝てる」


 これは、自分の声だろうか?何と無く幼い気がする。


「君の痣、やっぱり薄くなってきてる」

「そうか?」


 視線は右手に移る。確かに、痣は薄くなっている気もする。けれど、それは何を表すのだろうか。彼にはそれがわからない。


「はー、なんで殺せないのやら」

 ピンク髪の男はため息を着き、彼に手を振った。これは「おやすみ」の合図だ。彼はそのまま眠った。

 ——明日こそはそは死ねますように

 そんなことを願いながら。


 ヴィーリオは目が覚めた。いつもなら、鳥たちの鳴き声で起きるところを、今日はカエルの合唱で起きてしまった。外はほのかに薄暗くて、見る者を不安にさせる雰囲気がある。


 隣に眠る、少年の頬に口づけをしてみる。最近ではすっかりそれが癖になってしまっていた。口付けると彼は、くすぐったそうに笑う。その反応がおかしくてやめられないのだ。


「おはよう、セラ」


 この時のヴィーリオの声はいつもの何億倍も優しい。朝にはきっと、人を素直にさせる魔法があるのだ。

 

 ヴィーリオは立ち上がり、身支度をする。その間、昨日のワイドの言葉を考えてみた。

 ——あの子は死を受け入れてない。だから殺せなかった。逆に、君といることで生きたいと願うようになったんだ


「俺といることで、生きたくなった」

 確かに、セラはよく未来の約束をするようになった。

「明日、これを食べよう」「次はこれをしよう」といった風に、なんてことないも。けれど、彼はもうすぐ死ぬのだ。それは決まっている。それを、個人の意志だけで変えられるのなら「運命」や「死期」なんてくだらない。死神の存在意義がなくなるだろう。


 (そういえば、俺は死神について知らないな)

 ヴィーリオは気づいたら死神で、気づいたら仕事をしていた。死神になる前、つまり死ぬ前は何をしていたのだろうか。


「あいつに聞くしかないのかーー!!!」

 あいつとは、ワイドのことである。正直嫌だが、死神の中で彼以外と話したことなんてなかった。知らない死神は怖い。


 そうと決まれば行動あるのみ。彼もこちらのことなんてお構いなしなので、こちらも構いはしない。

 セラを起こさないように静かに家を抜き出し、ワイドの家まで歩く。


 彼の家はなかなかの近所なので少し歩いただけで到着した。


「おい、ワイド!起きてるか?」

 これは確認ではなく、起きろという意味である。


「寝てるよー」

 家の中から、間延びしたそんな言葉が聞こえてきた。


 その時、ヴィーリオは急に懐かしく感じた。このやりとりを、ずっと昔にした記憶があるのだ。

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